「番外編」島村アナの絶叫に感動する

オリンピックはお好き?

ただ今長野オリンピックの真っ最中ということでこのコーナーもひとつ番外編だ。

スピードスケート男子500メートルでの清水選手の金メダルはすばらしかったが,長年オリンピックテレビ観戦フリークをやってきた僕にはもうひとつの感動があった。この感動の瞬間を劇的に伝えてくれたのがまたしてもNHKの島村アナであったということだ。

鈴木大地のときも岡崎恭子ちゃんのときも彼の実況だった。あの声が裏返るアナウンサーと言えばおわかりだろう。とにかく彼の中継は燃える。むちゃくちゃ燃える。インタビューではちょっと泣かせに走りすぎる気もするが,こと大一番の実況において彼にまさる感動伝達能力をもったアナウンサーは皆無だ。

燃えよ実況

次第に甲高い声に移りつつ,自らを,そして視聴者を感情移入の嵐に巻き込みながら勝負どころのクライマックスへ向けて疾走する実況ぶり。しかも日本人選手が勝負にからんでこようものならひっくり返った声のまま絶叫して解説者共々もらい泣きする激情中継(誤字ではない)。

あれを聞いているとこちらも一緒になってナイアガラの滝に飛び込むような感情の虜となり,気がつくと意味不明の雄叫びをあげているのである。視聴者にたいへんなエネルギー消費を強いる,そしてそれがきわめて快感であるというまことに得難い実況アナだ。

彼が実況すると全中(中学生の大会)の試合が世界選手権かオリンピックかという迫力に生まれ変わる。加えて同じ絶叫調でも民放アナのわざとらしいけたたましさとは一線を画した自然な盛り上がりがある。彼は自らを鼓舞して興奮しているのではなく,自らを今目の前で展開している試合に一体化させることで驚異的なシンクロ作用を生じさせているのである。

この感動を永久に

そうした彼の実況はスポーツの感動を永久保存したい人のための,まさに「気持ちよくなりたいあなたへ」そのもののパフォーマンスではないか。ならば!アーティストにベストアルバムがあるように彼にもベスト実況アンソロジーみたいなソフトを出してもらいたい。

長年オリンピックのエアチェックをやってきた身としては,もし「島村アナ炎の実況十番勝負」なんてソフトが出たら真っ先に買ってしまうだろう。スポーツ観戦が好きな人にはこたえられない1作になることは間違いない。感動と興奮が何度でもリピートできる夢のソフトである。

鈴木大地のゴールの瞬間「勝った!!」と叫んだあの声。オリンピックではだれもがナショナリストになる。オリンピックの晴れ舞台での君が代と日の丸は格別に快感だ。それを冷めた口調で批判する奴もいるが,むろんそんな連中のことなどコメントするにも値しない。僕は島村アナのドラマチックな実況を聞きながら極彩色の感情で一喜一憂する快感を大切にしたいのだ。

もっとも,今大会では国旗と国歌ではなく「選手団の旗と歌」という言い方をしているね。そういう時代のオリンピックなんだなと頭の隅で思いつつ,更なる感動を期待して島村アナの登場を待つのである。

好きなものは断固好きと言いたい。そして気持ちよくなりたい。