雨の日,特別な日,さりげない日

記念日はさりげなく

以前にも何度か同じようなことを書いていますが,僕は昔からのベータマックスユーザーでした。しかし,20世紀いっぱいソニーに操を立てたのでもう十分じゃないかと思い,潔く(?)D-VHSやHDD+DVDレコーダーに乗り換えることにしたわけです。まあ,気が済んだという感じですね。

ベータのライブラリを整理し,処分する作業はなかなか一気には進められず,数年越しにだらだらやってきたのですが,ついにその作業にも終わりの日がやってきました。

長かった。作業に取りかかって4年はかかったんじゃないかな。

重要な録画はそれぞれデジタルメディアに移し替え,コンパクトでスマートなほんのひと抱えのDVDやテープに生まれ変わりました。棚一面,いや二面も三面もあったエアチェックのライブラリが消え去ると,さすがに感慨深いものがありますね。

そして今日,それら古いテープとデッキは同じベータユーザーの友人に引き取られていきました。20年も楽しませてくれてありがとう。キミたちのことは忘れないよ。

僕のAVライフの大きな柱であったベータとの別れは,本当なら一大記念日として特別な一日になるべきところですが,実際にはこれといった思いもなく,雨の中をさりげなくもらわれていきました。もうとっくにさよならは言ってあった……ということです。

LPは不滅なり

最近また思い立って,アナログLPをCDに焼く作業にはまっています。LPのコレクションはAV時代以前の代物が大部分なのでそれほど多くはありません。けれども今に至るまでついにCD化されなかったものや,CDにはなったけどとっくに廃盤になっているものなど,自分の怠惰のツケは少なからず回ってきてる感じです。

ほかの買い物でも同じですが,迷ったときは買っておけ,というのが後悔しないための鉄則です。しかし何度痛い目にあってもこれ忘れちゃうんですよね。おかげで,せっかくCD化されたアルバムまでみすみす買いそびれること多数。オレには学習能力がないのか,と嘆かわしくなります。

でもアナログ盤があればとりあえず今は大丈夫。よい時代になったものです。技術的には。

以前はそのままCDレコーダー(音楽用のね)で作業していたのですが,パソコンで切ったり貼ったりをおぼえると,そっちの方が小技が効いて面白いと思うようになりました。曲間のスクラッチ・ノイズをカットするような,そのまま無視してもいいことが気になりだすと,手間は増えても凝りたいものなんですよ。

それにしてもLPって意外と保ちますね。特に保管に気を遣っているわけではありませんが,反ったりひび割れたり,というトラブルもなく,安物のプレーヤーでも(少しこもった音になるけど)そこそこ鳴ってくれます。30年以上経っていて「これ」なら立派なもんだと感心しているところです。

今のデジタルメディアは30年後にはまず使えないんじゃないかと思っているので,アナログLPの不老長寿ぶりはたいへん価値あるものだという気がします。

雨の日のとっておき

CD化したアナログ盤の中で,僕自身もっとも「これ買っといてよかった」と思う一枚は天江恵子さんの二枚のアルバムです。

彼女はジャズ・フュージョン系のハープ奏者というたいへん先駆的な演奏家なのですが,なぜかCDにはならなかったんですよ。ポピュラーな名曲を非常に素晴らしいアレンジと演奏で聞かせてくれる「スモーキン・プレリュード」と「ダンシング・ゴールド」の二枚のアルバムは僕のとっておきです。特に前者。これ持ってるのが自慢だったりします。

まだ「週刊FM」や「FMfan」といったFM雑誌が全盛だった頃に,そのレビュー記事だけを読んでデビュー作の「スモーキン・プレリュード」を買ったのですが,これがもう大当たり。オレってなんて素晴らしい勘してるんだあ,とちょっと本気でうれしかったものです。

歴史的名盤と言ってもいいんじゃないかと僕などは信じているのですが,なぜこれがCDにならなかったのか不思議。それとも僕が見逃しているだけなのか?

当時,その中の曲がいろんなテレビ番組などで流用されていたので,もし今お聞きになれば「あっ」と思い当たる人もいるかもしれません。じっと聞き込むのもよし,BGMとして聞き流すのもよし,というどちらの魅力もあるのです。

インターネット時代になってたまに彼女の名を検索したりするのですが,やはりCDのリリースというニュースはないみたい。これはメーカーの怠慢だと思いますねえ。きっとロングセラーとして売れ続けると思うのになあ。当分は自家製CDでしのぐしかなさそうです。

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どうも昔話的ネタだとさらさら書けてしまうというのは後ろ向きな感じがして困ったものです。なるべく21世紀の今風の話題を見つけてきます(希望的観測)ので今回は乞うご容赦。