海外版のレアな展開を楽しむ

不死身の男

寺沢武一の「コプラ」は彼の代表作だしアニメにもなった人気作だ。そのアニメーションも劇場用に加えてTVシリーズ「スペースコブラ」が制作され,僕などは劇場版よりこのTV版の方をいたく気に入っている。野沢那智のコブラはまさに適役だと思うのだが,僕の周囲には劇場版の松崎しげるを推す人が多くてちょっと意外に思ったこともある。まあ好みは人それぞれということか。

もうかなり前の作品になってしまったが,今見てもそのあか抜けした演出とストーリーが楽しい。原作と比べて美女たちの肌の露出度こそ若干抑えられているとはいえ,完全に大人向けの世界であって,当時の他のTVアニメとは明らかに一線を画していた。登場するのが早すぎたのではないか,と僕は思っている。現在オンエアされている作品の大半はこの作品にとうてい及ばないからだ。

主人公コブラのキャラクターはどう見てもアダルト犬神明のパロディだと思うが,軽快なハードボイルドタッチにアクの強い敵方キャラクターや裸同然の美女たちがからんで快感だ。今思うとゴールデンタイムによくぞこんな思い切ったものを流したものだと感心する。

さて海外版の展開は

さてこのTV版「スペースコブラ」のLDボックスにはサプルメントとして海外版パイロットフィルムが収録されている。これが何というか日本版を見た人には???な代物で面白い。マニアならずとも一度は見ておきたい珍品である。スタッフには申し訳ないが日本版のしゃれた展開に慣れた目にはどうにもこうにもコメントしづらい一品なのだ。

タイトルからしてなんだか貧相である。日本版のあの前野曜子が歌う華麗なオープニングとは比べようもない。ストーリーは日本版の第1話に当たる部分だが,まるっきり別の話になっており,共通するのは主人公が顔を変え記憶を消してただのサラリーマンとして暮らしているという点だけだ。

そもそも設定が違う。コブラはダークサイド(海賊ギルドのことらしい)に反旗をひるがえしたレジスタンスの英雄ということになっている。レジスタンスたちはリーダーたるコブラの復活を待ち続けている・・・らしい。

ギャラクシーアって誰?

絵的には日本版第1話のものとオリジナルの部分が半々といった感じだが,演出が全く違うせいで「へ?」という部分が多い。日米文化の違いもあるのだろうが,日本版の方がはるかに洗練され先を行っているのは誰の目にも明らかである。

残念なのはBGMが非常に単調で,同じ曲,それも軽快なハードボイドの雰囲気にはちと遠い感じの曲ばかりが使い回されていること。これは大いにもの足りない。はからずも音楽が作品に占める比重の大きさを実感できてしまう。せめて日本版と同じBGMがついていればこうまで印象が弱くなることはなかったと思うのだが。

ところでコブラとくればレディである。コブラの盟友にして無二のパートナーであるアーマロイド・レディ。この海外版ではギャラクシーアという名前になっている。ギャラクシーア??ううむ,なじめんなあ。アメコミの文化のセンスってやはり日本のアニメやコミック文化とは違うねえ。それともこれも日本側スタッフの発案なのだろうか。

まあ昔のことだから

かくのごとくクエスチョンマーク連発の海外版パイロットフィルムだが,実を言うと昔初めて見たときほどの「ひっでー,つまんねー,だっせー」という印象は受けなかった。こちらの見る目が優しくなってしまったのだろうか。おお,海外進出もなかなか大変だなあという感じである。

そんなことよりバージョン違いの珍しいフィルムを見る楽しさの方が先に立つ。実際,TV版を見ていたファンの人にも話のタネにぜひ1度,と薦めたいくらいである。お話の方はコブラが覚醒し,正体を現したギャラクシーア(トホホ)と共にタートル号を隠した星へ向かうという部分なので,その後のクリスタルボーイの登場なども見てみたかった気がする。あの空前のキャラクターが海外版でどうからんでくるのかと考えると怖い気もするが。

「スポーン」のあのCGを見ると,今こそ実写でコブラ対クリスタルボーイを見てみたい気がするのである。