拝啓,新緑の候

Spring has come

暖かい季節がやってきました。僕は冬の冷たい空気の方が頭がシャキッとして好きなんですが,豪雪・寒冷の地に住む人から見れば,そりゃー南に住む人間のぜいたくだと言われそうですね。でもこの時期の,世の中が動き出す感じは嫌いではありません。風の匂いも冬場とは違ってもう布団の中でもぞもぞしているわけにはいかないって気がしませんか。

今日はひとつに絞って書けるネタがありませんので,このHPには珍しく身辺雑記でお茶をにごすことにします。まあ春がきた,のごあいさつということでおつきあいください。季節の方はすでに春から新緑へという気配ですけどね。

相変わらず映画館ではいろいろ話題作が公開中だしDVDもすごいリリースラッシュでサイフの中身は軽くなる一方ですが,僕は最近そっち方面にはちょっとご無沙汰です。映像関連と読書はどちらも大好きなのですが,これらは(その他の趣味も含めて)バイオリズムの3本の曲線のようにそれぞれの周期で興味が増したり減じたりしています。今は読書三昧の時期。

だから休日は朝から晩まで本を読んでます。完結するまで待っていたシリーズものなどを「それいけ」って勢いで読破して「ぷはあー面白かったー」と言えるのはまっことシアワセであります。その間は食事も少量だし,間食もしないので体重も落ちます。読書ダイエットなんて珍しいでしょ。

このサイトの文章をお読みになっている方にはおわかりでしょうが,僕の作品評というのはおおむね甘いです。小説の場合も同じかな。それでもこうして集中的に読んでいると引き込まれる作品とそうでない作品との差が見えてきて興味深いものがあります。

最近読んだ某ファンタジーなど,最終巻まで読んでもついに共感できなくて悲しかったですよ。5冊も読ませておいてとうとう期待が報われなかったこの無念さを何としよう。けっこう楽しみにとっておいた作品だったのになあ。こんだけ面白くなりそうな材料を持っていながらどうしてこんなに外しているんだろう,と思ったもんです。僕が書き直せばもっと面白くなるのに,と考えるのは傲慢でしょうけど,ある意味,物語の面白さというものについて考えさせてくれた作品でした。

最近何か面白い本を読みましたか。

Kiss me again

DVDでは1枚も買ったことがありませんが,LD時代にはBGV作品を時々買っていました。環境映像&音楽ですね。テレビは特に見たくない,人の話す声も聞きたくない,でもブラウン管に何も映っていないのは寂しいというときにそれなりに重宝するんです。パイオニアとかはこの手のものをよく出していました。

先日ラックをながめていると「Kiss me again - 世界でいちばん美しい -」というLDが出てきました。10年くらい前に買ったのかな。これもBGVの1枚なんですが,軽い音楽をバックに流れる映像というのがすべてキスシーンなんですね。映画の一場面ではなくこのビデオのために撮影されたものです。たぶん。

親子のキス,恋人同士のキス,夫婦のキス,老人と孫娘のキス,小さなカップルのキス等々いろんなシチュエーションのキスシーンを並べてあるのですが,いずれも幸せそうなキスでなかなかよい感じです。たまに出る字幕はフランス語らしくてさっぱり意味がわかりませんけど。

演じているのはあちらの人たちなのでとってもさまになっています。特に子供が「んまー」というくらい可愛くてびっくり。もう人間とは別種の高貴な生き物じゃないかというくらい。日本人ではこうはいくまいって思いました。

そういえば,昔ハリウッドではキスシーンに制限時間があったことをご存知ですか。なに,知ってる?おお,さすがですね。あの国にも昔は頑迷な倫理基準があったんですな。撮影所ではタイムキーパーがちゃんとストップウォッチでキスの時間を計測していたのです。いやはや。

じゃあそのキスの制限時間,具体的にはどのくらいだったかご存知ですか?これはね,8秒だったそうです。8秒。唇をくっつけていられる時間がわずか8秒。いや〜これはなかなか厳しいですね。でもこれを逆手にとって短いキスを連続することで結局は長〜いキスシーンを見せてくれた監督さんもいます。確かヒッチコック先生だったと記憶していますが,さすがだなあ。

感情移入過多症?

映画でも小説でもコミックでも同様なんですが,どうも僕はかなりの感情移入型読者(観客)らしいんです。評が甘いのはそのせいもあるでしょうが,これも度が過ぎると困ります。それだけ深〜く物語を楽しめるというメリットはありますが,その代わり登場人物たちと同じくらい精神的にくたびれるんですね。

最近の「マトリックス」をはじめ,古今東西,仮想現実でのダメージは実体にも及ぶということになっております。心身相関現象ですな。島本和彦のマンガにもそんなのがありました。僕は気力と引き替えに物語の海を潜っていくタイプなのです。ふふふ,かっこいいでしょ。

だからヒロインがいじめられるばっかりのドラマなどをうっかり見てしまうとたいへんに疲弊します。彼女が逆襲してくれないといよいよ落ち込みます。次週をお楽しみにって言われても次週もいじめられるんじゃ辛抱たまらん,この気持ちを抱えたまま悶々と過ごせるかあ,と激情を持て余してしまいます。おかげで最近はテレビドラマ見る気力がとてもわきません。

アニメの「小公女セーラ」は島本須美さんの声が好きで見ていましたが,セーラはラストに至ってもあの憎たらしい連中に報復しませんでした。まあそういうキャラクターなんですけど,こっちはフラストレーションで爆発しそうでした。まったくもって暗いお話でしたねえ。

あれでは年少の視聴者の精神を歪めてしまうのではと心配なくらい。富と権力を取り戻したセーラが,自分をいじめたミンチン先生やラビニアに復讐するくだりを1クールくらいやりゃあいいのに。

それじゃ「小公女」じゃないって?いやいや,現実世界ではともかく,物語の中では復讐というのはそれなりに健全な精神のなせるわざなのです。ここを外してくれると僕のような視聴者は痛めつけられたままへろへろで現実に帰還することになります。それはとってもイヤ。

感情移入過多ってたいへんなんだよう。

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積ん読が山とあるので当分は読書優先の状態が続きそうです。昨年暮れにある大長編ファンタジーを全巻一気読みしたときは久しぶりに寝食を忘れるという楽しさでした。どうもこれでスイッチが入ったらしいんですね。映像関連に興味が戻ってくるまでしばらくかかりそうな気がしています。

そんなわけで更新は細々といった感じになるかもしれませんが,時々のぞいてやっていただけると幸いです。それではまた。