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August 2004: Rush Live Report

2004年8月 R30 北米最終4公演観戦記 Part 8

8月18日 Radio City Music Hall Day 1
(2) 2nd set〜encore
 メンバーが去った後は客電が点灯し、他のバンドの曲(知らない曲でした)が流れます。が、それは2曲で終わり、前回同様鳥や虫の鳴き声の音声が流れはじめました。前回はこれがドラゴン・イントロに繋がり、「One Little Victory」の前振りとなったのですが‥‥
 ところで RCMH 1階の音響は素晴らしい!5列目とはいえステージからの距離はかなりのもの(Orchestra - 通常の名称でいえばフロア - で考えれば約40列目相当)ですし、頭上には2階の床下があり、かなり圧迫感があります。そのため、はじめは音響にはあまり期待していなかったのですが、始まってみれば最初から全ての音がくっきり聴こえ、しかも低音域もばっちり。ベース・ラインもクリアに聞き取れる音質でした。床もシート(フカフカで座り心地がいい!)も天井も全て絨毯張りですから、かなりデッドな音空間になっているのでしょう。それで音がほとんど回っていなかったんだと思います。
 さて、休憩開始から約15分ほど経った頃でしょうか。客電がゆっくりと落ち始めたと思っていると、突然スクリーンにカートゥーン調のアニメが映し出されました。天使の輪を頭に乗せたウサギが、2人のウサギ天使につれられて登ってゆくシーン‥‥これは『Counterparts tour』で「Leave That Thing Alond」の演奏前に使われた映像の一部ですね(ちなみに『Contents Under Pressure』の『Presto』セクションにはこのアニメに関する非常に面白い証言が掲載されています。なんと「フォースの暗黒面」だったとは! (笑))。が、これはすぐに別の映像、かつて「The Weapon」の前に流されていた Count Floyd の映像に切り替わります。でもそれもほんの一部だけで、ディスプレイに映るメニュー画面が映し出されました。そこでカメラがパンし、実はソファーに深く腰掛けたドラゴンがリモコン操作で番組を切り替えていたことがわかります。更にいくつかのメニューを見てゆくと、「Darn That Dragon(ドラゴンをやっつけろ!のような意?)」というタイトルを発見。思い切り憤慨してリモコンのスイッチを押すと‥‥
 始まったのは70年代のテレビ人形劇風の「番組」。1stアルバムの書体、背景のタイトル「Darn That Dragon」に続いて紹介された登場キャラクターは、2003年に売り出された Bubble Head 人形の Dirk、Lerxst、Pratt(これも Neil のあだ名)、それに「That Darn Dragon(こちらは「あのいやなドラゴン」のような意味か?)」。メンバーの人形は頭がフラフラ揺れていて、観客は既に大笑い。そして最初の場面は「DANGER SENIORS BOBBLING(危険!老人が徘徊しています)」という注意書きのある部屋の中で古いフィットネス・マシーンを使って揺れている Dirk。次の場面では「RUSH」のロゴ入りドラム・キットを背負ってバイクを走らせる Pratt。更には鶏小屋のなかでギターを弾く Lerxst。そしてそこを通り過ぎる黒い影。ドラゴンが街にやって来た!バイクでロードを走る Pratt もこれに気づき、バイクに組み込んだ緊急連絡ボタンを押すと、Dirk、Lerxst のところでアラームが鳴り、シャトル「Cygnus X-1号」に乗って飛び立つ3人。その頃ドラゴンは既に街で大暴れ。逃げまどう人々。破壊される石綿工場(これ、何のパロディ?)そこへ Cygnus X-1号が到着し、ダイス型ミサイルで攻撃。しかしドラゴンが次に標的にしたのは RUSH のマーチャンダイズ!「やめてくれ〜」という表情の3人。しかし無情にもマーチャンダイズは灰となってしまう。それに奮起した3人は「最終兵器」を作動。吹き飛ばされたドラゴンは高圧電線に引っかかって燃え、平和は取り戻された。そして場面は移って大都市の夜景を望む神殿のような部屋にたたずむ3人。バックに流れる音楽は「2112: Overture」の終わりの聖書からの引用部分。
 うーむ。どうやらこれ、普段はアイドル・ロック・バンドだが、いざというときには正義の味方に変身するという古いカートゥーン・アニメ「スーパースリー」のパロディではないかという意見があるんですが、ちょっと古くてよくわかりません (^_^;)。それと、モンティ・パイソン好きな方によれば、彼らの作品からの影響も随所に見られるそうです。いずれにしても RUSH 流「本気の大バカ映像」炸裂。で、この映像は制作元の Creative Planet Communities の NEWS ページでダウンロードして見ることができます。大笑いなので、是非。
Tom Sawyer
Tom Sawyer
 バック・スクリーンに整列した3人(の Bubble Head 人形)が映り、「2112: Overture」の終わり部分が流れている間に、本物のメンバーがステージに上に現れていました。そしてカウント3つで始まったのが「Tom Sawyer」。おちゃらけた映像でリラックスしていたムードが、一気にヒート・アップします。といいつつ、バック・スクリーンではリズムに合わせて人形がうなづいていて、なんか変な雰囲気なんですが (笑)。
 続いて「Dreamline」。今回のセットで『RTB』から3曲目ですが、やはりこれは外せないでしょう。会場も「Tom Sawyer」に負けず劣らず盛り上がります。また今回のレーザーの豪華なこと!前回も「豪華になったな〜」と思ったんですが、更に倍、という感じでしょうか。多分おおもとのレーザー発信器の数はあまり変わらないと思うんですが、ミラーが以前よりも多く仕込んであるようで、非常に複雑なパターンで反射して、アルペジオ部分のステージ上はレーザーの網。しかも以前よりもずっと光量の多いレーザーなんでしょうか。あまりスモークがないにもかかわらず、綺麗にくっきり見えています。‥‥写ルンですでは全く写らなかったんですが。なお、今回のツアーでは、この曲のギター・ソロが Alex の大きな見せ場のひとつとなっていて、毎夜毎夜全く違うソロが演奏されています。この日はハーモニクスを効果的に配した割とストレートなソロ。ちょっとミス・トーンもありましたが、美しい演奏でした。それから最後の「〜limited time」の部分!また歌い捨てのフェイク、しかもかなり強力な歌い切りでした!しびれる〜。
Secret Touch
Secret Touch
 大興奮のうちに「Dreamline」が終わると、Neil のハイハットとリム・ショットに導かれて「Secret Touch」がスタート。前回もヘヴィで力強い演奏だったのですが、今回は更に輪をかけて進化していて、もうこれが体を動かさずにいられるか!ということで、後ろを一瞥してから立ち上がって腕を振り上げました。この曲で座っていられる神経が理解できん!特に後半部はもう凄まじいの一言で、現在の RUSH のパワーが遺憾なく発揮されているといえるでしょう。なお、スクリーンの映像は色とりどりのスポットが明滅する、抽象的なもので、今回も Touch System による映像なんですが、よくわからない写真でスミマセン (^_^;)。
Between the Wheels
Between the Wheels
