で,ハリウッド映画予告編100連発を見てみると

まずは前半【感想の最後のカッコ付きの数字は映画本編の制作年です】

国民の創生 サウンド付きでよみがえる,と言ってるところを見るとリバイバル用の予告編だな。出演者18000人とか馬3000頭とか5000の異なる場面などと数字の凄さと賛辞の嵐で押しまくる。1000年生きても忘れない映画……そこまで言う。(1915)
グランド・ホテル ドラマを感じさせる。これも再映時のもののようだが,オーソドックスで予告編らしい作りになっている。う〜ん人生って深そう。(1932)
二都物語 画面の文章で語るタイプの予告編。饒舌なまでにストーリーを語る。シーンはなかなかダイナミックでエキストラ等の物量もありそうだ。(1935)
戦艦バウンティ ヒゲのないこの男は……おやクラーク・ゲーブルではないかあ。海の男が似合うかどうかは見てみないと何とも言えませんなあ。(1935)
アンナ・カレニナ まずはグレタ・ガルボありき,という予告編。相手を務める幸運な男フレデリック・マーチなんて言われてるもんな,相手役。世界を忘れ去った恋人同士のドラマという惹句が時代を感じさせる。(1935)
モダン・タイムス 役者は身体が資本だなあと改めて感じさせる予告編。自在に動く身体と運動神経,体力……身体で表現するという言葉がよくわかる。(1936)
風と共に去りぬ 尻切れじゃなくてちゃんとフルサイズで入れて欲しいなあ。ハリウッドの至宝なんだからそれなりの扱いをしてほしいものだ。映画に注がれた物量と厚みを感じさせる映像だ。(1939)
オズの魔法使 このLDでは全般に画質が悪いが,これは特に退色がひどい。色鮮やかであればオズの国のファンタジーが目も覚める色彩で迫ってきそうだ。ジュディ・ガーランドはやはり才能あるなと感じさせる予告編。(1939)
レベッカ これがまた臆面もなく絶賛の嵐を詰め込んだ予告編だ。国民投票でもう一度見たい映画のナンバー1だそうな。国民投票だってえ?でも映画本編は確かに面白かった。(1940)
哀愁 原題がワーテルロー・ブリッジだなんて知らなかったなあ。螢の光で始まり白鳥の湖で終わる予告編だ。(1940)
怒りの葡萄 予告編というより制作ニュースだ。変なところで終わるし。映画本編のシーンみたいだなと思った出だしは原作を買い求める人々というシチュエーションで作られた劇中劇(予告編中劇?)だった。(1940)
カサブランカ こういうのはもっとよい画質で見せてほしかったな。イングリッド・バーグマン,最高に美しい。このキスが最後のキスになるかもしれない,というのは字幕の惹句。(1942)
ガス燈 これもバーグマン。緊迫感をあおる音楽,きつい表情,リメイクすればサイコサスペンスになってしまいそうだ。男の汚れた欲望を暴く物語だそうな。(1944)
底抜け右向け!左 プログラム・ピクチュアらしい予告編。冒頭,陸海空全軍から「あんなやつはいらん」と言われる主人公。さぞやおかしなドタバタなんだろうなと予感させる。(1950)
フィラデルフィア物語 あっ,ネオンサインを模した字幕のデザインがセンスいいぞ。イラストから実写に変わるキャストの紹介もいいなあ。面白そうだなあ,見てみたいなあと思わせる傑作予告編だ。(1944)
錨を上げて ハリウッドの余裕と華やかさを感じさせる。ジーン・ケリーとアニメーションのジェリー(トムとジェリーのジェリーだよ)が競演しているカットもある。ミュージカルだよもちろん。(1945)
ギルダ ううむリタ・ヘイワース,さすがにセクシーではないか。本編を知らないので何とも言えないが,ドラマがだいぶ現代的になってきている気がする。(1946)
我等が生涯の最良の年 ドラマチックな映画だったはずだが意外と淡々とした予告編だ。忘れられない名場面を紹介しよう,といって緊迫したシーンを見せてくれる。(1946)
汚名 ヒッチコック監督作品。イングリッド・バーグマンはやはり美しいが,この監督の女性に対する好みというのは実にはっきりしている。ノーブルな美貌の女性が好きなのね。(1946)
白昼の決闘 おお,西部劇だ,カラーだ,なんか急にデラックスになった感じだ。グレゴリー・ペックのハンサム顔を見てようやく自分の知っている映画の世界に近づいてきた気がする。(1946)
黄金 いかにも昔の活劇という予告編。うす汚れた男たちばかりなので華がない。でもそういう作品なんだからしようがないか。(1948)
