その2 タツノコ vs 日本アニメーションだ

モダンだ,あまりにもモダンだ

さて,その名が与えるイメージ以上に作風にバラツキのある虫プロに対して,常にひとめで判別できるのがタツノコプロである。タツノコアニメのオープニング(特にシリアス/アクション系)を立て続けに見ると何かが胸の奥でふつふつとたぎる気がする人も多かろう。僕だってそうだ。

タツノコってけっこう燃えるのである。

taxco/マイカルハミングバードから「タツノコ傑作アニメテーマコレクション」というLDが出ている。TVルネッサンスというシリーズの1枚で,今は中古屋を回らないと見つからないだろうが,これはタツノコファンならずともオールドアニメファンには感涙の1枚である。

通して見ているとはっきり感じるのだが,虫プロ作品よりスマートで垢抜けた作画が印象的だ。最古の作品,モノクロの「宇宙エース」でさえ後のタツノコSFアクションのモダンな絵柄の特徴が色濃く現れているのがはっきりわかる。僕はこの「宇宙エース」が大好きで,永らく映像付きのテーマソングが欲しかったのでこれを買ったときは実にうれしかった。小さいころはシルバーリングにあこがれたものである。

●燃えるぞ,心底燃えるぞ

スマートといえば「マッハGoGoGo」がまた!もうくどいくらいにポーズを決めまくる主人公もよし。マッハ号の恐ろしく時代を先取りした秀逸なデザインもよし,そしてあのテーマソングがまたまたよし。名曲だなあ。

でもって真打ちの「科学忍者隊ガッチャマン」から「新造人間キャシャーン」「破裏拳ポリマー」「宇宙の騎士テッカマン」と続くとおおおおおおお〜とそこらをやみくもに駆け回りたくなるくらい高揚してしまう。とても人には見せられない姿だ。

しかもこれに加えてタツノコにはタイムボカン・シリーズというもう一方のドル箱路線があり,前記のSFアクション系に引き続いて「タイムボカン」や「ヤッターマン」のオープニングなぞ見ているとその充実ぶりに感激してしまう。

変なたとえだが,持ち歌すべてがヒット曲という人気アーティストのライブのようなものだ。一発屋のコンサートでは決して味わえない喜びである。画質や音質はひとまずおいといて,とにかく感激にひたれるLDであることは確かだ。

リアルタイムで見ていた人には中古屋をハシゴするだけの値打ちは必ずあると断言しよう。もちろん見ながら同時に歌っているというのが正しい姿である。

●歴史だ,これこそ歴史だ

プロダクションの個性ということではこちらも際だっている。あの「世界名作劇場」のシリーズを送り出した日本アニメーションの諸作である。

こちらは東映から出ている「日本アニメTV主題歌大全集」全2巻があるが,更に世界名作劇場シリーズに的を絞った「世界名作劇場 The Works of 15th Anniversary」という貴重な1枚がポニー・キャニオンからリリースされている。後者はシリーズ15周年記念の企画ものだが,10年以上前のものなので探し出すのはかなり難しいかもしれない。

世界名作劇場は後年かなりマンネリ化していたような気もするし,全作見ていたわけでもない。それでも歴代の人気作のオープニングを続けて見ていると何とも心地よい満足感がある。特にこの「The Works of 15th Anniversary」は再放送ではまず絶対に見られない第1話の予告編がそれぞれ収録されているのがすばらしい。「フランダースの犬」から「ピーターパンの冒険」まで15作,しかもCAV仕様。まさにコレクターズアイテムであろう。

僕自身はこれぞ隠れた名曲と信じていた「牧場の少女カトリ」のオープニングがうれしいのだが,こうしたコレクションLDには思わぬ発見もある。

というのもこういう企画ものではノンクレジットのオープニング&エンディングが収録されることが多いのだが,これは意外と気が抜けた画になってしまい,あれれ?と思うことがある。画面がクレジットの文字を前提に設計されているせいか,スタッフやキャストなどあるべき文字がないとそこだけ妙に平板でバランスが悪くなるのだ。じゃまなようでいて実は真にオープニングやエンディングを楽しむにはクレジットは必要なのである。

●どん欲に,あくまでどん欲に

前記の東映から出ている2枚,こちらは世界名作劇場も含む日本アニメーションの全作品のオープニング&エンディングを集めた力業のコレクションである。

元々コレクションという行為はどん欲にエスカレートしていくものだが,この2枚を含む東映の「大全集シリーズ」はそうしたユーザーの気持ちを真っ正面から受け止めてくれるパワフルな内容が特徴だ。

番組に人気があればあったで,またなければテコ入れで,それぞれオープニングが途中で変わることは多い。更に放送地域によっても微妙に異なるバージョンがオンエアされていることもある。この大全集シリーズはそうしたマイナーバージョンまで含めて現存するものはすべて収録しようという徹底した作りがうれしい。

まあ,個人の努力ではいかんともしがたいコレクションがあっさり入手できてしまうので,複雑な気分のコレクターもいるかもしれないが。

日本アニメーションもこの2枚のLDで立て続けにオープニングを見ているとバラエティにとんだ仕事をしているなと感じる。同社は世界名作劇場のイメージが強いが,実はいろいろやっているんだと改めて感じる。タイトル部分に必ずNIPPON ANIMATION CO LTD.と出るのも特徴かな。

ほほ〜「ちびまる子ちゃん」や「野球狂の詩」もこの会社なんだ……「未来少年コナン」面白かったな……へええ「あしたへアタック」が入ってるぞ,逆トンボレシーブなんてとんでもない技やってたな(なんで知ってるんだ)……おおおお「女王陛下のプティアンジェ」ではないか!いやーこの曲好きだったんだよなあ……「はいからさんが通る」は短命だったな,原作よかったのに……。

こうして見ているとテレビの前から動けない。困ったもんだ。仕方がないのでその3へ続く。