ホントにあるんだ翼だけの爆撃機

■宇宙戦争(1953)■

かつて「宇宙戦艦ヤマト」が人気を呼んだのはその独特のメカの魅力があったからだと思う。特に松本零士のデザインコンセプトが徹底していたことが大きい。第1話を見たときうおおーと叫んだ人は少なくないはずだ。その第1話に登場したガミラス空母から発進するブーメランのような形をした爆撃機をおぼえておいでだろうか。

なに,知らない?ではハリウッドのSF映画の名作「宇宙戦争」はどうかな。

これはテレビで何度もリピートされているから見たことある人も多いだろう。緑色の怪光線を発する強力な戦闘マシンで地球を攻撃してきた火星人と人類の戦いを描いた作品だ。見事な特撮(まだSFXというより特撮といった方がしっくりくる時代の作品だ)と演技陣の熱演で古典的名作の地位を確立している。まずは定番の1本である。

火星人の強力なバリヤーに阻まれ,通常兵器による抵抗が無益と判断した人類はついに核兵器の使用に踏み切る。そこで爆撃機として登場するのが翼だけの飛行機なのである。まさに金属製巨大ブーメランといった感じでその未来的なデザインに驚く。しかも画面から見るにどうも特撮ではなく実在の機体を撮影しているようで,うわあこんな飛行機がほんとにあるのか,と思ったものである。

これは全翼機と呼ばれるカテゴリーの飛行機で,後にノースロップ社のYB−49という機体であるらしいことを知った。航空ファンには自明のことだったろうが,この映画で初めて見たこの機体は,そのあまりの飛び抜けたデザインで実にインパクトがあった。映画の製作者たちがこの飛行機を選んだ気持ちもよくわかる。

うちの古いLDではまずサイド2の21分30秒でこの全翼機の発進シーンを見ることができる。パイロットは「こちらフライングウイング」と言っている。なるほど。さらに24分31秒では空をゆくフライングウイングが爆撃体勢へと移る飛行ぶりが確認できる。かっこいいのう。

実際にはこの機体はトラブル続きで,結局開発は中止になったようだが,とするとこの映画で拝めるYB−49は貴重な勇姿であるといえるだろう。

宇宙戦争 SF078-1036
発売元(株)レーザーディスク/パイオニア