22%のこだわり

乗り換え進行中

先日,ふと思いついて数えてみたら,手持ちのDVDのおよそ22%がLDからの買い替えタイトルであった。この比率が大きいのか小さいのか何とも言えないが,メディアや規格が切り替わるのはコレクターやマニアにとっては宿命である。また同じもの買って!という非難は甘んじて受けなければならない。道楽というものは非効率的なものなのだ。

たぶん経済事情が許せば(要するにもっとお小遣いがあれば)この比率は増大していただろう。どのあたりで踏みとどまるかは個人の意思の強さと経済力にかかっているが,泥沼にはまりこんでいる先輩諸氏も少なくはあるまい。羨ましいというべきかご愁傷様というべきか,僕には判断できない。

かつてのLPレコードからCDへの移行に際しても,多かれ少なかれみんな買い替えで悩んだことだろう。さすがにそこまで数えてみようという気は起きないが,僕もたぶん買い換えが3割くらいには達していたと思う。

しかしアナログLPは想像以上にしぶとくて,今では逆に安定して生き延びている。一気に絶滅したLDとはそこが違う。それこそ伝統の力だったのかな。オーディオに入れ込んでいる人々というのはこだわり具合も違うからたいへんだったろうが,きっと喜びも大きいのだろう。

自らの性(さが)や業に苦悩するマニアたちよ,深淵をのぞき込むその気持ちはよーくわかるぞ。僕のような臆病者には陰ながらエールを送るくらいしかできないが,「どうかご無事で」と言わせていただこう。

乗り換えもまた楽し

ごく初期のビデオソフトやLDに手を出した者にとって,DVD時代の買い替えタイトルにはやはり喜びがある。そりゃあ懐具合に響くのは確かだが,なんといってもクオリティが違うからね。人間というのはよいものに触れると二度と後戻りできない生き物なのだ。

最近発売された(今は2002年9月)マリリン・モンローの「七年目の浮気」は僕の大好きな映画のひとつだが,修復された最新マスターによるシネスコ映像には大歓喜。手持ちの初期版LDの4:3画面に慣れていた身には,BSで放送されたノートリミングの美しい「七年目の浮気」はショックだったのだ。ぜひDVDでも欲しいと思っていただけにうれしいリリースだった。

しかも,僕は以前この映画の字幕についてこんなことを書いていたのだが,このDVDでは望んでいたとおりの字幕が採用されていて二重の喜びとなった。きわめて個人的なこだわりとはいえ,自分の希望が完全に満たされたソフトに出会うシアワセはそうそうない。バンザーイである。

同じく最近出た「狼の血族」もまたうれしい一枚で,買った当日は顔がゆるんでいるのが自分でもわかった。古いLD版を大事に抱え込んで「早くDVDで出してくれんかなー」と嘆いていた日々ともお別れだ。絵も音もやっと取り戻したという感じである。

映画のクレジットにはドルビーステレオのマークが流れるのにソフトはモノラルというのは悲しかったからねえ。

乗り換えの罠をうて

古いビデオソフトやLDしか持っていないタイトルであれば,DVDの購入でさして悩むことはない。思案するのは財布の中身だけである。旧作などはアメリカ並に安価になりつつあるしね。これからAVライフに突入する人にとってはありがたい時代である。ああ,20世紀にゃ散財したなあ。

しかし,最近はDVDからDVDへの乗り換えという怖い罠が増えてきた。特典満載のスペシャル・エディションがやたらと登場するので,スタンダード版で持っている人には目の毒,耳の毒といったニュースが多い。うわあ,今さらそれはないだろうと嘆く声が聞こえてきそうな今日この頃なのだ。

サプルメントマニアなんてコーナーを持っている僕などはたいへん危うい状況なのだが,幸か不幸か最近ちょっと懐具合がキビシイ。我慢するまでもなく,買えないものは買えない,と潔く見送る境地に到達している。ありがたいことである。

まあ,年をとって安全装置が出来てきたのかもしれない。マニアやコレクターを自認する人はときどき頭を冷やさないと危ないぞ……などと言える心境も今だからこそか。僕もLDボックスをがんがん買ってた頃はこの道と心中しようかというくらい深みにハマっていた。今は砂浜近くの浅瀬で泳いでいる程度。溺れて屍をさらすことはあるまい。枯れちゃったのかもしれないが。

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今の22%という乗り換え率に意味があるのかどうかはともかく,古いコレクションを新しいDVDで置き換えていると,なるほど,と感じることがある。

ああ,自分は常にこの映画だけは手元に置きたかったのだな,というタイトルが自ずと明らかになってくるのだ。メディアや規格がどんなに変わろうとも,これとこれとこれはどうしても欲しかったのだということがハッキリする。いわば自分の好みの絶対値のようなものだ。

自分のコレクションはこれらを核にして増殖していったのだなあというメインタイトルである。名のある映画も埋もれた迷作もごちゃまぜだが,自分の正体が知れたような気がして面白いと思った。