もっと光を!

ねえ,暗くないですか

映画は映画館で見るもの……ではあるんだけど,正直言って映画館のスクリーンって暗すぎないか?と常々思っている。

実は僕は相当目が悪くて通常の劇場の輝度では光量不足なのだ。

夜のシーンや暗いシーンで何が映っているのかわかんない,というケースにぶつかると悔しくて泣けそうになる。視力喪失は映画好きにとっては悪夢だろうが,それを疑似体験させられるのも辛いものだ。

これはこちらの勝手な事情なので文句を言う筋合いではないのだろうが,それでも映画館のスクリーンはもう少し明るくてもいいんじゃないかと思う。通常の視力(暗視力)の持ち主がどのような世界を見ているのか実感できないのでどのくらい明るくしてくれ,とは言い難い。しかし劇場によってかなり明るさにバラツキがあるところをみると,今の明るさでなきゃいかんというわけでもなさそうである。

上映基準みたいなもので明確な設定値があるのか,あってもどの程度その基準が尊重されているのかはなはだ疑問なのだ。明るくすると絵が破綻するのか?フィルムの微妙なタッチが損なわれるのか?むろん,何事にもほどほどというラインはあるだろう。でもそういった試みはもっとなされていいと思うのだ。

ちょっと試してみてよ

だから同じ作品を従来版と高輝度版で見比べる,それもお客さんを入れて,といったモニタリングを望みたいのである。そんなニーズはきっとある。スクリーンの暗さを嘆いている人は少なくないと思うのだ。

字幕もそう。劇場用のあの独特のフォントは確かにとおっっても雰囲気があって好きだ。フィルムに穴を空けないように配慮してあのデザインになっていると聞いたことがあるが,あれはホントに風情があっていいね。しかしあれが読みやすいかというとそうでもない。目の悪い人間にはLDやDVDのかちっとした丸ゴシックの字幕の方がありがたい。

今まで最も明るいスクリーンと快適な椅子のセットで見た経験というのが実は映画館ではなく,イベント用の多目的ホールでのことであった。それはあの「メジャーリーグ」第1作の試写会だったのだが,明るくて力強い画面は視力の弱い人間にもコンプレックスを感じさせないたいそう心地よい時間であった。

これが欲しくて僕はホームシアター派に鞍替えしたのである。

ホームシアターはいいよ,でも

ホームシアター時代になって高輝度のプロジェクターやゲインが高くてもきれいなスクリーンが家庭に持ち込めるようになった。もう素直に文明の利器に感謝している。なんというか「見える」ことのありがたみをしみじみ感じる。

ソフトを買ってもハードを買ってもまず血眼になってノイズやキズを探し出し,得意げに報告するマニアックな連中にはこの喜びはわかるまい。そんなにきれいな「信号」が見たければ好きなだけチェックディスクとにらめっこしていればよろしい。

僕は「映画」を楽しみたいのだ。視力にいささかのハンデがあってもそれを補ってくれるホームシアターのありがたさを享受しつつ,昔劇場ではよく見えなくて悔しい思いをした作品をあらためて隅々まで見尽くすことのできるシアワセを感じている。

だが,この喜びは本来劇場でこそ体験させてほしいのである。故にもっと光を!なのだ。