私を野球につれてって こんなタイトルだが,やっぱりエスター・ウィリアムスは泳いでいる。フィルムがボロボロでせっかくの華やかさが台無しだ。楽しそうなのに。ジーン・ケリーはいつもパワフルな踊りで気持ちいい。(1949)
アニーよ銃をとれ 未見の人には想像しがたいだろうが,ミュージカル西部劇なんだよね,これ。こいつも退色がひどく昔のビデオからのダビングみたいな画質だ。有名な作品だけにたいせつにしてほしいものだ。(1950)
欲望という名の電車 マーロン・ブランドが若い!考えたら50年近く前の映画だ。そんな昔からやってたのかこいつ,というのが正直な感想。ドラマは明らかに現代に近づいている。(1951)
地上最大のショウ タイトルがすべてを物語る,とナレーションも言っている。まさに豪華絢爛たるドラマ。大きなサーカスが舞台なので映像も並ではない。ぜいたくな娯楽としての映画を感じさせる予告編だ。(1952)
雨に唄えば 黄金時代の雰囲気をまとった予告編だ。画質がよければなあ。本編はムチャクチャ面白い映画。みんなよく動く。シド・チャリッシが鼻からタバコの煙をプハーとやるうへえなカットもある。美人なのに〜。(1952)
真昼の決闘(ハイ・ヌーン) これは見たい!と思わせる予告編だ。本編でもそうだが,この予告編でも時計(と振り子)を効果的に使って緊迫感を出している。盛り上がるねえ。ゲーリー・クーパーとグレース・ケリー,超豪華競演である。(1952)
地上より永遠に 原作が有名文学作品の場合はその本自体を予告編で映す,というやり方はいくつも見たがこれもそうだ。しかし予告編の作りは少しずつ現代に近づいている。(1953)
百万長者と結婚する方法 最初に延々と自画自賛が続いてマリリン・モンローはじめ華やかな女優陣登場。豊かで幸せなアメリカ社会そのものを謳歌する雰囲気である。シネスコでニューヨークとなるとやはり雰囲気が全然違う。(1953)
帰らざる河 これもモンロー。多少前後するがこの予告編集,古い順に見ているので彼女が出るとやはり時代がひとつ新しくなった気がする。あの有名な歌が「ここまで来たか」と感じさせるのだ。(1953)
終着駅 ナレーションによるストーリー紹介ではなく,新聞記事の見出しでそれをやるのが斬新だ。名予告編といっていいだろう。間にはさまれるカットもよく選び抜いた感じだ。作品ポスターでしめるラストもセンスがいい。(1953)
シェーン うむ,これが西部劇史上最高の人気作の予告編か。遠くの山々と雲と青い空がいつも背景にあった印象があるが,予告編でもそうである。ガンファイトにはやはり迫力がある。(1953)
ローマの休日 この年にはずいぶん名のある作品が作られているが,やはりこれだろう。でも予告編は再映時のものだ。むろんヘプバーンはすばらしいが,このときのグレゴリー・ペックはすんごい男前である。(1953)
海底二万哩 この予告編を見るとディズニーがSFXの分野でいかにパイオニアであったかがよくわかる。ノーチラス号はこのデザインが本家本元だよなあ。カーク・ダグラスが歌ってるよおお。(1954)
波止場 決して見逃せぬ感動の1本と言うけど,どの映画も同じことを言うのだ。ちょっと個性がないなあ。作りも平均的である。(1954)
ダイヤルMを回せ! ヒッチコック監督の作品だけあって複雑に絡み合った陰謀のにおいがする。ダイヤルと共に交換機が動く部分の緊張感がいいね。監督お気に入りのグレース・ケリーだ。(1954)
グレン・ミラー物語 ジェームズ・スチュアートだ。アメリカの良心である。予告編の作りとしては割と平凡だ。いやこの平凡さこそが偉大なる安定なのか。(1954)
裏窓 今度はそのスチュアートとグレース・ケリーである。ヒッチ先生予告編にも登場だ。イントロだけでつい引き込まれてしまう。うまいぞ〜。見たためにすべては始まった,のである。(1954)
エデンの東 ついにジェームス・ディーン登場である。ここまでくると見たことあるシーンがそこここに。ジーンズのCMと同じだなどと言ってはいかんのよ。(1955)
恋はすばやく ジーナ・ロロブリジーダは目が劇画の美女風でキレのよい美貌だ。予告編は楽しそうな雰囲気が伝わってくる。彼女と神父さんの会話だけでこの映画見たくなってくるぞ。(1956)
やさしく愛して ついに登場エルヴィス・プレスリーって私が言うのではない,予告編が言ってるのだ。ラブ・ミー・テンダー,シネスコだ。しかしモノクロだったっけ?(1956)
