東方不敗さまの手形

■スウォーズマン/女神伝説の章■

香港映画ですげえなーと感嘆するのは「そこまでやるか」というとんでもない八方破れのエネルギーである。僕は香港映画の熱心なファンとは言えないが,その点は認めるにやぶさかではない。これは邦画が逆立ちしてもマネのできない特質だろう。

「スウォーズマン/女神伝説の章」は雑誌の評を読んで面白そうだなと思いLDを買ったのだが,その圧倒的なでたらめさというか荒唐無稽なパワーの前にただただ恐れ入るのみであった。ひえーすごいわこれ,てなもんである。そこそこに分別の付いてしまった日本の映画人には照れが先に立ってこんな映画は作れない。

吊りとトランポリンのアクション映画だが,伝説の武術の奥義書をめぐって繰り広げられる途方もない突き抜けたアクションがすごい。ドラゴンボールを生身でやってる,という評を読んだことがあるがまさにそんな感じ。おいおい,いくらなんでもそんなバカな〜という描写が続出する。そう,確かにこれはコミックやマンガでならおなじみのスーパーなハッタリ演出なんだが,実写でやってるんだよなーこれ。

伝説の奥義により超人的な強さを身につけた東方不敗のキャラクターがよいね。男なのか女なのか,演ずるブリジット・リンの妖しい表情と武闘シーンの組み合わせが最高だ。

とにかくこの映画のアクションシーン,口をあんぐりと開けて呆然と見てしまうとんでもない代物なんだが,LDでサイド2の42分10秒をチェックしておこう。東方不敗に戦いを挑む武術の達人のじいさんが空中ででかい鉄球(鉄製の大がめか?)をたたくと鉄球は東方不敗めがけて吹っ飛んでいく。このじいさんもすごいが,東方不敗は軽く手を振っただけで逆にこの鉄球をはじき飛ばしてしまう。その瞬間,触れたとも見えないのにこの鉄球の表面には東方不敗の手形がめこっと刻印されるのである。この徹底したマンガチックな演出!

ここまでやってしまう吹っ切れ方は邦画界にはマネができない。どのシーンも決して洗練された映像ではないのだが,このハチャメチャパワーの前にはたいていの理屈は吹っ飛んでしまう。

我が国でこれに対抗できる作品があるとすれば「仮面の忍者 赤影」くらいだろう。

スウォーズマン/女神伝説の章 ASLF-5054
発売元(株)アミューズビデオ/パイオニアLDC