その5 テーマソング・コレクター遙かなる道

大物続々登場,すごいぞエイケン

TVアニメのテーマソングというのは玉石混淆の世界で,うれしくて感涙にむせぶような名曲もあれば,箸にも棒にもかからない曲まで様々だ。まとめて聞いていると玉3石7くらいじゃなかろうかという気がするが,これはまあ個人のTVアニメ経験値にもよるだろう。

どうしても子供のころの印象に左右されるコレクションなので,当時元気のよかったプロダクションの作品には感慨もひとしおだ。

「エイケンTVアニメ主題歌大全集」全1巻は東映TVアニメのそれと同じシリーズとして発売されたLDだが,実にうれしいコレクションだった。意外なほど人気作品がそろっており,テーマソングとしても耳になじんだ名曲中の名曲がごろごろしているのである。この充実度はあっぱれだ。エイケンってこんなに有名どころをそろえていたんだなあと驚いてしまった。

何しろいきなり「鉄人28号」「エイトマン」「スーパージェッター」と続くのだ。これはもう同時代の虫プロや東映動画にも引けを取らない超強力打線ではないか。いずれもリアルタイムで見た世代には生涯忘れられない曲である。

不幸な事件で一時期入手できなかった「エイトマン」のオリジナルテーマも今ではこうして手元に置くことができる。克美しげるの爽快な歌いっぷりがすこぶる快感。テーマソングのたぐいは断然TVバージョンに限るのだが,この「エイトマン」はレコードバージョンの出来もすばらしく,聴いていると血がたぎる。ぜひCDでフルコーラス手元にとどめたい傑作だ。

低音で聴かせます,エレキで聴かせます

以前から欲しいと思っていたオープニングが続々登場するこのLD,この手のコレクターにはたまらない逸品だろう。「宇宙少年ソラン」「遊星少年パピイ」「冒険ガボテン島」「遊星仮面」……どれもテーマソングが異様に耳にこびりついているのは当時TVにかじりついていたせいだろうか。

「遊星仮面」なんてマイナーな作品だけど,けっこう悲しいお話だったんだよ。オープニングの音楽に合わせてザパーンと波が砕け,「誰だ!」「人呼んで遊星仮面!」とくるイントロが忘れがたい。

「忍風カムイ外伝」は主人公のクールな美形ぶりと,とても子供向けとは思えぬ演出(特に終盤の展開)で人気のあった作品だが,なんといっても主題歌がすばらしい。今は亡き水原弘の歌う「しのびのテーマ」は絶品だ。曲の終わりになって「忍風カムイ外伝」とタイトルが出てくる演出もいい。しかもオープニングはこの曲のインストに城達也のカッコいいナレーションがかぶさるのである。しびれる〜。

もうひとつ「サスケ」,これもオープニングは印象深い。今見ると驚くほど白土三平のキャラクターに忠実に描いているのに感心する。時代を考えるとこのオープニングの作画はたいしたもんだと思う。主題歌の方はオンエア当時はちょっとへんなのと思っていたが,すらすらと歌えてしまうところをみるとしっかり刷り込まれていたようである。

さて,このLDで更にうれしかったのが「スカイヤーズ5」が収録されていたこと。いやー懐かしいなんてもんじやないよ。僕はこのテーマソングがいまだに大好きなのだ。数年前にCMで使われていたので,聴けば「あっ,あれか」と思い当たる人もいるかもしれない。今となっては懐かしのエレキギターサウンドっていう時代色が濃厚なんだが,すぎやまこういち作曲,歌うはハニー・ナイツ,実に軽快でノリのいい名曲である。出かける前に聴くと意気揚々と出発できるというそんな曲だ。

テーマソング・コレクターの明日

まだまだ有名プロダクションでこの手のコレクション・ビデオを出していないところがいくつもある。個人的にはサンライズにぜひともリリースしてもらいたいのだが,さてどうなることか。ロボットアニメの牙城はテーマソングも名曲ぞろい,実現を期待したいところだ。

ところで,長寿番組になると途中で何度もテーマソングが交替したりする。テーマソング・コレクターとしては当然それらをも入手したい。たとえば「うる星やつら」など主題歌がいくつあるかちょっと思い出せないくらいだが,これはいつの日かぜひオープニング集を欲しいところだ。

CDでは実現しているのだが,映像付きはいまだにない。「うる星やつら」については実は「ラブ・ミー・モア」「チャンス・オン・ラブ」という2枚のLDでそれに近いものが出ているのだが,これは収録曲はともかく映像がオリジナルのオープニング&エンディングではないところが物足りない。DVD時代になったことだし,いずれは実現してほしいものだ。

同様にウルトラシリーズでも「ウルトラマンシリーズ主題歌全集」というLDが昔パイオニアから出ているのだが,これもバックの映像が完全なオリジナルのオープニング&エンディングではない。ウルトラシリーズのオープニングは静止画同然の画面にクレジットのみというパターンが多いので,動きのあるシーンをかぶせたい気持ちはわかるのだが,やはりいつかは完全なオープニング集を望みたい。

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テーマソング・コレクターといっても僕の場合,曲だけでは満足できないので厳密にはオープニング・コレクターと言った方がいいのかもしれない。コレクションとしてはなかなか楽しいジャンルだが,今まで取り上げたのはみな過去のもの,本質的に昔話のタネである。

今ではテーマソングのスタイルもずいぶん違ってきた。テーマソングというよりイメージソングであって,たとえヒットしても10年後に聴けばどの番組のテーマソングであったか判別しがたい,なんてことになるかもしれない。オープニングの映像とセットで刻みつけられた僕たちの思い出とはちょっと違う。そんな時代のテーマソング・コレクターをめざす人にはまた別の道が待っているだろう。健闘を祈る。