その1 まずは創始者の仕事から

本音は誰もが欲しい主題歌コレクション

コレクターやマニアという言葉を持ち出すまでもなく,およそモノを集めるという楽しみはありとあらゆるジャンルに存在する。この奥深さとそれに魅入られた人々の情熱というのはコレクションの経験がない人間には理解しがたいものであろう。

僕自身はことさらマニアックな道を目指しているわけではないが,それでもいつの間にか手元に集まってきた様々な映像関連のモノたちにはやはり愛着がある。こんな拙いHPを細々と続けているのもそれらと接しているのが楽しいからだ。サプルメントは元々本編のオマケに過ぎないものだが,ある程度集まってくるとこれはこれで楽しい1ジャンルとして成立するのである。

故に予告編を集める人,メイキングにこだわる人等々この分野にも驚くべきコレクションを誇る強者がたくさんいるはずだ。

そこでテーマソングである。作品のオープニング&エンディングというのもそうしたコレクターの意欲をそそる対象のひとつで,僕もこの分野ではけっこう物欲にまかせてあれこれ集めようとしてきた記憶がある。

子供のころにテレビっ子だった人ほど愛着のあるテーマソングの記憶をたくさん抱えているだろう。そこでCDで懐かしのテーマコレクションをこっそりと買ったりするわけだ。しかしこの手のCDをおおっぴらに買うのは何がなし恥ずかしいという人が多いようで,次から次にこういうものを買っていると特殊な人間と見られがちである。

単に自分の気持ちに素直なだけなんだがなあ。

やはり映像付きだよこの分野は

この手のコレクションはLPレコード!やCDといった音声のみの時代から続いているが,たとえ音質は悪くともオリジナル音源で聞くテーマソングの数々はすこぶる快感でありインパクトも大きい。リミックスやカヴァーバージョンではこの喜びは得られない。聞いていた「あのころ」の気分を再現してくれるのはオリジナルのみが持つ力なのだ。

そんなコレクションもLDやビデオといったビジュアルの時代になって映像付きでリリースされるようになった。コレクターたちがある意味本懐を遂げる時代がやってきたのである。LD全盛時代に少しずつ蓄積されてきたこの種のタイトル群はサプルメントマニアにとっても宝物だ。

たまに取り出して見ていると……うーん,やっぱり映像としてのオープニング&エンディング集というのは楽しいぞ!

これを書いているのは2000年3月4日,すなわちプレステ2の発売日である。このマシンのおかけで今後のDVDリリースが加速するのは確実だが,いまだにLDのみで入手できるソフトも多い。

各社から出ている懐かしのテーマソング・コレクションも今のところLDかビデオのみというものがほとんどだ。歴史の強みというもので,DVDがソフト面でLDの資産をすべて継承できるようになるのはまだまだ先。これから取り上げるタイトルもLDユーザーでよかったわ〜というものばかりになるかもしれないが,その点はどうぞご容赦のほどを。

まずは創始者から始めると

さて,テーマソング・コレクションというとやはりアニメ関連が最も多い。子供時代の思い出をくすぐるわけだね。いろいろあるが,製作プロダクションごとにまとまったものが多い。オーソドックスなところでは最古参のひとつ虫プロ。実際に何種類リリースされているのか知らないが,僕の手元には2種類のソフトがある。

創美企画/ハミングバードから出ていた「傑作オープニングアニメ 虫プロセレクション」と後にビームから出た「虫プロTVアニメ主題歌大全集」の2枚。

後者は前者よりオープニングのバリエーションが多いが,前者には劇場作品の一部も収録されており,どちらかというとお宝度は高い。この2枚はそれぞれが補完し合うような内容なので,両方あわせて完全版といったところだ。ただ,実際にはもっと多くのバリエーションが放送されていたはずで,この2枚でそのすべてがカバーされているわけではない。その点は後述する東映系のコレクションLDが徹底している。

とはいえ,ながめているとやはりキモチイイ。初めて創美版を買ったときは永年欲しかった「W3」のオープニングを入手できてうれしかったものだ。曲の終わりに一声だけ歌っている白石冬美さんの声がふるえている。今となっては実にキュート。

また,鉄腕アトムが誕生したときに流れていたBGMがベートーベンの「運命」であったり,W3が地球に派遣されることになった経緯とか,テーマソング以外にも楽しめる。「リボンの騎士」のテーマソングの歌詞には一人称が「ぼく」になっている王子版と「あたし」になっている王女版があるのだが,この2枚にはいずれも王女版が収録されている。よく知られているのは王子版の方だと思うが,アレンジも微妙に違うのでここは両方欲しかったところだ。

むろん「ジャングル大帝」や「悟空の大冒険」や「どろろ」といった定番は外していない。「どろろ」の藤田淑子さんの歌の上手いこと!サビの部分を聞いているとゾクゾクしてしまう。いまだに現役バリバリなんだからすごいよなあ。

こういうのは番外なのかもしれないが

虫プロには手塚作品以外のタイトルもけっこうある。中にはこれのどこが虫プロなんだろうという作品もあるのだが,今となってはみな懐かしいのみ。かの有名な「あしたのジョー」や原作が好きだった「アニマル1」,劇場用長編の数々などそれなりに思い出はあるものだ。

中でも昔からやけに耳についてしまっているのが「さすらいの太陽」のテーマソング。山上路夫/いずみたくという豪華コンビの手になるこの曲,歌っているのはスリー・グレイセスのお姉さま方である。

いかにも時代を感じさせるメロディー&アレンジなんだが,僕の好みに合っていたせいか忘れられなくなってしまった。実はスリー・グレイセスの声が昔から好きだったのである。アニメの方は地平線まで三歩でかけていくような作りなんだけど,そんなわけで全然虫プロ的でないこの作品の主題歌が2枚ともに収録されているのは気分がよい。初めての人は(少なくともこの作画には)驚くだろうけどね。

創美版には「綿の国星」のワンシーンも収録されている。解説では「綿の国屋」になっているのでハリセンでもくれてやりたくなるが,VHDディスク発売中なんて書いてあるので思わず遠い目になってしまう。もうそんなに昔の作品になるのか……。

……とと,虫プロ作品だけで長くなってしまった。まだいろいろ取り上げるつもりなので可及的速やかに続きを書くことにして,とりあえず1回目はここまで。2回目で終わってくれるといいがなあ。