その4 王道対決

これが王道だ!

さて,東映動画である。劇場作品はひとまずおくとして,東映のTVアニメといったらこれはやはり商業アニメの一大派閥?だろう。これ抜きとなると子供時代の楽しい記憶がごっそり欠落してしまう。マニアックな系譜はどこか他のプロダクションに任せて,自分らは大衆路線の王道を行くのだ〜という感じか。

東映のTVアニメというのはバラエティに富んでいるが,やはり徹底した大衆路線というのが特徴ではないだろうか?とんがったところはないが,全視聴者御用達というカラーだ。作品ごとにマニアックなファンがいて細かくセクト化している現在と違い,アニメファンというひと言で話が通じた時代の,いわば共通言語みたいな作品群が並んでいる。

だからというわけではないが,テーマソングがもっともアニメソングらしいのが東映作品ではないだろうか。

LDでは「東映TVアニメ主題歌大全集」全3巻が燦然と輝いている。いやもうこれはうれしいリリースであった。個人にはいかんともしがたいコンプリートなコレクションがあっさり実現してしまったのだから,うれしいやら悔しいやら複雑な気持ちにさえなったものだ。

定番オンパレード

僕はTVアニメ勃興期からの視聴者なので,このコレクションの中ではやはり第1巻あたりがむしょうに懐かしい。昔話ばかりしていても仕方がないが,小さいころの記憶に直結している作品には問答無用の吸引力を感じてしまう。

「少年忍者 風のフジ丸」「魔法使いサリー」「サイボーグ009(初代)」「レインボー戦隊ロビン」と並べられると歌い出さずにはいられない。このへんはインプリンティングの成果というかほとんど条件反射に近いものだろう。

立て続けにオープニングを見ていると当時の東映TVアニメは意外なくらい動きがいい。「風のフジ丸」などフルアニメみたいな,しかもケレン味たっぷりの動きが実に快感で,風車手裏剣の猛烈な勢いと破壊力,猿飛の術の軽快な動き,打ち合う斧の響きなどが懐かしの名曲をバックに展開すると「おうおうおうおう」と子供時代に逆戻りである。

むろん,連綿と続く黄金の大衆路線である東映TVアニメ,うれしいのはそんな太古の作品ばかりではない。

「デビルマン」「バビル2世」「キューティーハニー」「魔女っ子メグちゃん」「タイガーマスク」「宇宙海賊キャプテンハーロック」「銀河鉄道999」「聖闘士星矢」「北斗の拳」……こういったタイトルが続けざまに流れてみなさい。喉から出血しても歌い続けずにはおれんぞ。

個人的には前川陽子さんのパワフルな歌声が気持ちいい。

同じオープニングでも微妙に違うバージョンまで収録されているので,地方局ごとにそういったフォーマットの違いがあったんだなということがわかる。自分が見ていたのはどれだったかな。

もう一方の王道は

東映TVアニメが大衆路線の王道なら,もう一方の王道路線を歩むのが東京ムービーではないだろうか。東京ムービー新社といった方がなじみがあるけど,とにかくバラエティに富んだ作品群は子供時代の経験値に欠かせぬ存在だった。中には泥臭いタイトルもあるが,いくぶん東映動画より垢抜けたところをカラーとして感じる。まあこのへんはかなり個人的な感触だが。

こちらもLDでまことに立派なコレクションが出ている。「東京ムービーアニメ主題歌大全集」でなんと全5巻だ。先の東映作品のシリーズと並んでLD時代の喜ばしい遺産のひとつである。

「巨人の星」や「アタックNo.1」,藤子不二雄作品群,「ルパンIII世」に「天才バカボン」に「エースをねらえ!」,そして「家なき子」に「宝島」に「ベルサイユのばら」,さらには「スペースコプラ」に「キャッツアイ」とくればこれはやはりTVアニメ界の一大山脈であろう。

こういった作品群のテーマソングを放映当時のオープニングで一挙に見る(聴く)というのは想像以上にテンションが上がる経験だ。カラオケで歌う時の盛り上がりとは違う。血が騒ぐ高揚と懐かしさがミックスされた格別の快感である。オーバーではないぞ。

やはり岡ひろみでしょう

この中では「エースをねらえ!」の最初のシリーズが忘れがたい。オープニングもエンディングもいまだに大好きである。曲がすばらしい。絵がいい。キャラクターデザインが当時の他の作品群より1000光年くらい先を行ってた。大杉久美子のあの歌は聴くたびに当時の気分がよみがえってくる名曲だ。CDでもいいんだけど,やはりTVサイズのものをオープニングの画面とともに永久保存しなくてはね。

「エースをねらえ!」は実に根強い人気があって何度もアニメ化されている。僕も原作は大好きだ。このコレクションにはそのいずれもが収録されているが,やはり第1作のオープニングとエンディングがいいな。

この第1作のエンディングは後のCDなどに収録されたものとはアレンジが違う。サビの部分のメロディ自体が違うのだ。こういうのは当時聴いていたオリジナルこそが尊いのであって,CDで違うバージョンを聴かされてもあまりうれしくない。そういう意味でこのTVバージョンはなかなかに希少でうれしいものなのだ。

また,このコレクションには劇場版「エースをねらえ!」のテーマソングも収録されている。原作をめちゃくちゃにしたとして原作ファンにはひどいたたかれようだったが,今となってはそれなりに許せる気がする。高坂真琴さんが岡ひろみをやっていればそれでよしと。うーん,時の流れは偉大だなあ。

この東京ムービー新社のオープニング集LDは最近のリリースなので今でも(今は2000年5月)収集可能だろう。情熱と財力とノスタルジーを秤にかけて考えよう。

というわけでたぶん次回で完結……ホントか?