二兎を追うもの

一兎をも得ず,とはよく言われる言葉。昔の人の言うことにはなかなか含蓄があってあだやおろそかにはできない。膨大なキャリアの上に生み出された箴言にはマーフィーの法則以上の重みがあるのだ。

いきなり何のことだ?と言われそうだが,実はコレクションのフォーマットのことである。永らくLD派で通してきた僕にもDVDの甘い誘惑が心地よく感じられるようになってきた。実際,ソフトのリリース状況からして,もう乗り換えてもいいんじゃないかという1998年秋の今なのである。

コレクターにとってフォーマットの切り替えというのは10年に1度は経験せざるを得ない大イベントなのだが,一般人と違って道楽は金も手間もかかるものという覚悟ができているので「せっかく集めたのに〜」とか「また別の規格かよ〜」というグチはあるものの,内心それほど困るわけではない。

強いて言えば当人の開き直り具合が試される機会である,というところか。

ビデオのVHS対ベータ,ビデオディスクのLD対DVD(昔はVHDなんてのもあった。知ってる?),音楽ならアナログレコード対CDという具合にフォーマットは乱立するものだというのが世の真理である。一般ユーザーはそのたびに「どっちを買えばいいんだ?ひとつに統一できないのかよ〜」と怒るのであるが,我々道楽者にはそのような二者択一の悩みはない。AかBか,ふたつの道しか考えられない一般ユーザーと違って我々コレクターには第3の道が発想できるのである。すなわち

両方とも買えばいいじゃん

という至極単純な回答である。なに?そんなのもったいない?いや,あのねー道楽者には趣味に関して「もったいない」という言葉はないんだ。そりゃあ経済的負担は増すだろうけど,人生の楽しみと比較すれば大した問題ではない。そのためにせっせと働いてもいるのだ。VHSとベータともに持っていればフォーマット戦争なんぞ関係ない。LPレコードにもCDにもメリットはある。両方楽しんでいればアナログだデジタルだと論争するのもアホらしい。

より深くより大きな楽しみに至る当然のライフスタイルではないか。

ちなみにこの世にはビデオの3倍モードなどというものは存在しない。あるのは標準モードのみである。テープ1本に10何話も詰め込んで悦に入っているようでは永久に道楽者の気高い世界とは無縁だ。これがコレクターの覚悟というものである。ん?それじゃテープが増えすぎて困る?テープを収納するために広い部屋に住み替えなさい!それこそが王道へ至る心構えというものである。

二者択一には最初から第3の道が用意されていることが多いのだ。目をふさいでいるのはあなたの中の小市民である。目の前にドアがふたつしかないとき,壁に穴を開けてみっつ目のドアを作ってしまうのが道楽者のへへへ〜なところなんだね。

しかしこれでは何が言いたかったのかわからんな〜〜ごめんなさい。