キングコングの息子の最期

■コングの復讐■

看板に偽りあり,というのはなにも映画に限ったことではないがタイトルと内容が全然合ってないぞ〜という作品は数多い。特にB級作品だともうやりたい放題で笑ってしまうことも数知れずだ。まあ,あまり気にすんなよという声が聞こえてきそうな映画なら皆さんいくつも心当たりがあるのでは?

特にモンスター映画やホラー映画,マカロニ・ウェスタンなどではタイトルなんかそうとういいかげんというか適当だから「逆襲」「怒りの」「花嫁」「地獄の」なんてコトバの組合せだったりする。そのへんはお約束として楽しむべしってことだ。

そのモンスター映画の歴史的名作「キングコング」の正統な続編「コングの復讐」も原題は「THE SON OF KONG」つまり「コングの息子」だからニュアンスが全然違う。お話の方も前作より小振りで,コングの息子はかわいくて健気ないいやつなのだ。

ニューヨークでコングが墜死してから一か月,コングを大都会に連れてきてたいへんな騒ぎを起こしてしまった元プロモーター?のデナム氏は山ほどの訴訟と損害賠償に堪えかねて海外へ脱出。ふとしたことで再びコングの島へ渡ることになった彼はそこで泥沼にはまりこんでいたコングの子どもを助けることになって……。

ちょっとした人間ドラマとあまり必然性のないモンスターの戦い,唐突な火山の噴火といった展開はまああまり気にせず楽しむがよろしかろう,という作品だ。久しぶりに見直してずいぶんこじんまりとした映画だなと思ったよ。70分だからね。

何しろ1933年作だから古色蒼然としたところはあるけど,悪党すらも今のように歪んでない時代というのが雰囲気からも伝わってくる。この感じはけっこう好き。まだ世界に余裕があった時代っていいな。

それはともかく,昔見たときから一番印象に残っているのはラスト直前のクライマックス,コング最期のシーンだ。ネタバレになるけど,火山の噴火で島が海中に没する時,コングは海に沈みながらも主人公を乗せたその手だは水面に高く掲げてギリギリまで持ちこたえる。彼がからくも仲間に助け出されると,その巨大な手は海の中に沈んでゆく……。包帯が泣かせるけど,その意味は本編でご確認あれ。

DVDではチャプター11の1時間5分15秒付近から。このシーンは子供心にもかなり印象的だった。宮崎駿の「風の谷のナウシカ」原作本のラスト近くで巨神兵がナウシカを助けるシーンを見たときは「あっ,これは」と思ったものだ。たぶんこのコングのラストシーンがルーツじゃないかなあと思っているんだけど,どうだろう。

僕の記憶ではこのラストでコングに助けられるのはヒロインの方だと思っていたけど実際は主人公の男の方だった。どこかで思い出が美化されていたらしい。ちょっと意外だった。

コングの復讐 IVCF-101
発売元(株)アイ・ヴィー・シー/ビームエンタテインメント