去りゆく豪華ふろくの世界

バブル期ならでは?それとも

最近はDVDに押されて元気のないLD陣営。栄枯盛衰は世の常とはいうものの,15年も楽しませてもらってきただけにちょっと寂しい。ま,その分これからDVDにはがんばってもらうとして,今回はLDならではの,今となってはなかなか目にすることも少なくなった世界を取り上げてみよう。

それは数ある企画の中でも最もLDが元気のよかった時代にリリースされた「豪華○大特典」付きのLDボックスである。それもメイキングなどの映像特典だけでなく,物理的(?)な付録が付いてきたデラックスなおもちゃ箱のような商品だ。

文庫で手に入る作品をわざわざハードカバーで買うようなものであるから景気のいい時代でないと商売にならない企画である。ひとつひとつのオマケ(ふろく)はもし単品で買えるならどうということはない代物で,結果的には明らかに割高な買い物となる。超不景気なこの世紀末では登場しづらい商品だ。

さすがのマイ・フェア・レディ

このページでも何度か取り上げた「マイ・フェア・レディ」のLDボックスはそんなぜいたく企画のひとつである。本編やメイキング,PR用短編などの映像部分についてはひとまずおくとして,ここで目を引くふろくはセシル・ビートンによるオリジナル衣装デザインの6枚組ポートフォリオと,同じくビートン著の単行本「マイ・フェア・レディ日記」のふたつだろうか。

前者は小さな額や写真立てにはさんで飾ってもサマになるなかなか雰囲気のあるイラスト集だ。その中にはあの超有名なドレス(イライザが競馬場に出向くときの)のデザイン画ももちろん含まれている。

ヒギンズ教授が「Simple and Elegant !」と注文したあれだ。

このポートフォリオ集には6コマ分の70ミリフィルムがさらにオマケとしてついてくる。写っているのがオードリーのシーンだったらもっとうれしかったなーというのが本音。

もうひとつの「マイ・フェア・レディ日記」の方は文字どおり制作日記。イラストも本人(のはず)。220ページ余の立派なハードカバーである。このLDボックスのための非売品だったはずだが,後に新刊として発売されてたと思う。定価の表示も書籍コードもない非売品バージョンとしてのプレミア度はあるかな。

ディズニーのオマケは

この手の豪華ふろく付きLDボックスというのはディズニー作品に多く,マニア向けというより家庭向け豪華商品という位置づけなのかもしれない。

「トイ・ストーリー」では特典映像以外にオールカラーのアートコレクション(パンフレットね)と3Dのレンチキュラーアートワークがついてくる。レンチキュラーアートワークってなんじゃ?とお思いだろうが,ようするに昔の下敷きやシールにあった立体写真である。ビニールっぽい素材で見る角度によって絵が浮き出て見えるあれだ。限定品だそうである。最近は3Dホログラムの方が主流なのでちょっぴりオールドファッションな味がある……かもしれない。

「白雪姫」についてくるのは90ページ近い詳細なメイキングブックとポスターコレクション。このメイキングブックはなかなか読み応えがあって資料的価値も高い。ポスターコレクションは初公開時から1993年までの各リバイバル公開時のポスター10枚を集めたもので,現代に近づくにつれキャラクターデザインが今風に変わっていく様子がわかる。

「ファンタジア」になるとオリジナルのリトグラフがついてくる。これは1枚だけだが,なかなか美麗で飾りたくなる代物だ。またシリアルナンバー入りプレートなんてのも入っている。それのどこに値打ちがあるのだと言われそうだが,マニアはシリアルナンバーが好きなのである。むろんオールカラーの豪華解説書付きだ。

もうひとつ「シンデレラ」。発売記念のメタルステッカーはまあただのシールね。それとシリアルナンバー入りプレート。うーん,またシリアルナンバーだよ……。でもってこちらの目玉は特製フォトフレーム。うん,これはいかにも特製という感じでよい。シンデレラのロゴ付きだ。

コストを気にしちゃいけない世界なのだ

はっきり言ってこれらのオマケの実質的な価値というのはたいしてない。LDボックスの価格設定からするとやはり割高なグッズ類と言えるだろう。もちろん,それでよいのである。たいていはメイキングなどの映像特典,映像資料が充実しているのであくまでもふろく,オマケのたぐいと思えばどうということもない。おもちゃ箱型商品なのだ,箱を開けてニヤニヤする楽しみがあればそれでよい。

少し前に出た劇場版エヴァンゲリオンのボックスなどはやけくそみたいにいろんなふろく,オマケがついていてパッケージもでかかった(買わなかったけど)。たぶんこの手の商品の最後にして最大の花火だな。

おもちゃ箱型LDボックスというのはバブルがはじけて以後はなかなか受け入れてもらえない企画だ。LD衰退とともに消えゆく運命ではあろう。そして今やどん底不景気,もう当分この手の商品は期待できないし,第一こういうものをありがたがって買っていると「バッカみたい」と言われそうだ。

それでも,これはこれで楽しい世界だったのである。