実は昔から「NG集」というものがあまり好きではない。こうして自分のページで映像作品のサプルメントをいろいろ突っついて楽しんでいるくせに,なぜかNG集には食指が動かないのである。メイキングを見るのは好きなのに矛盾してるよなあと思う。
メイキングは料理の過程を見せているようなものでそれなりに興味深いのだが,NG集というのは痛んで使えなかった食材をあえて映しているようなものではないか,という気がするのである。そんなものはゴミ箱に捨てて目に触れないようにすべきである,などと思ってしまうのだ。
もちろん屁理屈&偏見だね,これは。
テレビのNG特集が鼻についてしまったせいもあるのかな。コメディはともかくシリアスタッチの作品であんまりおちゃらけたところは見せて欲しくないというわがままなのだろう。ああ,自分もまだまだ狭い。実際,エンディングに面白いNG集が流れる映画は誰でもひとつやふたつは心当たりがあるのではないか。
最近見たディズニーの「バグズライフ」は本編の方もすこぶる面白かったが,NG集がまた傑作で楽しかった。傑作というよりはケッサクと言った方がいいような楽しさなんだが,結局使い方,見せ方次第ということか。
このNG集,エンディングに流れるのだが,独立した映像特典としても収録されている。ご承知のとおりこの映画はフルCGの作品なので,役者がトチったりタイミングが合わなかったりする本来のNGというのはあり得ない。つまりわざとNGの芝居をさせてるわけだが,その雰囲気がいかにも撮影現場らしい感じでキモチイイ。
この「いかにも」というところがセンスであって,僕たち観客の「NGとはこういうものだ」という記憶や思いこみをとっても上手くついてくる。そうだよなあ,確かにNGってこんな感じだよなあと思わせるのが上手いのだ。
カーテンコールで夢から現実に覚めたくない人にだって大ウケだろう。
前作「トイ・ストーリー」でもそのエンタテインメントに徹した演出ぶりがたいへん心地よかったのだが,この作品もそういった楽しさが横溢している。それもこのNG集でダメ押しだ。
このNG集はもちろん本編の方にそれぞれの「OKカット」があるわけで,これだけ最初に見てしまってはつまらない。ちゃんと本編を見て「あ,あそこだ」とニヤニヤしながら楽しむのが作法というものだ。ついでに本編のエンディングには収録されなかったボーナスNG集までついてくるサービスふりがまたうれしいぞ。
ボーナスといえば「トイ・ストーリー」のウッディもちょこっと顔見せてくれたりする。この「無限の彼方へ!」という主人公フリックのNGのセリフも前作のファンなら顔がほころぶことうけあいだ。ちなみに原語では
To Infinity and Beyond!
である。うーん,このスタッフたちのファミリーな遊び心が快感だわ。
僕はDVD版を見ているのだが,このサプルメントのNG集までちゃんと2か国語で楽しめるというのはいいね。この部分はあえてNGらしい芝居をするわけだが,日本語吹替のキャストは達者で違和感がない。そういえばアッタ役の土井美加さんはディズニー作品よくやってるなあ,などと思いつつこれを書いている。
ともあれ,観客を楽しませることにここまでエネルギー(物量のみにあらず)を注いでくれる作品は大事にしたいものだ。