「美少女戦士セーラームーン」の頂点を見ましょ

世界にはばたけセーラームーン

というキャッチフレーズでホントに世界各地で人気を博した「美少女戦士セーラームーン」,あなた,見てましたか?

一世を風靡するという言葉にふさわしい文字通り90年代前半を代表する大人気アニメ。まさかあそこまでブレイクするとは作者も含めて誰も予想しなかったに違いないけど,小さなお友達から大きなお友達まで,夢中になっていたのはまぎれもない事実。

しかし,ついこのあいだ終了したような気がするのにうさぎちゃんの名は既に懐かしのキャラである。変転は世の常とは言うもののちょいと寂しい気もするな。

僕は第1シリーズの途中からハマってしまったクチだが,あのキャラクターと演出だもんなあ,最初から目を付けていた人たちには感服してしまう。だってセーラー服美少女戦士にタキシード仮面だよお。どんなセンスしてんだろねーと思ったことを正直に告白しておこう。

でも。ハマってしまったのである。

ファンの誠意は洋の東西を問わず

好きになったら最後まで見届けるのがファンたるものの誠意である。その後原作コミックスはいうに及ばずムック本や全話LDやCD−ROM画集まできっちりと付き合わせてもらった。大好きな「うる星やつら」でさえ全話LD(あの50枚組ってやつね)には手を出さなかったというのに,気がつけば最終シリーズまで50余枚買っちゃってる自分には苦笑するほかない。

僕もまた「せらむん」と打てば「セーラームーン」と変換する辞書の持ち主というわけだ。いやはや。

テレビシリーズとしてはやはり第1シリーズがもっともテンションが高く,特に中盤以降の展開にはいい年したおっさんのくせに毎週毎週テレビにかじりついていたものだ。これはけっこう共通した感想のようで,後にインターネットで海外のセーラームーン・ニュースグループの記事を読んでいたら

ワタシはセーラームーンのエピソードの中ではネフライトさまが死んでしまう回がベストだと思います。このエピソードを見るとワタシの胸はしめつけられるのデス……

なんて書込みがあった。第1シリーズの第24話のことだね。いやー外人もおんなじとこで感動するんだなー,などと思ってなぜか微笑ましくなったものである。

これぞ頂点なり

しかし僕がセーラームーンの中で最高の1本は?と問われたら,これはもうためらうことなく劇場版第1作をあげたいと思う。人気作だけあって劇場用も何本か作られているが,その第1作はストーリー,演出,製作のクオリティともに文句なしのベストだ。

既に第2シリーズに突入していたテレビシリーズにならってタイトルも「美少女戦士セーラームーンR」になっていたが,予想もしなかった感動の不意打ちをくらって涙ぐむ人をこの目で目撃した。僕自身も目頭が熱くなっていたのだが。

とにかく,テレビより格段に良好な作画とテンポよい演出,よく練られたストーリーが60分という中編でみごとな完成度を見せていた。セーラー戦士たちの必殺技もいつもと違う描き方で新鮮だったし,銀水晶が励起状態になるシーンも原作以外では初めての登場だった。セーラームーン全エピソードの中でスタッフ・キャストの力がまさにピークに達した瞬間に位置する作品だろう。

秘密はエモーションにあり

エンタテインメントにおいては登場人物たちの感情がいかに生き生きと伝わってくるかがカギである。この作品においてヒロイン月野うさぎのそれはテレビ版第1シリーズのクライマックスに優るとも劣らない輝きを放っていた。東映動画近来の傑作であることは間違いない。

今テレビ版の最初のサントラを聴きながらこれを書いているのだが,おなじみのBGMの数々がずいぶん懐かしく聞こえるのにちょっと驚いている。ほんの数年前のことなのにうさぎちゃんたちの十番町は遠くなってしまった。それでも「誰も独りにしない力を!」と叫ぶ彼女の声は鮮やかで胸を打つ。三石琴乃最高。

商業主義にどっぷりつかっていても傑作はできる。そのことを教えてくれる必携の1本。うん,やっぱいいよね〜。