ストリート・オブ・ファイヤーの予告編にへたりこむ

やっぱコレだね

LD誕生以来15年,いろいろなソフトが登場しては消えていったが,中にはソフトメーカーの顔となって販売促進の役を担っていたタイトルも少なくない。まあハード&ソフトの雑誌広告やテレビCMに登場していた作品だね。

僕の大好きな「ストリート・オブ・ファイヤー」もそのひとつ。ワイド版で再リリースになったのはまことにうれしい。早速入手したのはもちろんだが,この新版にはサプルメントとしてオリジナル版の予告編が収録されている。よしよし。

一抹の不安をおぼえる

さて今回の新版,ジャケットを見てふとなにがしかの不安をおぼえてしまった。トムとエレンを中心に配置した構図は荒いタッチのイラストになっており,それ自体は悪くない。だが,その周囲に無造作に出演者のスチルを配したレイアウトはまったくいただけない。写真とイラストが全然マッチしていないのは歴然としている。こういうところに無神経な作りを見せられると悲しくなるのである。ここは旧版の完勝だろうな。

DVDと違ってLDには30センチサイズのジャケットによりコレクターの所有する喜びをくすぐるという一面がある。ただ持っているだけでよいなら小型で新機能てんこ盛りのDVDに乗り換えもしよう。

だが,豪華なLDボックスが続々とリリースされてきたのはそんな理屈を越えた部分でコレクターの欲求がざわめいているからに他ならない。ゆえにジャケットにはこだわりを要求したいのである。

本編をつまみ食い

何度も見た作品なのでストーリーは今さら語るまでもないが,やはりこいつはいいねえ。ヒーローはあくまで強く,沈着で敗北を知らないというところがよい。僕はやられてばかりで最後の最後にからくも逆転勝利というヒーローは好きではないのだ。

昔,試合のたびにさんざん痛めつけられ血塗れになりながら最後の一瞬で回転エビ固めを決めてかろうじて勝つという某吉村道明(字には自信なし)というプロレスラーがいたが,子供心にもカタルシスをおぼえぬ試合で不条理な怒りを抱き続けていた記憶がある。あれなら反則負けになってもさんざん彼を痛めつけた相手レスラーの方がすっきりしてるよなあ。あああ危険思想。

脱線したが,とにかくその点本編のヒーローであるトム・コーディはよいねえ。主役ってのはこうでなきゃ。町へ帰ってきた彼がチンピラに往復ビンタをかませるシーンから「おお,こいつは容赦なく強えぞ」という印象強烈である。

エレン役ダイアン・レインのステージぶりがロックの女王にしてはノリが悪いとか言われたことはあるが,映画を減点法で見ていた日にはこの世に面白い映画なんか1本もなくなってしまう。たわごとにうつつを抜かす連中など無視しておればよろしい。

単純なお話だが,ラストに「TONIGHT IS WHAT IT MEANS TO BE YOUNG」が流れる頃には快く血は沸き立ち「ええもん見さしてもらいました」とのたまう僕であった。

しかし予告編でへたりこむのだ

さて,今回の新版には劇場版オリジナル予告編が2パターン収録されていてそれも楽しみにしていたのだが,その印象は????であった。

なんか迫力が感じられないのである。あれあれと思って何度か繰り返して見てみたのだが,やはり物足りない。こりゃーどうしたことだろう。84年の作品だから予告編が今とそんなに違う作りとは思えないんだが,そう思って見ているとひとつ気がついたことがある。音が希薄なのだ。

どんどんエスカレートしていくハリウッド活劇とその予告編を見慣れているせいかあまり不思議にも感じなかったが,今時の活劇は驚くほど効果音が過剰なのだ。たたきつけるような戦闘的な音楽とぐるぐるまわる炸裂音に彩られた現代ハリウッドアクションから見れば,ほんの10数年前のこの作品さえずいぶんおとなしい作りなのである。

もし今この予告編をリメイクするとしたらそりゃーもうド派手で激しいものになるだろう。

しかし,映画の冒頭に宣言される「ロックンロールの寓話」にふさわしい激烈な予告編を妄想しながらモニタを見ると,そこにはちょっとたるい音楽とナレーションで構成されたおとなしーい予告編が流れている。

ああ,あのヒーローたちの熱い戦いはどこへいったのだあ〜。