輝国山人の韓国映画
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1948年から50年までの最も混乱した時期に,左翼と右翼の勢力に交互に支配される全羅南道の田舎町ポルギョ(筏橋)の住民の悲劇を描く。
▼解放後,左翼と右翼の対決が進む中で,48年8月にヨス(麗水)反乱事件が起こる。全羅南道ポソン(宝城)郡党委員長であるヨム・サンジン(キム・ミョンゴン)を中心とする共産主義勢力は,ポルギョを掌握し反動を粛清するが,政府軍による鎮圧に破れ,チョゲ(曺渓)山に後退する。
▼帰ってきた警察などの右翼勢力は,共産主義者の家族や左翼への協力者を取調べ,報復を開始するが,テドン(大同)青年団監察部長ヨム・サング(キム・ガプス)は,兄サンジンへの憎悪心からこの仕事を率先して行う。そしてサングは,その権勢にまかせてパルチザンのカン・ドンシクの妻を劫奪するなど悪行を重ねる。
▼一方,南朝鮮労働党直属のチョン・ハソプ(シン・ヒョンジュン)は,幼なじみの巫女ソファ(オ・ジョンヘ)の家に潜入し,ソファは,ハソプへの愛から彼の活動を支える。民族主義者のスンチョン(順天)中学教師キム・ボム(アン・ソンギ)は,ただ一人,同族同士のいさかいに胸を痛め,冷静に双方の行き過ぎを批判するが,共産主義者として「アカ」のレッテルを貼られ,反共団の闇討ちにあうなど苦難に遭遇する。
▼ユロ(栗於)を解放区として掌握したサンジンらに対して討伐隊隊長シム・ジェモ(チェ・ドンジュン)とキム・ボムは,民族の問題を自覚し,合理的で穏健な政策を繰り広げるが,地主らの反発に直面する。キム・ボムは,イデオロギーの狂気のために犧牲になる人々の姿に苦しみながら戦争を予感する。サンジンのパルチザンは,49年冬の政府軍の冬季大討伐作戦による苛酷な飢えと絶望の中で,北が南に侵攻したという消息を聞く。
[制 作 年] 1994年 [韓国封切] 1994年9月17日 [観覧人員] 227,813人 1994年 第5位 (韓国映画データベース 年度別ボックスオフィス) [原 題] 太白(テベク)山脈 태백산맥 [英 語 題] The Taebaek Mountains [ジャンル] 戦争,ドラマ [原 作] チョ・ジョンネ(趙廷来)「太白山脈」 [脚 色] ソン・ヌンハン [監 督] イム・グォンテク [第94作] [助 監 督] ナム・スンファン [撮 影] チョン・イルソン (鄭一成) [照 明] イ・ミンブ [音 楽] キム・スチョル [美 術] キム・ユンジュン [出 演] アン・ソンギ → キム・ボム(金範佑) スンチョン(順天)中学教師 キム・ミョンゴン → ヨム・サンジン(廉相鎮) 南朝鮮労働党 ポソン(宝城)郡委員長 キム・ガプス → ヨム・サング(廉相九) テドン(大同)青年団監察部長 オ・ジョンヘ → ソファ(素花) ムーダン(巫堂) シン・ヒョンジュン → チョン・ハソプ(鄭河燮) 南朝鮮労働党 チェ・ドンジュン → シム・ジェモ(沈宰模)中尉 討伐隊隊長 チョン・ギョンスン → チュクサン(竹山)宅(テク) ヨム・サンジンの妻 パン・ウンジン → ウェソ(外西)宅(テク) カン・ドンシクの妻 イ・ホジェ → チョン・ミョンファン(全明煥) 慈愛病院院長 チョン・ジングォン → ハ・デチ(河大治) パク・ヨンジン → カン・ドンシク(姜東植) クク・チョンファン → ナム・インテ(南仁泰)警察署長 シン・ドンホ → パク・チェヨン → アン・チャンミン(安昌民)先生(パルチザン) アン・ソックァン → イム・マンス(林萬洙)鎮圧隊長 ユン・ジュサン → チェ・イクスン(崔益承) 韓民党国会議員 クォン・テウォン → チャン・ギルチュン(張吉瑃)査察主任 キム・ギロ → チョン・ヒョンドン(鄭鉉東) チョン・ハソプの父 酒造場社長 チェ・ジョンウォン → ムン・ギス(文基洙) 文化書房店主 チェ・イルスン → 同志 イ・ヘリョン → イ・ピョンジュ(李炳柱) ボルギョ邑長 ナ・ガプソン → 青年団長 パク・チョンギュ → オ・ジヘ → イ・ジスク(李知淑)先生 パク・スンテ → ナガン(楽安)宅(テク) チョン・ハソプの母 キム・ギョンエ → ホサン(虎山)宅(テク) ヨム兄弟の母 パク・ヒョナ → イ・ミギョン → イ・イニ → ソン・ヒヨン → パク・ホングン → キム・ピルグク → イム・ギビン → パク・キルス → パク・キルス 農民委員長 チョ・テボン → イ・ソック → チュ・ヨンソン → 小作民 地主ソ・ウンサンを問いつめる ヤン・テクチョ → イム・マンス鎮圧隊長歓迎会参席者 キム・ギジョン → ソ・ウォンサン 地主 ハ・ドクソン → イ・ドリョン → 北国民学校長 チェ・ソングァン → キム・サヨン(金思縺j キム・ボムの父 地主 ソン・ジョン → ユ・ヨンス → ミン・ギシク 小作民 地主ソ・ウンサンを問いつめる チョ・ヨンテ → アン・ビョンギョン → ムン書房(ソバン) 小作人 ホン・ウォンピョ → 警察官 ムン・ジヒョン → ユン・ヘヨン → チュ・サンホ → 小作民 塩田化に抗議する チョン・ジンワン → オ・ヒチャン → 塩田工事技師 チュ・ボン → ユ・イルムン → シン・ドンウク → チョ・ハクチャ → キム・ギョンラン → ナム・ジョンヒ → チョン・ミギョン → チョン・スク → アン・ジンス → 村人 左派に徴兵されたことを口止めする イ・イェミン → 村人 キルサン 腰を抜かす キム・ウソク → ソ・ピョンソク → 村人 チェ・ピョンサン 左派に志願する ユ・ギョンエ → チョン・ミジャ → チェ・ミングム → キム・ギョンホ → イ・ジョンサン → オ・ドヨン → ユン・イルジュ → パク・プヤン → 小作民 地主ソ・ウンサンを問いつめる ハン・ミョンファン → パク・ヨンパル → キム・ギボム → パク・チョンソル → キル・ダロ → ホ書房(ソバン) 地主ソ・ウンサン使用人 ホン・チュンギル → ソク・インス → イム・イェシム → ユ・ミョンスン → チャン・ヒ キム・エラ → チェ・ヨンス → カン・ヒ → イム・ジンテク → ホン・ウォンソン → 慈愛病院看護婦 キム・ギチョン → ポギリ ハ・デチに殺される イ・ジョンフン → ムン・ジヒョン → キム・ジェヨプ → キム・ハンジュン → 児役 ユン・ドンウォン → 児役 チュ・ソヌン → 児役 イム・タビン → 児役 ヤン・ジェギョン → 児役 クォン・ジヨン → 児役 ビッグバン(Big Bang)のメンバー,G−ドラゴン キム・ミリム → 児役 ユン・ソング → 児役 友情出演 イ・チャンセ → イ・チャンセ 人民共和国 内務署長 ペ・ジャンス → ペ・ジャンス 人民共和国 副委員長 キム・ビョンジェ → 人民共和国 キム政治副委員長 ソン・ヨンドク → 人民共和国 義勇軍 ソ少尉 [受 賞] 1993 第1回 