輝国山人の韓国映画
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▼休戦後にもチリ(智異)山に残っている少数のパルチザンのうち,アガリ(口)というニックネームを持つ人物が隊長をしている部隊は,峡谷ピアゴル(彼我谷)を本拠地として,あらゆる蛮行を犯している。
▼文化政治責任者のキム・チョルスは,共産主義理念に懐疑を感じ始めるとともに,党性が高く冷徹な女性幹部エランから恋慕を受けて悩む。
▼ある日,他の部隊へ選ばれて行っていた女性隊員ソジュが,銃によって肩に負傷したまま,ピアゴルも完全に包囲されたという情報を伝えに戻ってくる。
▼隊員マンスとユチョルは,負傷したソジュを犯し,その渦中にソジュは息をひきとる。
▼マンスは,自分の罪を隠すためにユチョルを殺害し,死体を発見したタルソクにすべての罪をなすりつけた後,タルソクまで殺し,反動を処断したと隊長アガリに報告する。
▼チリ(智異)山共産軍討伐が始まるや,出し抜けに打ち込まれる砲弾に,パルチザンは,すべて殺される状況に置かれる。
▼エランとチョルスは,パルチザン生活に幻滅を感じて亡命について話し,隊長アガリに発覚する。チョルスと争ったアガリは,チョルスを刺し,エランは,アガリを射殺する。
▼エランは,チョルスを助けて山を降りてきたが,ソジンガン(蟾津江)を渡る頃,自由天地を目前にして,チョルスは絶命してしまう。
チリ(智異)山の中で暗躍するパルチザンの非人道的な蛮行と,女子隊員を巡る男子隊員間の葛藤,自由を希求するある隊員の脱走などを描写した反共映画
[制 作 年] 1955年 [韓国封切] 1955年9月23日 [観覧人員] [原 題] ピアゴル 피아골 [英 語 題] [ジャンル] ドラマ,反共,分断 [原 作] [脚 本] キム・ジョンファン(金宗煥) [脚 色] イ・ガンチョン [監 督] イ・ガンチョン [第2作] [助 監 督] カク・コン(郭建) [撮 影] カン・ヨンファ(姜栄華) [照 明] カク・コン(郭建) [音 楽] チョン・フェガプ(鄭回甲) [美 術] [武 術] [出 演] イ・イェチュン → 隊長 アガリ(口) ノ・ギョンヒ → 女秘書 愛蘭(エラン) キム・ジンギュ → 文化責 哲秀(チョルス) ホ・ジャンガン → 隊員 萬壽(マンス) ユン・ワングク → 隊員 _普iユチョル) ソン・グァクサン → 隊員 童植(トンシク) イ・ウォンチョル → 隊員 達石(タルソク) キム・ヨンヒ → 隊員 小珠(ソジュ) オ・ソジュ チョ・ナムソク → 隊員 一童(イルドン) カク・コン → 負傷隊員 キム・イックァン → 支隊長 [受 賞] 第1回 クムニョン映画賞/作品賞,監督賞,女優主演賞(ノ・ギョンヒ) 録音賞(イ・ギョンスン) [映 画 祭] [時 間] 106分 [観覧基準] 全体観覧可 [制 作 者] キム・ビョンギ(金炳沂) [制作会社] ペク・ホプロダクション [制 作 費] [D V D] 日本発売なし [レンタル] [撮影場所] [M-Video] [You Tube] https://www.youtube.com/watch?v=qs6xoW708oM
