追悼 星新一 |
これはこたえた。昔からのSFファンの一人として天上の神々の一人が消えてしまったような喪失感だ。小松左京や光瀬龍,眉村卓や筒井康隆らとともに輝いていた決して墜ちることのないと信じた巨星が消えたのである。
作品が発表されることはまれになっていたが,それでも星さんが生きて日本SF界に"ある"ということだけでファンたちは大きな安心と心強さを感じていたのだ。彼のファンであろうとなかろうと関係ない。無窮の光を投げかける太陽が消えたようなものだ。日本SFが超新星のごとく光り輝いていた時代を一人の読者として経験してきた僕には,なにか取り返しのつかない大変なことが起きたという感じがする。
いつかは聞かねばならない知らせではあったろう。だが,これはあまりにも重い。死んでいなくなってしまうなんてことは考えても全然ピンとこない,日本SF界の巨人たちは皆そんな存在だと無意識に思っていたのに。
そんな時代になってしまったんだ。これから何度もこういう辛い知らせを聞かねばならないのだろう。知らぬ間にあの幸福な時代からそれほどの時が過ぎてしまっていたのだ。
老いることの恐れはなにも自分に対してだけあるのではない。自分の大切な人が老いるのもまた恐ろしいことなのだと知らされた一日だった。