時の支配者逝く 追悼−光瀬龍 |
今年の七夕は気がつくともう夜の11時50分くらいになっており,やれやれ世の中ますます季節感がなくなってきたなあ,などと思っていた。
しかしこの1000年紀最後の七夕の日,悲しい出来事が静かに起こっていたことを知った。
光瀬龍逝く。
僕にとってはたとえようもなく大切な作家だった。日本SFの輝かしい成果の数々を青春時代に体験した者にとって,これにまさる悲報があるだろうか。
たそがれに還る,百億の昼と千億の夜,喪われた都市の記録,宇宙年代記の諸作,寛永無明剣,そして夕ばえ作戦などジュヴナイルの数々。他の作家では決して代替のきかない限りなく貴重な創造者だった。
なんという痛み。なんという喪失感。ああ,暁はただ銀色。
星さんが亡くなったときは20世紀の終わりを感じた。光瀬さんの訃報は僕の青春時代が遠く彼方へ去ってしまったことを告げる無常の鐘だ。
氏の墓碑銘には何と刻まれるのだろう。時の支配者は永遠に去って還らない。