上流社会 あ,これは新機軸だ。エド・サリバンショーのエドがピング・クロスビーに会って新作映画の話を聞くというしかけだ。間に映画本編のシーンが挿入される。それがうまくシンクロしているのである。面白い。(1956)
80日間世界一周 デートに最適,みんなで行こうと言ってくれる映画だ。この予告編を見て兼高かおる女史を思い出すあなたは相当古いかも。予告編のロゴがかなり今風のデザインになってきている。(1956)
王様と私 名場面をつないだごく普通の予告編だ。画質が悪いのでせっかくの豪華さがいまひとつ。吹き替えはまたしてもマーニ・ニクソン。正に陰の大スターだ。(1956)
昼下がりの情事 オードリーは娘役って年ではないはずだができてしまうのだ。可愛い。でもアリアーヌ巻きはちょっと作り過ぎでは?本編はホントにいい映画だった。(1957)
監獄ロック プレスリーってカラー時代の人と思っていたが,この作品もモノクロだ。でも予告編から聞こえてくる曲はどれも聞き覚えがある。(1957)
くたばれ!ヤンキース ミュージカルなんだよ〜これも。アメリカの娯楽作品の典型といった感じの予告編だ。元は舞台。主演女優はブロードウェイの赤毛の恋人,だそうだ。(1958)
月夜の出来事 お,この予告編,出だしのロゴが落書きだ。ナレーションも面白い。超べっぴんだが実務能力ゼロのメイドがあなたの元にやってくるという映画。楽しそうだわ〜。(1958)
南太平洋 名曲の連打で迫る予告編。あの国の映画界はほんっっっとうにお金があっていいなあと思わせる。ちゃちいところがないのである。(1958)
北北西に進路を取れ いきなりのMGMロゴが見慣れないタイプである。ヒッチ先生の名前は予告編でもだんだん大きく出てくるようになった。最後の文字の変わり方も独特だ。見てみたくなるように作られている。(1959)

そして後半だ!

渚にて 前半は世界各地でのプレミアの模様で,TOKYOではロイヤルファミリーご観覧の様子がちらり。後半は本来の予告編。破滅SFなのだが,風格を感じさせる。音楽も緊迫感と不安感をたたえている。(1959)
サイコ ヒッチコック監督自ら案内役を務める予告編。さすがに面白い。悲鳴にロゴをかぶせテレビバージョンとは違うよ,とノーカット版であることを明言してくれる。もしや再映時のものか?(1960)
尼僧物語 原作本を映し出す予告編はこれでいくつめだろう。うまくカットを選んであるのでどんな話か見当がつく。ヘプバーンはホントにゲジゲジ眉だなあ,と感じる予告編。(1959)
スパルタカス 有名監督はみな一度は史劇を撮るのか。これはキューブリックである。さすがにすごい物量である。人物紹介をきっちりやってくれる予告編だ。(1960)
片目のジャック これはすごい。ものすごく斬新だ。個性的ということではこの100本の中でも最高だろう。予告編だけで完全に独立した映像作品になっている。本編は未見だが予告編の方がインパクトあるのでは?(1960)
ブルー・ハワイ わーいカラーのプレスリーだ。でも途中で切らんでほしいな。ハワイの観光ミュージカルであることを予告編も否定していない。(1961)
ニュールンベルグ裁判 人物紹介がインパクト強烈で重い内容を予感させる作りだ。トレンドとして流行らない限り日本の若者は見てくれないであろうな,という作品。(1961)
裏街 不倫はいかんよなあ,でもこのテーマは際限もなく映画化されるのだ。悲恋の主人公としてではなく愚か者として徹底的に糾弾するような映画を誰も作らないのは人間の弱さである。(1961)
さよならをもう一度 少し太めのバーグマンには以前の知的なシャープさは感じられない。サガン原作だが,その雰囲気は少なくとも予告編には薄い気がする。(1961)
ウエストサイド物語 とうとうウエストサイドの時代まできたなあ。絶賛の嵐を紹介する手法は予告編としては月並みだが,プレミア風景などが入っているところを見ると再映時もしくは公開後に作られた予告編か。曲はさすがによいねえ。(1961)
荒馬と女 モンローとゲーブルの競演。ゲーブルはもっと過去の人というイメージがあった。モンローはいつもとちょっと雰囲気が違う。タイトルロゴの出方も独特で,モンローを前面に出した作りではないことが伝わってくる。(1961)
