アンチ・サプルメントマニア

日々是好日

映像ソフトに対する僕のスタンスは"全方位外交"を基本にしています。要するに楽しませてくれるものであれば無差別に受け入れるということですね。このホームページは基本的に好きな作品に賛辞を捧げるためのものですが,当然のことながら好き嫌いはありますし,僕にとっても罵倒したい愚作/駄作は歴然と存在します。ただ,手間暇かけて罵詈雑言の暗黒エネルギーをつむぐのがばからしいと思っているだけです。ラブレターを書いている方が心浮き立つのです。

さて,最近LD市場はDVDの登場で差別化を図ることに躍起になっているようですが,たいていのソフトが出尽くした今となってはタイトルの数だけに安住しているわけにはいきません。そのせいかどうか,近頃はやたらとボックスものが企画されます。マニアのコレクション意欲をあてにしているわけです。物好きな連中は気に入ったものには金に糸目を付けませんから。

したがってそういったタイトルは作りも内容もハナから一般庶民を相手にしてはいません。よく言えばマニアック,ありていに言えばオタク向けという,その筋の人々にとってはまことにうれしい時代に突入しているのです。

出会いはさりげなく

そんな中,あるSFシリーズが昨年(一昨年だったか?)リリースされました。タイトルは「VOYAGER」,たぶんジュニア向けに制作されたと思われる米国のテレビシリーズ(だと思う)です。CGバリバリのSFXがなかなか快感のスペースオペラで,つくづくお金があるっていいなあと思わせる作品です。この予算が「ウルトラマンティガ」にあったらどんなにすばらしいことか,なんてグチをたれても仕方がありません。あちらのガキもといお子さまはホントにぜいたくな番組を見ているのです。うらやましい。

物語はモロに日本のロボットアニメそのもので,登場するメカもキャラクターもどこかで見たようなものばかり。敵方のロボットなど「イデオン」の重機動メカそっくり。それでもそこそこ出来はいいので楽しめます。冒頭のオープニングを見ただけで「しめた!これは当たりだ」と思ったものです。

にもかかわらず

そう,確かにこれは面白かったです。テレビでここまでやってくれたらうれしいですよ。にもかかわらず,このソフトはサプルメント・マニアをうならせる重大な矛盾をはらんでいたのです。

まずこの4枚組のLDボックスにはなんの特典もついていません。タイトルロールは1枚目の冒頭にしか収録されておらず,全13話でありながら各話のエンディングも次回予告もなし。ひとつのエピソードが終わるとそのまま次のエピソードにつながっているため全13話ではなく長〜〜〜い全1話と言った方がいいでしょう。そして第13話の終わりに申し訳程度にスタッフクレジットが出るだけ。

これにはあきれるより先に「不思議だ」という気持ちがわき上がってきました。LDボックスというのは決して安価な商品ではありません。しかもSFロボットスペースオペラという内容です。マニア(オタク?)以外のどんな人種がこれを買うというのでしょう?コレクションにおいて画竜点睛を欠くことを何よりも嫌う客層が相手なのです。

影の差す道

このような商品企画を立てる人間がその程度の常識もないとはとうてい信じられません。にもかかわらず,リリースされた「それ」は明らかにマニア向けでありながら最もマニア受けしがたい商品として誕生したのでした。これほど皮肉なタイトルがかつてあったでしょうか?

確かに作品自体は楽しめました。しかしサプルメント・マニアにとってかくも「美味しいところを奪われた」リリースは他にありません。

この企画実現のために働いたスタッフがどのような人々であったか知りませんが,この世にはサプルメント・マニアの天敵ともいうべき人種が存在する。僕はそのことを予感とともに感じ取り,このコレクター道の平坦でないことにいくばくかの不安を抱いて今ここにいるのです。

嗚呼,恐るべしアンチ・サプルメント・マニア……。