ウィル・スミス対NS−5軍団

■アイ,ロボット■

アレックス・プロヤス監督といえば「ダークシティ」はたいへん好きな作品だったけど,近作の「アイ,ロボット」も実に面白かった。もしかするとこの人は僕の嗜好に合ってるのかな。

原作のアイザック・アシモフは僕のようなロートルSFファンにとってはクラーク,ハインラインと並んでいにしえの神々のようなお方だが,よく見るとこの映画,原作とは別物なんだね。だからクレジットも原作アシモフではなく「原案」になっている。でもいい。御大のカラーとは違ってもこれだけ楽しませてくれればよしとする。

つくづく思ったのはSFってお金必要だなあ&SF映画はハリウッドが似合うなあってこと。言うまでもないけどすごい映像にはすごい金がかかる。ウィル・スミスのギャラだって半端じゃないだろうけど,それでも連中はふんだくった分の仕事はきっちりやるなあと感心する。

それにしても真っ昼間の合成って進歩したものだ。この映画でなにげなく描かれているけど人間とロボットが普通に混じって歩いている都会の風景,あれを一昔前にやろうとしたらきっと途方に暮れただろうなと思う。

以前「スターシップ・トゥルーパーズ」で真っ昼間の荒野にエイリアンの群れがわらわらと登場するシーンを見た時には「おおー,難しいことやるなあ」と感動したものだ。昼間の特撮シーンは夜のシーンより格段に難しい。得体の知れない蒸気がしゅーしゅーと漏れてごまかしているのとはわけが違うからね。今や技術はさらに進歩している。

もちろんまだCGっぽさが抜けない部分はあるけど,面白いことにCGだけのシーンより人間と合成している部分,つまりCGにも演技させている部分の方が出来がいいように感じた。登場人物たちとロボットが並んで歩いているシーンの方が違和感が少ないのだ。時代は変わったねえ。

プロヤス監督の絵は少し作りすぎの感がなきにしもあらずだけど,ここまでやりまっせというにやにや笑いが見えそうで僕は好き。だから中盤のウィル・スミスの主人公がロボット軍団に襲われるシーンなんかケレン味たっぷりでいいね。CGでは重量感の表現が難しく,ロボットたちのアクションでも重力と加速度がいまいちだけど,それでもここまであからさまにやってくれると楽しい。

DVDではチャプター18。このレベルの娯楽作品が廉価版で買える今のAV事情というのは本当にありがたい。ちなみに僕はこの作品も吹替えで見たんだけど,山寺宏一さんに「ゴーストが……」なんて言われるとどうしても某作品を思い出してしまうなあ。

廉価版でも充実しているコメンタリーがまた面白くて,最近はメイキングよりずっと楽しみ。でもいくら廉価版だからといって冒頭から予告編を延々と見せられるのは勘弁してほしい。スキップはできるにしてもね。

アイ,ロボット F-24232
発売元(株)20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン