その3 実写も忘れちゃいけない

スーパーマリオネーションだい!

テーマソング・コレクションの楽しみはアニメに限ったことではない。実写ドラマや特撮系にも子供心に深く刻みつけられたものは少なくないはず。しかし固定ファンの多いアニメと違ってこちらはジャンルの幅が広く,集めていくのもなかなかたいへんだ。

まずは人気の高い「サンダーバード」に代表されるITC作品群だ。これは大ファンという人も多かろう。僕も子供のころからずいぶん楽しませてもらった。同種のテレビシリーズ(の新作)がほとんどオンエアされない今の子供たちよりずっと幸運だったかもしれない。

LDでバンダイから「サンダーバード・ヒストリー」というITC作品群のオープニング&エンディング集が出ているが,ジャケットにもリリース時期が記載されていないのでいつごろ出たものかわからない。が,これはもうかつてのファンたちには感涙もので,中古屋で発見したら何をおいてもレジに飛んでいくべき超必携盤である。

最古の「スーパーカー」からカルトな「プリズナーNo.6」まで,欲しかった名曲,名オープニングのすべてが収録されている。しかも!サイド1には本国オリジナル版,サイド2には日本語版がそれぞれ収められ,かつCAV仕様という徹底ぶり。いやーすんばらしい〜。

ノーブルなセンスに拍手

ITCの作品群は,栄光の「サンダーバード」のみならずとにかくそのセンスに脱帽する。全世代が楽しめる作りになっていて,ハイブロウで粋な演出の手並みに感心してしまうのだ。

たとえば「スティングレイ」(海底大戦争)を見てみる。オープニングはオリジナル版,日本語版ともに印象深くわくわくするが,注目はエンディングだ。

マリーナのテーマとでも呼ぶべきロマンチックな歌に合わせてクレジットが流れるのだが,その映像がとても子供番組とは思えぬしゃれた作りなのだ。人形たちを本物の俳優さんのごとく粋なアングルでとらえ,主人公たちの日常の微妙なニュアンス(実はちょっと三角関係っぽかったりする)まで伝わってくるのである。大人になって再見してこそ初めてわかるセンスだ。おお〜いいねいいね,とうれしくなってしまうぞ。

最古の「スーパーカー」はおぼろげにしか覚えていないが,次の「宇宙船XL-5」はそのロケット発射シーンが実に印象深く,けっこう記憶に残っている。カタパルト式の発射は実に絵になるのである。更に「スティングレイ」は前述のとおりだし「サンダーバード」に至ってはひたすらうれしいのみだ。

「サンダーバード」については日本語版主題歌の印象が強い人もいるかもしれないが,あれは民放での再放送時につけられたもの。初めてNHKでオンエアされたときには本国版のムチャクチャ格好いいオープニングが使われていて僕などはそちらの世代だ。新番組予告でこの作品の映像を見たときは衝撃だったなあ。

心の中ではすべてヒット曲

次作の「キャプテン・スカーレット」がまたまた好みで,戦闘機隊のメンバー(エンゼル)がすべて美女という設定などずいぶん時代を先取りしていた。放送のフォーマットがそれぞれの局で違っていたらしく,当時僕が住んでいたところではオープニングは日本語版だったのだが,たまたま修学旅行で訪れた先では本国版の曲がかかっていた。僕が本国版の曲を入手できたのは数十年後,LD時代になってからである。

一連のスーパーマリオネーション作品群の音楽を担当していたバリー・グレイの曲はドラマチックでカッコよく,しかも壮麗でスケール感もある。印象強烈で今にいたるも忘れることができない。ワンダフルの一語に尽きる。この人の業績はもっともっと評価されるべきだ。

さて,ITCといえば後期にはスーパーマリオネーションからライブアクションの作品に形態が変わってくる。こちらの方でも「謎の円盤UFO」とか「プリズナーNo.6」といったオープニングを見ていると「はあ〜,いいわ〜」の境地にひたることができる。

前にも書いたが,これは自分の大好きなヒット曲を立て続けに聞いて(見て)いる心境で,このプロダクションの作品がいかにすばらしい個性に満ちていたかを思い知る。惜しむらくは時代が早すぎてAV機器全盛時代以前のものばかりということか。今だったら絶対サントラCDが出る作品ばかりのはずだ。僕はこの「UFO」や「プリズナー」の曲が欲しくて欲しくて仕方がなかったのである。

ところ変わって

しかし子供のころにたくさん見ていたとなるとやはり国産のいろんなテレビ番組。東映から出ている「東映TV特撮主題歌大全集」全3巻や「東映TVドラマ主題歌大全集」全2巻といったソフトは,バラエティ豊かに往年の記憶をくすぐってくれる強力タイトルだ。実は僕はこういった企画ものに弱くてついつい買ってしまう。しょーがないな〜。

これらのソフトは特撮とかドラマとかうたってはあるけど,とにかく様々なジャンルの人気番組(そうではなかったものも)のテーマソングをごっそりコレクションできる。曲だけではなく映像があるというところになお一段の価値があるわけで,特に30代後半以上の人には感涙ものだろう。

しばし呆然と見入ってしまう自分を発見するはずだ。

収録作は東映系の作品ばかりなので,見ていると共通したタッチのようなものが何となく伝わってくる。そうかあ,これが東映の味か〜という感じで「キイハンター」とか「プレイガール」とか「悪魔くん」とか「柔道一直線」とか「ジャイアント・ロボ」とか「忍者ハットリくん」とか「Gメン75」とか「仮面ライダー」とか戦隊シリーズとか……何となくカラーみたいなものが感じられるのでは?

個人的には昔から切望していた「スパイキャッチャーJ3」や「ゼロ戦黒雲隊」のオープニングが入手できたのがなによりうれしかった。これでやっと永年の渇望にケリがついたという……大げさか。

しかしテレビ番組となると思い出深い作品は数限りなくある。東映系だけでこれだけ充実しているのだから,他のプロダクションのものもぜひとも企画してほしいものだ。

というところで以下次号。はあ〜日暮れて道遠しの心境。