[Private ] K-DVD(ALL) 【77】 韓国映像資料院 古典映画コレクション 本編 映画評論家キム・ジョンウォン <ピアゴル>を記憶する(5分) イ・ガンチョン監督ドキュメンタリー(45分) 写真資料集 韓国映像資料院の紹介 出演陣および制作スタッフ紹介 [解説資料] 韓国映画100年史 その誕生からグローバル展開まで(鄭j樺 [著] )120頁 ・当時の文教部に「大韓民国を軍隊も警察も存在しない国のように描いた」として 上映を禁じられたが,制作会社は一部を削除し,エラン(ノ・ギョンヒ)が下山 して白浜をさまよう場面で,目的地を明示する意図で太極旗がはためく映像をオ ーバーラップさせたことで公開が可能になった。 [お ま け] ・チリ(智異)山でゲリラ活動をする北朝鮮遊撃隊の活動を素材にイデオロギーと 人間性の対立などを暴いた反共映画 ・イ・ガンチョン監督の力ある演出と強力なヒューマニズムが大きく反響を起こし たが,当時,一部でこの映画がパルチザンの姿を人間的に扱ったと批判するなど, 社会的に大きな論争になった作品でもある。 ・制作当時,映画の内容が,実際のパルチザンでなければとうてい分からない詳細 な部分まで細かな描写をしているために,軍部隊が,この映画の制作スタッフを 容共分子だと疑ったエピソードがあるそうだ。 ・特集 韓国映画の黎明 上演作品 (福岡市綜合図書館 映像ホール シネラ 2000年4月) ◎ 韓国映像資料院 古典映画コレクション <ピアゴル>(DVD) 添付 ブックレットから 翻訳 <ピアゴル> 作品解説 韓国映像資料院 研究教育チーム チョン・ヘヨン ・<ピアゴル>は、1954年にチョンブク(全北)警察局公報主任であるキム・ジョ ンファンがチリ(智異)山共産軍討伐の時に入手したパルチザンの記録と手記を 基に、イ・ガンチョン監督と共にシナリオ化したのをキム・ジンギュ、ノ・ギョ ンヒ、ホ・ジャンガンなどを出演させて作ったイ・ガンチョン監督の2番目の作 品だ。 ・キム・ジンギュのデビュー作品でもあるこの映画は、チリ(智異)山でゲリラ活 動をする北朝鮮人民軍遊撃隊の活動により、イデオロギーと人間性の対立を描写 したし、結局、彼らが自滅することになる韓国反共ヒューマニズム映画の典型だ。 ・6.25(ユギオ:朝鮮)戦争の残留が、チリ(智異)山など、全国のあちこちに残 っていた時期に作られたこの作品には、韓国軍と北朝鮮軍が戦闘的に対立する状 況は出てこない。 ・韓国軍の説得と教化で、パルチザン共産軍が自然に南に亡命することになるとい う典型的なナレーティブを使う代わりに、パルチザン隊員の残忍な蛮行と人間的 苦悩、内部的葛藤などを表わすのに注力する。 ・自ら孤立して分裂していく共産主義内部の矛盾を写実的に描写することによって 南北の対峙状況を表わさなくても、共産主義自体を否定する効果を上げたわけだ。 ・だが、パルチザンの親分であるアガリ(口)隊長の女性隊員に向かった愛情と求 愛、隊員の間の三角関係、男性パルチザンの性的欲望、知識人の挫折など、私た ちと敵対関係であるパルチザン隊員の人間性とヒューマニズムなどを描写したと いう理由で、反共映画としての思想が疑問に思ったりもした。 ・当時、この作品は、"反共映画としてみることは困難なので治安上影響を及ぼす” という理由で、1955年8月24日に国都劇場で予定された上映が取り消しになった し、検閲段階で苦難を体験しなければならなかった。 ・結局、制作者キム・ビョンギは、問題になる一部の場面を削除し、最後の場面を あたかも討伐隊に投降するような脈絡を追加するような措置を取ったが、その代 表的な場面が、まさに映画の最後の白砂場の場面だ。 ・エランが、パルチザンの群れを抜け出して、河岸の白砂場をとめどなく歩いてい く場面で終わりにするのに、突然、背景に太極旗がはためく。 ・これは、エランが歩いていく目的地が曖昧だという批判を避けるための代替物だ った。 ・軍の高位関係者、映画評論家、言論界、劇作家の間に賛反両論が広がって世の中 を沸きかえるようにしたあげく、このような方式でかろうじて検閲に通過し、つ いに国都劇場で封切りした記録を有している。 ・だが、イ・ガンチョン監督は、<ピアゴル>を通じて韓国的リアリズムの存在を 立証したし、当時としては、風変わりな反共映画という点で芸術的な成果を上げ た。