地下鉄の風に舞い上がるモンローのスカート

■七年目の浮気■

映画史上もっとも有名なワンシーンは?というテーマでアンケートでもやったら,たぶん間違いなくトップ争いをするシーンをひとつ。

「七年目の浮気」の中でデート中のマリリン・モンローのスカートが地下鉄の風で舞い上がるあのシーン。この映画自体は見たことなくともポスターやスチルなどで1度や2度は目にしたことがおありのはずだ。20世紀後半の文化を語る上でも必ず登場してくるあの超人気女優のもっとも有名なワンショットである。

そこでこの映画でそのシーンを確認してみると……おそらく大部分の人があれれ?と感じるはずだ。というのも実はポスターやスチルでおなじみのあのシーン,おそらく地球人類の過半数が知っているかもしれないあのシーンが映画本編には「ない」のである。厳密に言えば,だが。

トレースしてみよう。僕の持っている初期版LDではサイド2の19分9秒,映画館から出てきてトム・イーウェルと話している彼女の足元を地下鉄が通過し,通気口から地上に吹き出す風で彼女のスカートが舞い上がる。続いて19分43秒,再び通気口からの風で彼女の形のよいおみ足を拝むことができる。

しかしどちらのシーンもモンローの全身は画面には映らないのである。カメラは1度目は上半身から足元へとフレームを移しスカートが舞い上がるときには足元を映している。2度目の時には最初から足元を映し,スカートが収まると上半身のカットに切り替わる。

つまり誰もが知ってるあの舞い上がるスカートを押さえてはしゃいだように笑っている彼女の全身のショット,モンローの代名詞にもなっているあの姿というのは映画本編中では見られないのである。初めてこの「七年目の浮気」を見たときにこのシーンで,え?と思ったのはそういうわけだったのだ。むろん映画自体には不満はなく僕の大好きな1本である。

このシーンのスチルは何種類もバージョンがあってそのどれが思い浮かぶかは人それぞれだ。今ならCD−ROMで写真家サム・ショウ(モンローの写真を撮り続けた人物)の作品集が入手できるので,その中にこの有名なシーンのパブリシティ写真を発見できるだろう。ファンなら「七年目の浮気」のLDとセットで持っておきたいものである。

ちなみにこのスカートが舞う前後のシークェンスというのがこの映画でもっともマリリン・モンローがチャーミングに見えるカットである。必見。

七年目の浮気 SF078-1179
発売元(株)レーザーディスク/パイオニア