 強烈な演奏の後に MC で「次に演奏するのは Force and Cracks について歌った、このツアーを始めるにあたって再発見した曲なんだ」と紹介されて始まったのは「Between the Wheels」。『Grace Under Pressure』収録のこの曲こそ今回のツアーにおける「サプライズ選曲」です。かつて『p/g tour』でしか演奏されていませんでした。それが2003年のインタビューにおいて「最近聴いてみてそのエネルギーに改めて驚いた曲がいくつかあった」と言った時に例として挙がった2曲のうちの一曲(もう一曲は「Entre Nous」)で、今回是非とも演奏したかったのでしょう。しかし歌詞を見れば、単純に楽曲的に演奏したかったというだけでなく、現在の世界情勢、特に合衆国の動向に対する痛烈な皮肉として機能させたかったのではないでしょうか(当然英語圏でもこうした意見が散見されました)。いずれにしても、重々しいシンセ・パターンのテーマとノリの良いハード・ロックが交互に登場するこの曲、更に重厚になったシンセの音色、遙かにタイトになったリズムによって織り上げられる演奏は、かつてのそれとは比較になりません。百聞は一見にしかず。体験した方なら容易に理解して頂けるでしょう。そしてこれを激烈に演出するのが、今回の照明の中でも最も壮大な仕掛け。メンバー頭上に吊り下げられた、巨大 LED サインボードのような多目的ライト、コンピュータ制御で自由に可動する4台のスポット・ライトがセットになった機械5台が、ブルーのライトであちこちを照らしながらゆっくりと降りてくるのです。しかも、わざと傾けられて降下してくる機体のスポットから出る光は、外側が青、内側が水色のマーブル。重厚な音世界と相まって、目眩を起こしそうです。そして、巨大な歯車がワイド・スクリーンの両端から迫ってくる、圧迫感の高い映像も Touch System による映像。
Mystic Rhythms
Mystic Rhythms
 あまりにも圧倒的な演奏に放心していると、「Mystic Rhythms」がスタート。『Power Windows tour』で演奏された後、間があって『Counterparts tour』で復活、今回はそれ以来の復活となりますが、『Classic Rock Vol.71』のインタビューを読むとメンバー、特に Geddy がこの曲をいたく気に入っていて、「いつでもセット・リストに入れられないかと狙っている曲」なんだそう。北米のファンの間では、RUSH のミドル・テンポの曲の中でも特に人気が高いものの一つで、やはりこの曲の歌詞の持つ詩的な情景の美しさがその要因なのではないでしょうか。今回はカラフルながら若干光度を落とした照明と、「〜canopy of stars」のところでスクリーンに映し出される満天の星が、曲を美しく演出していました。ただし、最後にスクリーンに現れる亡霊のような人の顔はなにを意味しているのでしょう?これも Touch System による映像。なお、始まって4分ほどのところの「capture my thoughts, and carry them away〜」の部分、本来サンプルによるコーラスが上のパート、生のヴォーカルが下のパートを歌うのですが、勢い余って生でも上のパートを歌ってしまっていました。歌いたくなりますよね、上のパート。
 続くは「Red Sector A」。『p/g』リリース当初は近未来の物語のような印象でしたが、これもまた現在の世界情勢に対するテーゼと言えるかもしれません。ギターのカッティングに呼応するレーザー、ドラム・フィルに合わせて天井から降り注ぐスポットの美しさは相変わらず。また、バックの団体運動も前回通りです。それからイントロで Geddy が「パー、パッパッパ、パ〜パッパ〜」とハミングしているのがばっちり聴こえました。インスト部分でのハミングは決して珍しいものではありませんが、実際に聴くとなんだか嬉しいです (^_^;)。ところで、2002年のレポートでも書きましたが、この曲ほど「生で見ないでその善し悪しを断定するのが間違っている」曲はないことを強調させて下さい。特に、この曲ほどわかりやすい形で Neil のドラム・パターンの見本市が聴ける曲も少なく、ドラマーの観点からこの曲をつまらないという意見は理解しがたいですね。
 それと、この曲の照明は危険!『OLV』でも全照明のリズムに合わせた明滅というシーンがありましたが、この曲では始めから終わりまで、ずっと8分のリズムに合わせて照明が明滅し続けているんです。くらくらするというか、途中で頭がボーっとしてしまいました‥‥。よい子は充分離れて見ましょう。痙攣を起こしかねません!
