村祭りタップ

■座頭市■

子供のころから勝新太郎の座頭市も(テレビでだけど)よく見ていたので,北野武/ビートたけしで座頭市をやると聞いたときには「あ,なるほど」と思った。確かに今あのキャラに合うのは彼しかいないよな,と思ったのだ。

勝新版の座頭市には結局劇場ではお目にかかれなかったけど,それでも当時銭湯の脱衣所などで映画のポスターを見て「おおー」と思ったりしてたな。懐かし〜。唐人剣との対決なんか子供心に「どっちが勝つんだろう」とときめいたものである。

でもって北野版座頭市,これ毎週でも見たいなーと思った。金髪やら例のタップダンスやらは斬新だけど,一部の人たちが愚痴っているほど違和感はない。むしろテンポがよくてスピーディーな殺陣や妙にくすっと笑えるギャグや仇討ち姉弟の痛ましさといったパートがちゃんと混じり合ってバランスのいい娯楽映画になっていると思う。達人と超人の中間くらいの市の強さが実にカッコいいではないか。

市は通りすがりのスーパーマンみたいなもので,あまり情と絡まず,立ちふさがる悪党をざくざく斬り倒していく。通りすがられた?悪党たちこそいい迷惑というか災難だったねーというかご愁傷様であった。まあ,ヒーローものなんだからケレン味たっぷりってのは見ていて痛快だ。

これホントにシリーズ化してほしいけど無理なんだろうな。でもなんかの間違いでテレビシリーズとか作ってくれないだろうか,などと夢想してしまう面白さである。もちろんその場合はフィルム撮影でなきゃダメだよ。

見どころはいろいろあるけど,やはり話題になったラストのタップダンスの群舞シーンはいいねえ。

あまり映画を見ない人には時代劇でタップというとミスマッチに感じられるかもしれないけど,昔は時代劇で群舞や歌などのミュージカルシーンは珍しくなかった。時代劇には硬派な黒澤明系だけじゃなく,マサラムービーの親戚みたいな作品群もあるのだ。

だからこの映画での村祭りタップのシーンは,意匠が21世紀の音楽とタップダンスに進化しているけれど,いたって伝統的な仕掛けなのである。

DVDではチャプター13の108分46秒あたりから。祭りのシーンはその少し前からだけど,タップが本格的になるのはここから。途中,悪党の親分と市とのやりとりをはさんでそのままエンドロールへ向けて盛り上がっていく。いやーここは見ていて本当に映画の快感ってものを感じたな。

そういえばエンドロール直前にギャグ(というか最終的なオチ)が一発入るんだけど,そこを含めて「目」に関する仕掛けがいくつも出てくる。監督北野武は主人公の盲目という属性をよく考えて使っているなあと今にして思う。やはりただ者ではない。

座頭市 BCBJ-1811
発売元(株)バンダイビジュアル