クリスマスにも映画を見ましょう

今年もあと10日ほど。街中はどこを歩いてもジングルベルのメロディーが聞こえてくる。僕は子供のころからクリスマスやサンタにこれといった想い出はないんだけど,それでもこの曲が聞こえてくる季節がいちばん好きだ。なんだか暖かい気持ちになる曲だと思う。

そう,クリスマスって本来の意義はともかく,皆が心優しく暖かい気持ちになる稀有なイベントだった。小説もドラマも映画もコミックも,クリスマスネタに傑作・佳作が多いのはだてではない。あれなんかどうかな?と心当たりの作品が誰にもひとつやふたつは思い浮かぶはずだ。

しかし悲しいかな,この国ではクリスマスといえばリビドーが著しく向上する別の意味で稀有な一日になっている。イエスさまも末法の世だとお嘆きになっていることだろう。

そんな罪深いあなたも平穏に生きれば一生に70〜80回くらいはクリスマスを迎えるのだ。そのうちサンタ(兼パパ)にプレゼントをもらったのが●回,楽しく騒いだパーティーの想い出が◆回,恋人とエッチしたのが▼回,自分が親になってプレゼントを買ったのが■回,誰にも会わずに寂しく過ごしたのが●○回……。

たまには映画を見て過ごすクリスマスがあってもいいと思うよ。

最近は季節感もすっかり薄らいでいるから,この季節になったからといってクリスマスにちなんだ映画が公開されるなんてことはない。というかほとんどない。かつてはそうでもなかったと思うが,僕自身,そんなにクリスマスネタの映画をいろいろ見たという記憶はないなあ。テレビじゃ毎年「ホワイトクリスマス」なんて定番だったけど。

昔,なぜか劇場で見たのが「クリスマスキャロル」で,これは恋も友情も犠牲にして金儲けに突っ走ってきた男が,クリスマスの奇跡で暖かい心を取り戻すというお話。ご覧になった方も多いだろう。僕が見たときにはカトリーヌ・ドヌーブの「幸せはパリで」が併映(思い違いの可能性あり)で,あのバート・バカラックの名曲がとても印象深い。肝心の「クリスマスキャロル」の方はもう忘却の彼方だ。でもドヌーブの方もストーリーは全く記憶にないんだけどね。

先日LDの「ミステリーゾーン傑作選」で見た「弱き者の聖夜」というエピソードなんかよかったぞ。相当状態も古そうなビデオ撮り作品(このシリーズは通常フィルム撮影)でブラッドベリかロバート・F・ヤングかというベタベタのセンチなお話だが,この季節にふさわしい佳作だった。ハート・ウォーミングというやつだ。

まあクリスマスだからクリスマスものを見なくちゃならんてこともないわけで,それこそ「踊る大捜査線」でも「アルマゲドン」でもかまわない(今は98年12月)。なんなら冬のホラー&極悪スプラッタ大会なんて物好きな小屋を探してみるのもいいかもしれない。想い出作りにはげむよりよほど永く憶えていられる一日になるかもしれない。

たまには映画を見て過ごすクリスマスがあってもいいと思うよ。