O Baterista
O Baterista
 若干のブレイクの後、前回の「ドコドコ始まり」とは打って変わってテンションを押さえて始まったのは「O Baterista」(「Drum solo」ですが、ユーロ・レグでファンが撮影したクルー用のセット・リストに「O Baterista」と表記されていたので)。前回は非常に強固な「曲」としての骨格があり、構成がはっきりしていましたが、お約束のパターンはいつも通りなものの、構成はより緩急を持ったオープンな感じに変更されています。そしてなによりも各パートがより複雑、もしくは丁寧に演奏されているのが今回の特徴でしょう。ベードラ、リモートハット、リモートハットのワルツ・リズムを続ける下半身と、上半身でそれとは全く関係なくスポンテニアスなパターンを叩くパートはその最たるもので、4ウェイの極地ではないでしょうか。僕なんかは3拍子に合わせてリズムを取り始めるのですが、すぐに訳がわからなくなってしまいます (笑)。それと、その導入のスネア・ロールにアクセントを付けるだけで聴かせるパート、これは今回初登場ですが、これも非常にエキサイティングですね。そして腕を交差させるパワー・フィルで観客を沸かせた後は、前回と同じビッグ・バンドとのヴァーチャル共演が締め。これも2002年のレポートと重複しますが、とにかく誰も席を離れない!残念なことに、80年代以降、特に『RTB』以降の楽曲が始まると席を立ってビールを買いに行く客(これも理解できない‥‥)が少なくないのですが、この曲は違いますね。誰もが Neil の繰り出す音を聴き逃すまいとしているのが感じられます。
Resist
Resist
 軽く手を挙げて一礼した Neil が足早に引っ込むと、代わりに登場したのはアコースティック・ギターを持った Alex と Geddy。Geddy が「いや〜、じゃあちょっと違ったものを」と言って「Resist」の演奏を開始。2002年と同じで、Geddy が左、Alex が右に座っていますが、これって何故なんでしょうね?以前「Superconductor」のプロモで立ち位置が逆なのが違和感アリアリだったことがありましたが、これもやはりちょっと違和感があります。さて、演奏はほとんど以前通りですが、若干 Geddy の演奏するコード・バッキングのアレンジが変わっているでしょうか。それから、演奏速度が更にゆっくりになり、余計に染みる歌になりました。後半、前回よりも感情を込めて歌い上げる Geddy に、ファンも惜しみない拍手を送ります。
Heart Full of Soul
Heart Full of Soul
 続いて、「ちょっと古いものはどうかな?」といって The Yardbirds の「Heart Full of Soul」がアコースティック・ギターだけでスタート。『Feedback』のヴァージョンと違い、はじめはパーカッションなしで演奏されました。そして、中間部で Neil がやってきて参加し、ほぼ『Feedback』通りの演奏に変化。これも古い曲で、実はオリジナルを聴いたことがないんですが、Armageddon での Keith Relf の歌は知っていますから、Geddy ヴァージョンは相当「聴ける歌」になっているに違いありません (笑)。それと、ここに来るまでに聴いていた音源では聴かれなかった、「Sick at heart and lonely, Deep in dark despair」「オーオーオオ」〜という合いの手が、ファンの間から自然発生的に起こりました。実際オリジナルには入っているもの(ということ)ですが、知らなかったのでちょっとした驚きでした。そしてその合いの手が歌われている時の Alex の嬉しそうなこと!いちいち大げさなアクションを取って喜んでいました。
2112 1
2112 1
 そして舞台が暗転、シンセの発信音が響き渡り、「2112」が始まりました。前回「Cygnus X-1」のイントロで流れたような、宇宙空間にさまざまな銀河や星雲が浮かんでいる映像がバック・スクリーンに映し出されます。「Overture」で会場を煽って「Hey!」の合唱をさせた後、「The Temples of Syrinx」が演奏され、更に終章「Grand Finale」が続きました。このパターンだと、1,2章だけで終わるよりも1曲として独立した印象になりますね。その割に、これまで一度も使われたことのない組み合わせだったのは意外です。
