弾丸より速い吸血鬼

■ブレイド■

たとえが古くて恐縮だが,エイトマンやサイボーグ009のように超高速で動けるヒーローのアクションを映像化するのはなかなか難しい。アニメはともかく,実写で成功している事例はあまりないと思う。物質的なSFX(最近はVFXというらしい)というより"時間"というきわめて感覚的なものを感じさせる効果が必要だからだ。

現在のSFXなら技術的な困難さはさほどないはずだが,これはひとえにセンスの問題で,どう見せるかというその一点に成否はかかっている。超高速の感覚,あるいは一瞬を数百倍にも拡大してみせるミリセカンド,ナノセカンドの感じがいかにもそれらしく描かれていれば思わず「カッコええ〜〜!」と叫ぶことになる。

巷では現在公開中(今は99年9月)の「マトリックス」がこの種の新感覚SFXで評判だが,一足先に公開された「ブレイド」の方もすごいぞ。突き抜けた映像とアクションがまさに度外れであり,堪能してしまった。どひゃ〜〜というのが第一印象である。

自らもヴァンパイアの血を引く吸血鬼ハンター,ブレイドのスーパーな活躍を描いた映画だが,とにかくぐちょぐちょぴちゃぴちゃの大流血でありながらスピードとパワーにあふれたダイナミックなアクションが快感だ。もうここまでやってくれたら恐れ入るしかない。ブレイド役のウェズリー・スナイプスが問答無用にカッコいい。

いかにカメラワークやハイテクSFXの助けがあろうと,役者自身の肉体的能力が高くないとここまでのアクションシーンは望めない。まことにあっぱれである。

映像的にも見所満載だが,思わず「おおっ」とうれしくなったのが中盤に出てくる「弾丸よけ」シーンだ。ブレイドの撃った3発の弾丸を敵のリーダー,フロストが眼前でよけるこのシーン,そのハッタリ度といい見事なビジュアルといいまさに超人同士の対決にふさわしいカットである。超高速で動くという感覚が実に上手い。ケレン味もたっぷりだ。

DVDではチャプター24の72分5秒あたり。主人公も敵も非情だが,その激烈な気が交錯する一瞬である。

とにかく,アクションシーンをSFXで増幅するというのはどういうことか,実作で証明してくれる希有な快作である。エンタテインメントとして非常に潜在能力の高い映画であり,映画雑誌等での扱いの低さはまったくもって物足りない。見るからに"痛そうな"映画だがコレクターは必携だろう。

ブレイド PCBH-00021
発売元(株)日本ヘラルド映画/ポニーキャニオン