サントラに挑む!

ことのはじめは

世は完全にデジタル時代で,音楽メディアもCDやMDがメインだが,懐かしのアナログLPも意外としぶとくて「消える消える」と言われながらちゃんと生き延びている。むしろひと頃に比べるとハイカラな趣味として盛り返してきている感じさえある。

筋金入りのオーディオマニアたちには何を今さらと言われそうだが,アナログの音の味わいというのはきっと独特の魅力があるんだろう。ピュアオーディオに入れ込んでる人たちってものすごい環境を作ってるもんなあ。

しかしそんな重装備を持たない僕でも昔買ったLPにはそれなりの思い入れや懐かしい記憶があって処分する決心がつかず,いずれ折を見てCD化しようと考えてきた。最近はパソコンのCD−Rが普及したおかげでその気になりさえすればCD化は難しい作業ではない。

そんなとき,雑誌で音楽用CDレコーダーの新製品の記事を見た。基本的にはPC用のCD−Rと同じだが,オーディオ機器なので回路も音質重視,何よりMDやテープデッキと同感覚でコンポに追加して使える点がよい。よっしゃ,これで我が家のLPたちも復活じゃ。

あなろぐ・らぶ

とりあえず実機が来る前に押入のLPたちがまだ生きているか確かめようと思い,速攻で街の電器店に駆け込み特価品のレコードプレーヤーを持ち帰る。テスト用だから安物で可なのだ。

何枚か引っぱり出してきたアルバムをターンテーブル(なんて懐かしい言葉だろう)にのせ,ドキドキしながら針を降ろすと……うほほ〜い,ちゃんと鳴るではないか!いやもう単純に感動してしまったぞ。

ちょっとモコモコした音だが,安物プレーヤーではこんなもんだろう。むしろ柔らかいと言ってあげるべきだろうな,とすっかり気分の良くなった僕はニヤニヤしながらとっかえひっかえ聴き始めた。20年ぶりくらいに聴いた懐かしの某アイドル(特に名を秘す)の曲には胸が熱くなってしまったよ。ああ,ずいぶん聴いたよなあ,これ……。しばし陶然。

うん,これは是非CD化して新たな命を吹き込んでやるべきだな。彼らLPたちが永年押入の隅で反りもせず生き延びてきたのはこの時を待っていたからに違いない。ああ,なんてけなげな連中だ。僕はこいつらの気持ちに応えてやらねばならない。

天啓にうたれる

CDレコーダーのユーザーはまずアナログのCD化を考えるだろう。手持ちや借りたCDのデジタルコピーという用途も大きいと思う。僕の場合はやはりお蔵入りしていたLPたちの復活が目的だったが,意外なほど劣化してなかったので期待は高まるばかり。うふふふ,こりゃ〜楽しみだわいとか言ってね。

しかし,録音ソースになるLPたちの整理をしているとき,ふと何かが頭をよぎった。まてよ,録音ソース?つまり音源だよな……音源……音源……まてよ!

木を見て森を見ずというべきなのか,それとも灯台もと暗しというべきなのか,いやどっちもちょっと違うなあなどとつぶやきつつ,僕はアナログLPよりはるかに膨大な録音ソースを持っていることに気がついたのだった。

そうだ,うちにはまがりなりにもLDやDVDの資産がどっさりあるではないか。これを音源にすればセリフと効果音付きサントラCDが作り放題ではないか。いわゆるドラマ編サントラというやつだ。うん,こりゃーいい。

確かに音楽部分のみ切り出したサントラも良いけど,映画の雰囲気となると効果音やセリフと音楽がミックスされた部分に濃厚に現れる。うまくシーンを選んでやればきっとゴキゲンな(死語かなあ)CDができそうではないか!

まずはドレミの歌から

実機が届くとさっそく録音のノウハウを検証する。ふむふむほうほうなるほどねえ。よしだいたいわかったぞ。アナログLPの録音テストも上々だったのでいよいよサントラのテストをやってみた。

「サウンド・オブ・ミュージック」からドレミの歌のパートを録ってみる。おお〜雰囲気出てるじゃないか!ちゃんとあのシーンの映像が浮かんでくるぞ。

よし,じゃこれはどうだってんで持ち出したのは「サンダーバード」の古いLD。おなじみのメインテーマ,特にエンディング部分に流れるそれはCDにもない。録音してみると……おおおおっ,これだこれだよこれこそサンダーバードだよ!これなら大好きなITC作品群のテーマコレクションCDができてしまうではないか。

もう顔がほころんでいるのが自分でもわかる。MDは便利だったが,ここまでのよろこびはなかった。以前,LDからカセットに録ったことはあったけど満足感が全然違う。この差は何なんだろう。音楽用CDってやはりステイタスが1コ上なんだろうか?

「ストリート・オブ・ファイヤー」のTONIGHT IS WHAT IT MEANS TO BE YOUNGはサントラ版と映画版では微妙にアレンジが違うし拍手や歓声付きで聴きたい。「マイ・フェア・レディ」で没になったオードリー自身の歌も入れよう。「十戒」の海が割れるシーンの曲も効果音付きで欲しい。「燃えよ!ドラゴン」のテーマと一緒にブルース・リーの格闘シーンの音もぜひ入れよう。うわうわうわ血がたぎるぞ。

というわけで,サントラコレクターではないはずの僕にもとめどなく構想がわいてくる。映像の力は大きいが,音の力もまたずいぶん強力だと思い知る日々である。CDレコーダー,まことに面白いアイテムだ。

で,アナログLPたちの復活はというと……後回しである。ああ,ごめんよお〜。