2112 2
2112 2
 ところで、「The Temples of Syrinx」には、ツアー序盤には見られなかった仕掛けがありました。歌の最後の部分でヴォーカルの声がしゃがれ声になり、歌も「We are the Pirates! of the temples of syrinx」という替え歌に。更には客席で海賊旗が振られている映像がバック・スクリーンに投影されます。そしてエンディングのバック・スクリーンには海賊旗を立てた、古くさい緑色の宇宙人の乗った UFO が登場。それが3台に増え、いつの間にか登場したメンバーの Bubble head 人形を UFO キャッチャーよろしく釣り上げていってしまいました‥‥。これはいったいなに!! (笑)。いや実は、7月はじめの音源を聴いた時に、既にこの替え歌ヴァージョンになっているのを聴いていた(その時は Alex がふざけて歌っているのかと思った)のですが、映像ではなかったために詳細がわからなかったのでした(それと、そのころはヴィジュアル的な情報はなるべく知らないよう、制限していたからでもあります。前回「By-Tor」の映像で大笑いした経験がありましたから)。しかし、見てもよくわからない (爆)。何なんでしょう‥‥。もしかして、「Priest」と「Pirates」、「a」一文字を除けばアナグラムになっているので、そこから派生した冗談なんてことあるでしょうか?で、これもやはり Touch System による映像ということでした。
 それと、この曲の最中に2度目の乾燥機再始動が行われました。この時出てきたのは、ミニスカートの女性2人。中をのぞき込んだりしていましたが、遠かったのでなにをしていたかは不明。
La Villa Strangiato
La Villa Strangiato
 締めのアラート音声も「ATTENTION ALL PIRATES OF THE SOLAR FEDERATION‥‥」と変えられていた「2112」が終わり、ギターの音がフェイドアウトしてゆく中、既に「La Villa Strangiato」のアルペジオが始まっていました(リアル・タイム・サンプリングしたギターの音をループさせているのでしょうか)。すぐに Neil のハイ・ハット、ビンビン響く Geddy のベースも参入し、やがてノリノリの「Strangiato Theme」に繋がります。そして美しい「Lerxst in Wonderland」では、いつもの通りのレーザーの幕に加え、またしてもメンバー頭上のライト・セットが降下をはじめました(あまりにもダメな写真でよくわからないでしょうが、画像はその降下シーンを写したものです‥‥)。その幽玄さに見とれているうちに曲は展開し、やってきたのは Alex の「rant」セクション。前回に続いて今回もフィーチャーされています。
 今回はバッキングに回る Geddy、Neil のパターンが前回と少し違って、よりルーズな感じ。そしてそれに乗せて披露されたのは、アームを多用した変なギター・ソロ。更にはうなり声を上げはじめ、だんだんと「いつも同じことを言われ続けていやなんだよ〜」というような愚痴(?よく聴き取れなくて、かなり想像入ってます)に変化。なんのことやらさっぱりわかりませんが、勝手に進めてゆく Alex と、それに合わせて即興で付いてゆく(そう、今回は Alex の喋り or 演奏がクライマックスになりそうになると、いったんブレイクして様子を見て、演奏スタイルを変えたり変えなかったりしながらバッキングを続けています)Geddy と Neil のやりとりがおかしい (笑)。そして、前回よりも合図としてわかりやすくなった Neil のスネア・ロールで「Strangiato Theme (Reprise)」へと戻っていくのでした。
By-Tor and the Snow Dog
By-Tor and the Snow Dog
