赤ずきんちゃんと狼男のキス

■狼の血族■

アダルトな赤ずきんちゃん物語であり,ホラー映画としても独特の深い幻想性に満ちた異色作「狼の血族」は,これ1枚を所有するだけであなたのコレクションを「ただ者ではない」と言わしめる必携の逸品である。夢の中の夢の中の夢の中の・・・というまるで押井守が監督したような不思議な味わいがすばらしい。

たとえマイナーなB級作品に見えようとも後の作品に大きな影響を与え,多くの模倣を生んだ。僕としては最大限に尊重したいタイトルである。

友人たちに手持ちのコレクションの中からいくつかさわりのシーンを見せると決まってこの作品のところで「これなんて映画?」と聞かれたものである。見る者に強い印象を与えずにはおかない不可思議な魅力を秘めた作品なのだ。

赤頭巾ちゃんにあたる少女ロザリーンの美しさとはかなさ,狼男ならずとも「食べてしまいたい」と思わせる魅力は主演のサラ・パターソンに負うところが大きい。狼男との賭に負けてそのくちびるを許そうとするシーンはドキドキもんである。

LDではサイド2の26分37秒あたりか。この前後のロザリーンと狼男とのやりとりの危うさというのはもう絶品だ。ここをちらっとだけ見せると皆「この映画見たい〜」と言い出すのである。

狼男「紳士は約束を守る・・・淑女も守れ」
少女「何のこと」
狼男「賭は私の勝ちだから支払ってもらう」
少女「あれね」
狼男「キスだ」
・・・・・・・
少女「なんて大きな歯!」
狼男「君を食うためだ」

この直後,公開当時多くの変身ものに大きな影響を及ぼした狼男の変身シーンがある。27分30秒あたりからだが,怪物の変身と言ったらもうおなじみのあのパターンである。日本のアニメなんかモロに影響を受けたものだが,オリジナルはここにある。そして少女ロザリーンの意外な運命……。

いまだにDVDは出ていない(2000年秋現在)し,LDでもとっくにカタログからは消えているので中古市場で見つけたら何をおいても入手されることをすすめる。※後にDVD発売済み

狼の血族 G88F5322
発売元(株)ポニー