エル・シド ハリウッドの大作史劇はさすがに物量がすごい。予告編の作りは月並みで他の史劇との差別化はあまり見えない。誰が作ってもこうなるという感じ。(1961)
ティファニーで朝食を カポーティの世界とは別物だがこれはこれでよいのか。予告編としては目新しさがなく,数ある映画の中の名もない1本という感じ。見てみたいなと思わせるにはちょっと力が足りないかな。(1961)
アラビアのロレンス 出だしの砂漠の絵がいいね。さすがにこの映画は凄いと思わせるのは,予告編に使われているカットがどれも月並みではないところだ。物量も凄いが,それを使いきる制作も見事と感じる予告編。(1962)
クレオパトラ これも容赦なく物量を見せつけるスペクタクルな予告編。史劇は強かったのだね。クレオパトラ=エリザベス・テーラーというのはベストなキャスティングだ。メイクも凄いがこの人以外には考えられない。(1963)
マクリントック 古典的な西部劇とは違うぞ〜ということが伝わってくる予告編。コメディなのか?本編を見てないのでわからないが,これ見たいと思わせることにはしっかり成功している。(1962)
シャレード これはしゃれてる。出だしもオリジナリティがあるし,人をくったナレーションもいい。予告編全体のコンセプトがきちんとしていて出色の出来。ヘプバーンはこういう作品の方が絶対に輝いている。(1963)
大脱走 ナレーションがちょっとボソボソとした感じであの快作の予告編にしてはキレがいまひとつかな。よいフィルムで見れば別かもしれない。タイトルロゴは完全に現代のそれだ。(1963)
底抜け大学教授 元祖ナッティ・プロフェッサーだ。序盤も終盤もバラしていいけど中盤だけはしゃべらないでください,と予告編で訴えるところが変わっている。(1963)
マンハッタン物語 Love with the Proper Strangerという原題がこのタイトルに化けるわけだ。恋に揺れるマックィーンの頼りなさがなんとなくおかしい。予告編としては普通の作り。(1963)
007/ゴールドフィンガー おお,これだこれだ,一挙に現代アクション映画の予告編に跳んだぞ。効果音バリバリ,おなじみのロゴ,派手な爆発とカーチェイス。007はこうでなくては。(1964)
グレートレース 史劇以外では珍しく物量を前面に出した予告編だ。デラックスな娯楽大作の雰囲気がよく伝わってくる。ナタリー・ウッドは少なくとも予告編においてはシリアスな映画より魅力的に思える。(1965)
偉大な生涯の物語 キリストの伝記だ。イメージに合うかどうかで客の反応も変わる。ベン・ハーのような間接的な描き方とどちらが効果的かな。その意味で予告編の責任は重大である。(1965)
シェナンドー河 予告編としては普通の作りなんだが,これは見てみたいなという気にさせる何かを放っている。つかみが上手いのか?キャサリン・ロス若い〜。(1965)
ビバ!マリア こりゃー傑作!予告編はこうでなくては。導入部からうまいし,デザインコンセプトが実にはっきりしている。個性的で他の予告編とは一線を画している。最後にENGLISH SPOKEN HERE!と出るのは何のことかわかるかな。(1965)
雨のニューオーリンズ 複雑な愛憎の迷路って感じだが,どういう映画なのかは予告編ではいまひとつわからない。またもナタリー・ウッドだ。当時の人気ぶりがよくわかる。(1966)
動く標的 これも途中で切れてる。私立探偵の話だが,この予告編ではどんなストーリーなのかはさっぱりわからない。焦点がひとつもない感じだ。(1966)
昼顔 さすがに若いころのカトリーヌ・ドヌーブのヌードをいきなり持ってこられるとインパクトがある。全体に,予告編といえども表現のテクニックを考えているなという作りだ。(1966)
ロシュフォールの恋人たち これもドヌーブだがジーン・ケリーと競演のミュージカルなので間違っても悲壮な作品ではない。フランス語でしゃべるジーン・ケリーだぜ。タイトルなどロゴ類もきちんとデザインされた予告編だ。(1966)
招かれざる客 アニメーションを使ったイントロがなかなかしゃれてる予告編だ。画面の切り替えもその手法を使っていてデザインが統一されている。見たいと思わせる出来だと思う。(1967)
裸足で散歩 ジェーン・フォンダがチャーミング。ロマンチック・コメディの予告編でこの作りなら客も来るだろう。楽しそうな映画だなという感じを抱かせてくれる。(1967)
