ライク・ア・ヴァージン

■THE VIRGIN TOUR LIVE■

なぜこのDVDが出ないんだろうと不思議に思っているタイトルのひとつにマドンナの「THE VIRGIN TOUR LIVE」がある。最初のLDが出たのが確か85年頃。あれから時移り時代は変わってその間に彼女のCDもDVDもたくさん出たのになぜかこれと「LIVE IN JAPAN」だけはDVDが出ない。ちなみに今は2002年10月だ。

この「THE VIRGIN TOUR LIVE」は音楽ビデオ史上に残る歴史的名盤のひとつだと思う。洋楽から遠く離れて未来のダサい中年へとひた走っていた僕でさえ「か,かっこええ〜」と衝撃を受けたくらいだ。もう呆然として画面を眺めたことを覚えている。

当時の日本の歌って踊るタイプの女性シンガーが一斉にマドンナのスタイルになってしまったことを笑うわけにはいかない。まさに激震であり,その影響力には計り知れないものがあったのだ。

そりゃステージで激しいダンスを披露しながら歌う歌手はいくらでもいたよ。しかしこのビデオでのマドンナのそれは,お付きの二人の男性ダンサーとのユニットとして見たこともないほどかっこいいパフォーマンスを見せていた。動きのシャープなこと,曲とのシンクロ,一瞬のポーズでさえ実にサマになるあの姿……衝撃的だったねえ。

待望の日本初公演は異例にクオリティの高い編集の上でTV放送,LDも早期発売という特別待遇だった。僕もにわかファンとしてたいへん喜んだものである。

しかし,その LIVE IN JAPAN のときには既に彼女のスタイルは微妙に変わっており,それはそれでたいへん楽しめたのだけど,VIRGIN TOUR のイメージを抱いていた人にはいくらかあれれという感じがあった。

そういうこともあって,この VIRGIN TOUR のライブは彼女が超新星の輝きを放っていた時期の特別なステージが拝める記念碑的作品なのだ。

アクションとしては序盤の数曲がかっこいいと思うが,マドンナのキャラクター,コスチューム,パフォーマンスなど彼女のイメージを象徴していたクライマックスはやはり「LIKE A VIRGIN」だろう。初期版LDではチャプター10だ。ウェディングスタイルで歌い踊るその姿はもう絵に描いたようなアメリカン・ポップスターの歴史的ひとコマであり,後の濃密な女の匂いとは違う,娘々していた頃の若さがはじけている。

マイクを手に持って歌う時代の永久保存版的あで姿であろう。

THE VIRGIN TOUR LIVE 07JL-38105
発売元(株)ワーナー・パイオニア