 「La Villa」のエンディングから間髪を入れず始まったのは「By-Tor and the Snow Dog」。最終章を除いた短縮ヴァージョンなのは前回と同様。そして歌が終わってからは、今回もまたあのおかしなアニメが流されました。もちろん多くのファンは既に前回のツアーで、もしくは『Rush in Rio DVD』で見ているでしょうが、初めて見たと思しき反応をしている人もちらほら。しかしもう充分笑わせて貰った我々が注目するのは、やはりステージ上のメンバーでしょう。相変わらずバックの映像とはお構いなしに Geddy と Alex が絡んでいます。更に最後のキメではブレイクの度に変なポーズを取る Alex がおかしいです。そして最後の1音は引き延ばされ、Neil はシンバルを、Geddy はペダル・ベースを鳴らし続けます。その間 Alex はギター音をサンプリングしてループさせ、1994年以来となるダブル・ネック・ギターに持ち替えました。
Xanadu
Xanadu
 しばらくするとウッド・ブロックなどのパーカッションやキーボードで鳴らす恐竜の咆哮、犬の鳴き声などが乗り始め、更に Alex のアルペジオが参加して「Xanadu」に繋がります。これも『CP tour』以来の復活ですが、「By-Tor」からメドレーで続くこのパターンは1977年に初めて「Xanadu」が演奏された時に始まり、その後 1980年の『MP warm up tour』を最後に、それ以降は使われていなかったものです。ブートではさんざん聴いてきましたが、こうして目の前で再現されるとなんだか不思議な気分。曲はうまいアレンジで短縮されているものの、丁寧且つ重厚な演奏で、特にシンベの重低音が大迫力でした。そしてこの曲の照明の素晴らしいことと言ったら!例の吊り下げ照明は動かないものの、可動するスポットが曲に合わせて整然と動きまわり、これでもかという位に曲を盛り上げます。さらにバック・スクリーンには色鮮やかな抽象パターンが描き出され、ゴージャスな演出となっていました。これも Touch System による映像。演奏と照明のコンビネーションでは、「Between the Wheels」とこの曲が双璧だったでしょうか(僕の写真ではその素晴らしさが伝わりませんが‥‥)。
Working Man
Working Man
 さらに演奏は途切れなく「Working Man」へとなだれ込みます。前回の大トリだった同曲ですが、今回は 2nd set の締めとして演奏されました。1st set の一発目が(メドレーながら)「Finding My Way」、そして本編ラストが「Working Man」と、どちらも 1st アルバムからの曲。何とも30周年記念に相応しい演出ですね(個人的には現在の曲、『VT』からの楽曲で締めてくれればもっと嬉しかったんですが)。さて、その演奏は2002年と同じ‥‥と思わせておいて、エンディング前の歌の部分でリズム突然がレゲエに変化。更に歌もレゲエ調になってワン・コーラスまるまるレゲエ・ヴァージョンで演奏されました。大昔、『MP tour』から『ESL tour』にかけてイントロがレゲエ調に演奏されていたことがあり、パートは違うもののその再現と言えるかもしれません。そしてエンディングでまた通常の演奏に戻り、約85分に渡った 2nd set が幕を閉じました。
 Neil、Alex が軽く手を上げ、Geddy がお約束の「Thank you so much, good night !」と言って足早にステージ袖に引っ込むと、会場中からはアンコールを求める手拍子が沸き起こります。そして待つこと約1分、Geddy と Alex がステージに戻り、前回同様乾燥機を止めて中からTシャツを取り出して客席に投げました(もちろん遠いので指をくわえてみているだけ (笑))。全て投げ終わる頃には Neil も要塞の中心で待機しています。
Summertime Blues
Summertime Blues
