トンネルを抜けるとそこはタイタニックだった

■タイムトンネル■

98年1月現在,制作費2億ドルというとほうもない大予算の映画「タイタニック」が大ヒット中だ。ハリウッドのインフレぶりはとどまるところを知らないって感じだが,まあお金の話はひとまずおいといて,僕がこの船の名を初めて印象づけられたのはアメリカのあるテレビシリーズによってである。

もう数十年前のことだが,それが「タイムトンネル」だ。

「原潜シービュー号」や「宇宙家族ロビンソン」といった有名な作品と同時代のSFテレビシリーズで,時間の放浪者となった主人公の二人組が,歴史上の様々な事件にかかわっていくという話であった。

過去の映画作品の特撮シーンなどをうまく流用しながらも,ストーリーの面白さと主人公たちがいつ現代に帰れるのだろうというハラハラする展開で毎週の放送が楽しみだった。NHKは「サンダーバード」といい,この作品といい,SF作品にはなかなか好意的で,今思うとありがたい局だったなあ。

その「タイムトンネル」の第1話というのが物語の発端となるタイタニック編だったのである。

アリゾナ砂漠の地下800階に極秘に建造された超巨大施設,トンネル型のタイムマシンの映像はテレビとしてはなかなかのスケールであり,映画「禁断の惑星」に登場した超古代文明のそれを思わせる造形だ。うごめく人間の姿がアリのように小さく見えるところなど巨大さがよく出ていた。

このビジュアルは放送当時けっこう人気があって,少年マガジンの大図解などにも登場していたと記憶している。

主任研究員のトニーはある理由で自己を実験台にした無謀な時間転移を試みる。未完のタイムトンネルが彼を送り込んだ先が大西洋を航行中のタイタニック号の船上だったのである……。

タイタニックだ!えらいこっちゃ!というわけでここからトニーと,そして現代でその映像を見ているタイムトンネルスタッフの奮闘が始まるのだが,何しろ自分だけがこの船の沈没を知っている,しかもその時は迫っているというのだから切迫感がある。タイムトラベルものの面白さである。

全話ボックスで出ているLDのディスク1,サイド1のチャプター5,13分52秒あたりがトニーがタイタニック号に現れるシーンである。別にとりたてて凄い映像というわけではないが,その後毎週このパターンで物語は進行するので選んでみた。

主人公たち(なぜ複数かは本編を見れば判る)は過去ばかりでなく未来へ飛ばされることもあり,時間を超えて未来人や異星人がタイムトンネルに干渉してくる,などというエピソードもあった。ちょっとクラシックなSFの楽しさが味わえるシリーズなのである。

ボックス2個で価格もお安くはないが,中古で見つけたら即入手して損はないぞ。昔はいかに面白い,そしてぜいたくなシリーズものをテレビでやっていたかを思い知るはずだ。

タイムトンネル PILF-1986
発売元(株)パイオニアLDC