春のことごと

小波が来た

年明け以降,さっぱりDVDへの欲求がわかず,ホビーとしてのホームシアターはソフトのコレクション共々開店休業状態にあったのですが,最近になってようやく興味が戻ってきました。

今のところあれも欲しいこれも欲しいというほどの熱ではないので,波は波でも小波が来たってところでしょうか。それでもぼちぼちまたソフトを買うようになったので少しは話のタネもたまりつつあります。そのうち書きたい気分も盛り上がってきてくれるとありがたいのですが。

昨年からの劇場敬遠症?は相変わらずですが,今年はけっこう面白そうな企画(映画)が並んでいるので映画館へ通う日々も復活するかもしれません。その手始めってわけでもありませんが,先日公開(今は2004年3月)された押井守監督の「イノセンス」はさっそく劇場で堪能してきました。

いやあ,ぜいたくなフィルムでしたなー。

さっぱりわからんと貶す向きもありますが,あれが楽しめないとはお気の毒としか言いようがないなあ。そんなセリフはせめて「去年マリエンバートで」くらい見てから言え,と密かにつぶやくワタシであります。

ハリウッド映画のわかりやすさも楽しいけれど,観客に思いっきり背伸びを要求する豪速球だって気持ちいいもんです。知的,美的センサーのすべてが振り切れそうなあの高密度な映像・音響(音楽)体験は映画ファンにとってもぜいたくなひとときだと思います。まだ何度も足を運ぶつもりですが,これほどDVDが待ち遠しい作品も久しぶりですね。

自由は春と共に去る

最近一挙に普及しつつあるHDD+DVDレコーダー,僕も昨年からユーザーの一人なのですが,確かにあれは便利な機械です。いささか操作が複雑ですが,今さらビデオカセットを増やしたくない身には実にありがたい代物です。

昔のビデオやLDのバックアップ,エアチェックなどにたいへん重宝してます。何と言っても最終的にあの小さなDVD-Rに焼いてライブラリにできるというのがいいですね。それに16:9のスクイーズで録画・編集できる点も見逃せません。僕はハイビジョンで放送されるドキュメンタリーや音楽番組のヘビーユーザーなのでNHKのBS-hiはまことにありがたい存在だったのであります。

嗚呼,しかし,そんな蜜月の日々も終わろうとしています。

ご存知の向きも多いと思いますが,この4月から地上/BSとも全デジタル放送の番組がコピーワンス(1回のみ録画可)の信号付きになるのです。つまりHDDに録画はできるけど,編集してDVD-Rに焼くことはできなくなるわけです。DVD-RAMかDVD-RWに"移動"はできるけど,いったん移動すると元のHDDには戻せない。しかもそれらは普通のDVDプレーヤーとは互換性がないときてます。移動時に不良メディアに当たったら一巻の終りです。

あうー勘弁してよー。せめてNHKだけでも今までどおりでやってほしかったなあ。録画時点でダウンコンバートされるとはいえ,スクイーズで良質のソースを安価にコレクションできる希望の星だったのに〜。BS-hiライブラリ派にとってはまことに手痛い打撃です。

クオリティだけならD-VHSも使っているのですが,もうテープメディアをがんがん増やす気も起きませんしね……デジタルって世知辛いなあとつくづく感じる今日この頃です。

アルジャーノン体験

以前にもちょっと書きましたが,僕は目が悪いので映画館のスクリーンは光量不足に感じることが多々あります。薄暗いシーンがよく見えません。それがシャクなのでホームシアター派になったわけですが,それはまあ別の話。

最近,眼科の検診で眼底検査を受けました。経験された方はおわかりだと思いますが,検査の前に瞳孔を開く目薬を使います。その効果は数時間持続するのですが,その間はいつもよりたくさんの光が目に入ってきます。だから道を歩くとさすがにまぶしいのですが,自宅に戻ると……あらら,いつになくよく見えるではありませんか。

室内の照明がこんなに明るかったのかと驚き,パソコンの液晶モニタが新品になったかのごとく明るくコントラストもくっきり見えます。本を読んでも活字がしっかり黒に見えるのがうれしくてつい笑ってしまいました。ちょっと新鮮な驚きがありましたよ。

でもこれは件の目薬が効いている間だけのつかの間の鮮やかさなのです。しばらくすると元の低輝度世界。ああ,なんか残念だなあ。これはまさにアルジャーノン状態というかチャーリイ・ゴードン体験です。今ならあの物語がいっそう身近に感じられる気がしますねえ。

もし今度同じ検査を受けることがあったら,今度は検査が終わったその足で映画館に直行してみようかなと思っています。果たして今までとは違うものが見えるでしょうか。

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「イノセンス」が気に入ったので関連本などを読んでいるうちに「イノセンスの情景」なるDVDが出ました。本編の精緻なCG背景美術とサントラで再構成したミュージックビデオですが,いやこれがもうすばらしいのひと言。こんな豪華なミュージックビデオはまたとないでしょう。

で,毎日プレイしてうっとりしております。危ないおじさんになりつつあるのかもしれません……。