 Geddy が観客へのお礼を言い、続けて簡単に次の曲を紹介していると、それが終わらないうちに Alex のアンプからはギターのフィードバック音が流れはじめました。そしてグリス・ダウンを合図に始まったのが「Summertime Blues」。『Feedback』からラジオ・シングルとしてカットされた曲という以前にあまりにも有名な曲で、もちろん会場はまた大いに盛り上がります。Blue Cheer のヴァージョンは聴いたことがありませんが、The Who の演奏なら何度も聴いています。しかし、今の RUSH が演奏すると、こんなにもヘヴィになるんですね!スタジオ盤のようにコーラスが重ねられてはいませんが、それが逆にストレートな感じになっていていいんじゃないでしょうか。サイケな映像(これも Touch System による映像)をバックに、ノリノリで演奏するメンバー。画像はサイケなバック・スクリーンを捉えた‥‥はずだったんですが、めまぐるしく変化するパターンの一瞬だけだと、サイケなのかどうか判別不能ですね (^_^;)。
Crossroads 1
Crossroads 1
 それまでの曲調からすると唐突に思えるキメで「Summertime Blues」が終わると、間髪を入れず「Crossroads」が続きます。こちらはヘヴィ、と言うよりは軽やかなイメージでしょうか。若干ハネ気味のリズムが心地よいです。そしてまたサイケな映像!まさか RUSH が今になってカヴァー曲を演奏するとは思ってもいませんでしたが、演奏してみればあら不思議、なんでも RUSH になってしまうんですよね。それにこのメンバーの楽しそうな姿!「30周年」というお祭りを、彼ら自身が存分に楽しんでいるのが伝わってきます。
Crossroads 2
Crossroads 2
 ところで、英米には「RUSH のライヴでカヴァーを演奏するなんて‥‥そんなもの聴きたくない!」というファンも少なくないんですが、この彼らの演奏する姿を見てもやはりそう思うんでしょうか。いや、確かにもっと彼ら自身の曲を聴きたい、という気持ちは同じですが、このお祭りで、そんなに目くじら立てなくてもいいんじゃないかと思っちゃうんですよね。個人的には、今後も多少のカヴァーが入っていてもいいかも、位に思っていたりしますし。どうなんでしょ。
Limelight
Limelight
 「Crossroads」がエンディングを迎えて観客が大歓声を上げていると、それを切り裂くように Alex が「Limelight」を開始。今回の大トリです。もちろん大ヒットアルバム『MP』収録曲であり、音楽的にも歌詞の持つメッセージ的にも代表曲の一つであることは疑いのないところですが、まさかこの曲が最後の最後に演奏されるとは想像もしていませんでした。なにしろ、今までアンコールに演奏されたことすらなかったのですから!それに、これまでのツアーでショウのエンディングとして演奏されていた楽曲のように、「盛り上がって大団円」という曲ではありません。それどころか、プロ・ミュージシャンとしてスポットを浴びながら生きていくことで失うものについて歌った曲であり、表面的にはむしろ悲壮感の漂う曲と言えるでしょう。しかし、更に踏み込んで考えれば、30周年という節目での「これからも Limelight のもとで活動していくんだ」という意思表明とも感じられます。お祭りの中でも自分たちの立脚点を客観的に見据える、彼らの真摯な態度の表れと考えられないでしょうか。非常に感慨深いエンディングでした。
Bye Bye
Bye Bye
 Alex と Neil が手を振って一礼し、Geddy がもう一度ファンに感謝の言葉を述べ、ショウは終わりました。ステージ上が暗転し、客電がゆっくり点灯してゆくなか、照明による「BYE BYE」の文字。時刻はほぼ11時半で、休憩時間を除いても3時間強の長いショウでした。が、実感としては「短い!」あまりにも集中していたためか、あっという間に終わってしまったような印象です。素晴らしい演奏、美しい照明、楽しそうなメンバーの表情はしっかりと記憶に残りましたが、たった1回では足りない!だから、複数回見たくなるんですよね〜。
 なんて感慨にふけっていると、バック・スクリーンに Jerry Stiller が再登場。そして「短いショウはどうだった?」なんて言った後、「まだそこにいるのか?早く帰れ!もう寝る時間だぞ!」と帰宅を促します。そしてベッドに寝転がり、口笛による「Limelight」のメロディーが流れ始めると客電が本格的に明るくなりました。そして口笛がフェイド・アウトした後に他のバンドの曲が流れ始めて、本当にショウは幕を閉じました。

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