上海国際映画祭/監督賞、女優主演賞 (オ・ジョンヘ) 1994 第15回 青龍映画賞/作品賞(泰興映画),男優助演賞(キム・ガプス) 女優助演賞(チョン・ギョンスン) 1994 第5回 利川春史大賞映画祭/最優秀作品賞,撮影賞,照明賞 1995 第31回 百想芸術大賞/大賞(アン・ソンギ) 1995 第33回 大鐘賞映画祭/審査委員特別賞(泰興映画),男優主演賞(キム・ガプス) 音楽賞(キム・スチョル) 助演女優賞(チョン・ギョンスン) 1995 第31回 百想芸術大賞/男子演技賞(キム・ガプス) [映 画 祭] 1995 ベルリン国際映画祭 正式出品 1995 アジアフォーカス・福岡国際映画祭'95 上映 [時 間] 168分(ビデオは151分) [制作会社] テフン(泰興)映画(株) [ビ デ オ] シネカノン(15,000円) [レンタル] あり(少ないかも) [撮影場所] 京畿道 ピョクチェ(碧蹄)のセット(80軒) 全羅南道 チャンソン(長城),ポソン(宝城),ハンゲリョン(寒溪嶺),ピルレ [You Tube] https://www.youtube.com/watch?v=pAXBFl03saY [Private ] 1999.04.04 シネラ(韓国映画を代表する名優 安聖基(アン・ソンギ) J-DVD(イム・グォンテク作品集)【66】 [原 作 本] 「太白山脈」 全10巻 ホーム社 各2,940円 趙廷來 (著),尹學準・川村湊 (編集) 神谷丹路・川村亜子・筒井真樹子・安岡 明子 (翻訳) [お ま け] ・韓国映画を代表する名優 安聖基(アン・ソンギ)監督 上演作品 (福岡市綜合図書館 映像ホール シネラ 1999年4月) ・韓国新世代映画祭'99 上演作品 (福岡市綜合図書館 映像ホール シネラ 1999年7月) ・3時間近い大作だが,物語がどんどん進行していくので時間があっという間に たってしまう。 ・冒頭のタイトルバックで山の上を飛ぶ鳥の大群は,どうやって撮影したのだろ う。思わず見とれてしまう。 ・主な撮影場所は,原作小説「太白山脈」どおり全羅南道のポソン(宝城)。 近くのヘナム(海南)やチャンソン(長城)などでも撮影が行われた。 ・なお,全羅南道のチャンソン(長城)は,イム・グォンテク監督の生まれ故郷。 ・人民軍部隊が,彼らを歓迎するパルチザンの生存者たちに高圧的な態度を取り, パルチザンを失望させる場面は,朝鮮戦争時代の監督の実体験が反映されてい るのだそうだ。 ・<将軍の息子3>(1992年)を撮り終えた後,この映画の撮影を準備していたと ころ,政府の人が来て,「まだ思想問題を客観的に扱える時代でないから,映 画制作を中止してほしい。中止しないと公権力を動員してでも阻止する」と言 われたそうだ。 ・それで,「太白山脈」は,軍事政権から民主政権に移行して1年後に撮ること にしてそれまでは休むことにしたそうだ。 ・その結果,1年遊んでいるわけにもいかず,1978年に映画にしようとして あきらめていた短編小説「西便制」を暇つぶしにとってみようと考えてできた のが,<風の丘を越えて ソピョンジェ(西便制)>(1993年)なのだそうだ。 (林權澤(イム・グォンテク)は語る《映画・パンソリ・時代》 福岡ユネスコ協会[編] 弦書房 680円+税 2015年) ・1992年は,軍部出身の盧泰愚大統領から文民出身の金泳三大統領に交代し た時期で,新政府が,左翼と右翼の問題に神経質になっていたことがうかがわ れる。