よい子には首をあげよう

■ナイトメアー・ビフォア・クリスマス■

映画ファンに限らず,傑作や感動作にぶつかると誰彼となく話しかけたくなるものだ。僕も見終わった直後,思わずメールで感想を書き送る衝動に駆られた作品がいくつかある。メールで,というところがなんか自分の機動力のなさというかフットワークの重さを感じさせて面映ゆい。今どきの人たちならちまちまとキーボードに向かったりはせずに即ケータイだろう。

まあそれはともかく,ティム・バートンの「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」はそうした大のお気に入りの1本である。いやーこいつは面白かったねえ。

監督はバートンではないのに「ティム・バートンの」と冠する,冠されてしまうところが彼の人気というか個性の証だろうか。ちなみに監督はヘンリー・セリックという人。知ってた?僕は知らんかったぞ。それだけバートンのキャラクターが強烈ということかな。カリスマ(ああ,この言葉にもすっかり手垢が付いてしまった)の下で仕事している人は皆その他大勢になってしまうのである。

さてこの映画,ストーリーも映像も音楽も見事の一語に尽きるが,どこかワンシーンを取り出そうとするとけっこう難しい。全編がムダなくつながっているのでトータルでの「上出来」ぶりが印象的だからだ。

もちろんジャックのちょっと傾いだバイタリティも脇役たちの個性も実に楽しいし,ブラックなギャグもなかなかイヒヒヒである。つぎはぎ人形のサリーちゃんはよく見ると相当不気味なはずなんだが,この映画の中ではとてもけなげでチャーミングだ。おかげでラストシーンは美しく気分良く迎えることができる。うーん,すんばらしい!

そうした連中のドタバタ騒ぎの中でワンショットなのにやけに印象的なのがこのシーン。ハロウィン流クリスマスを演出?するジャックがサンタのかわりにプレゼントをばらまいていくんだが,何しろダークサイドの住人のやることだからどのプレゼントも不気味なものばかり。ある家では坊やがプレゼントの箱を開けると中からは首が……。

親たちの大仰な悲鳴にくらべて坊やの方はしれっとした顔をしているのがおかしい。おかげで妙に忘れられないシーンになってしまった。

LDは単品とボックス版,さらにDVDでもリリースされているが,最初に出た単品LDで探してみるとこのシーンはサイド2チャプター17の17分27秒あたりから。

ジャックいわく「Special Present」だそうだ。

世評高い作品を見てみたら自分的にはつまんなかったよ〜という経験は誰しもお持ちだろう。が,そんな心配は全く不要な傑作だ。どの媒体であってもとにかく手元に置くべし。

ナイトメアー・ビフォア・クリスマス PILA-1352
発売元(株)パイオニアLDC