哀愁のスタッフロール

究極のシリーズ新作にときめく

東映から出ている主題歌大全集シリーズはファンにとってはまさに究極のオープニング&エンディングコレクションだ。はっきり言って個人的な収集作業ではとても太刀打ちできない。別項にも書いたようにちょっと複雑な気分もあるにせよ,やはりうれしいタイトルである。言ってみればサプルメントだけでできているディスクである。

そのシリーズに「東映テレビドラマ主題歌大全集」が加わった。パート1である。これまでリリースされていたアニメや特撮といったマニアックな分野と違ってごく一般の人たち(?)が見ていたテレビドラマ群の登場である。わくわくしながらプレーヤーのスイッチを入れた。

……2時間後,僕はなんとなくしょぼくれた気分でため息をついていた。

物寂しさにとまどう

内容は相変わらず徹底したコレクションであり,たいしたもんだと思うのだが,これまでのアニメ編や特撮編とは明らかに違う気分にとまどっている,というのが正直なところだ。変な話だが,なにやら物寂しい気分になってしまったのである。

アニメや特撮だとかつての楽しさや懐かしさもあってずいぶん気持ちよく見られたのだが,ドラマ編はかなり違う。モノクロ世界の俳優さんたちを見ていると,これがもうはるか彼方に過ぎ去った遠い世界のことに思えて漠とした寂しさに襲われるのである。ノスタルジーにひたる心地よさとは違う,もっと閉ざされた出口のない気分だ。明らかに楽しさとは違う感慨である。

それに,オープニングやエンディングがただの静止画にスタッフ&キャストロールがかぶさるだけという作品もずいぶん多い。ドラマ本編を見ているときならどうということもないが,こうしてタイトル部分だけ集めて見ているとそうもいかない。2時間近くスタッフやキャストのリストを音楽付きでながめているだけ,という状況に近いのである。

ああ栄枯盛衰&人生の流転

おかげである種の人間模様が見えてしまった。スタッフやキャストの名前を延々と見続けていたため,この世界で活躍した人々の栄枯盛衰?までがなんとなく分かるのである。はじめはその他大勢の中の1人としてクレジットされていた俳優がだんだん前の方に名前がくるようになり,ああこの人だいぶ出世したな〜と思っていると2,3のドラマを経てまた徐々にチョイ役に落ちていく。当然と言えば当然だが,やはり浮き沈みがあるのだ。

おまけに流れる音楽がやけに哀愁を帯びたメロディばかりなので,いっそう気分は沈みがちになる。ハーモニカとギターと短調のハミングが3点セットでこれでもかと悲しげに鳴るのである。

かと思うとよく名前を知っている(でも最近はあまり見ない)人が意外な傾向の役で何作も主役を張っててちょっと驚いたりもする。へええ,てなもんである。でもこの人今は何やってんだろうなあ,と思うとやはり人生の流転を感じてしまうのだ。

やるせなさも漂う

個人的にいちばんドキッとしたのは城野ゆきの名を見たときかな。某SFシリーズのお姉さんとしてだけ記憶にある人なんだけど「そうか,ちゃんと女優としてのキャリアもあったんだなあ」とあらためて知った。なんだか小学生時代に好きだった女の子の名前を数十年ぶりに聞いた,という感じ。ちょびっとやるせない。

昔のものは封印したまま引っぱり出さない方がいいのかもしれない。コレクションの目的とは明らかに矛盾するが,そんな気分も少し感じた1枚であった。