暗くなるまで待って これはよくできている。スリラーの効果が見事にあらわれた予告編だ。ロゴの使い方と効果音がうまいし,デザインもきまっている。ヘプバーン最後の主演作にふさわしく客を呼べる作りである。(1967)
007は二度死ぬ 日本が舞台の007,予告編だけでも変なところがたくさんあるが笑って許してあげよう。派手な爆発,独特のロゴ,荒唐無稽なストーリー,娯楽作品の予告編はやはりこうだな。(1967)
華麗なる賭け マックィーンとフェイ・ダナウェイのキスシーンを回り込みで延々と見せながらキレのよいテンポで本編のテイストを紹介する。実にシャープな予告編だ。マックィーンにふさわしい作りである。(1968)
明日に向かって撃て あの有名なテーマソングをメインに絡めたうまい予告編だ。テンポもいいし,使われているカットも効果的だ。完成度が高い。(1969)
小さな巨人 これも完成度が高い。予告編制作の意識が変わったのだろうか。演出もいいし,カット割りも冴えてる。特にラストの画面15分割とその後にタイトルロゴに持っていくところが実に上手い。(1969)
パットン大戦車軍団 パットンが星条旗を前に高らかに演説する導入部。強引な彼らしい映画であることを予感させる。物量はさすがだ。史劇から戦争映画へということか。(1970)
キャッチ22 タイプライターのように打ち出される文字から始まる予告編は完全に前時代のスタイルを払拭している。ナレーションもなく人物のスチルだけでインパクトを狙っているのか。(1971)
フレンチ・コネクション 退色してほとんどモノクロに近いのは残念だ。スリリングな作品のはずだが予告編がボケているだけで印象も鈍くなってしまう。予告編の使命は重大なのだ。(1971)
100万ドルの決闘 西部劇と思って見ているとオートバイなんかが出てきて?となるかもしれない。予告編としてはあまり個性がなく,古い映画しか思い浮かばない。(1971)
バニシング・ポイント カーチェイスのスピード感はなかなか迫力があるが,それだけなので少し一本調子だ。音楽は古くささを感じる。ポップス調は古びるのが早い。(1971)
おもいでの夏 このテーマ曲だけはタイトルと同じく思い出に残る名曲だ。予告編は感傷的だが,作りとしては月並みで集客力はいまひとつだろうな。(1971)
ゴッドファーザー ほとんど全編をスチルと音楽の緩急だけで構成した予告編。それでいてドラマを感じさせる。その徹底した演出が効果的で,これは劇場に行かなくてはと観客に決意させる出来だ。(1972)
パピヨン 見ているうちに引き込まれてしまう予告編だ。マックィーンの正に入魂の演技がすごい迫力で,見ているこちらは「どうなるんだろう」とドキドキしてしまう。(1973)
エクソシスト 泣く,叫ぶ,わめく,破裂する……アメリカン・ホラーを変えた作品らしく予告編もみな顔がひきつった印象だ。特撮シーンはまだほとんど見せてくれない。(1973)
セルピコ アル・パチーノ,はまり役だというのがこの予告編だけで伝わってくる。救いのない話かもしれんなあという予感も同時に感じさせる。(1973)
ダーティー・ハリー2 アクションものはやはり役者の動きが勝負だ。イーストウッドはこの予告編ではまだ軽々と身体を動かしている。スピード感もある。でも音楽は古びていると感じてしまった。(1973)
大地震 パニック映画のはしり。見せ場は地震とそれによる災害の特撮シーンだが,なかなか迫力がある。チャールトン・ヘストンは大味な映画だとなぜか似合う。(1974)
タワーリング・インフェルノ これもパニック映画だが,迫力はこちらの方が上だ。予告編もシーンの切り替えが上手く,重大事態の雰囲気がよく出ている。(1974)
ジョーズ 100本目でついにスピルバーグにたどり着いた。災害パニックとは別種の恐ろしさが伝わってくる予告編だ。有名な最初の犠牲者のシーンはやはりこわい。海に行く前にご覧ください,と予告編は忠告してくれる。(1975)

もちろんこれらはこのLDに収められた画質・音質での「予告編」についての感想です。本編に対するそれとは全く次元の違うお遊びであることをご承知ください。また予告編はバージョン違いがいくつもあるので別の版ではずっといいのがあるかもしれません。

それにしてもさすがにハリウッドの歴史は重く深い。しかしタイトルは有名でも見てない作品が多く,映画好きを名乗るにはまだまだ基礎が足りんことを痛感。