ペネロープ嬢−優雅なるエージェント

■サンダーバード■

驚くべきことに最近は「サンダーバード」を知らない世代が出現している。

我々中年の元テレビっ子世代にとっては信じがたい事態であるが,事実だ。万国共通語に等しいと思っていた言葉が「通じないよ」と言われたようなもんである。無数に放送されてきた海外テレビシリーズの中でもそのクオリティ,センス,世界観,どれをとっても最高にランクされるべきあの傑作を知らないとはなあ。

若い人たちにとってはちょっとしたオーパーツかもしれない。これを見れば文化は時と共に進歩するとは限らない,ということがわかるはずだ。SF人形劇(人形アニメではない,人形劇である)の金字塔である。

さて,その「サンダーバード」,魅力を挙げていけばきりがない(特にメカ類)のでキャラクターの中から「お嬢さま」ことペネロープ嬢の優雅なお姿に再見してみよう。国際救助隊ロンドン支部のエージェントである彼女は貴族の令嬢でもあり,社交界の花形だ。万事庶民とはグレードが違う彼女はエージェントとして働くときもあわてたり取り乱したりはなさらないのである。イギリスの名門の雰囲気が良く出ていたし,執事のパーカーとの名コンビは人気があった。

「サンダーバード」のLDはボックスでも,また後にバラでもリリースされているが,これらは我が国でオンエアされたもの以上の完全版だ。むろんおすすめ度は最上クラスである。しかしそれ以前に3枚だけ特別編集でリリースされたバージョンがあって,もしこれらを中古で見つけたらぜひ入手しておこう。これは珍しい日本語字幕スーパー版で,この作品になじみのある世代にとっても一見の価値がある。

制作者のシルビア・アンダーソン自らがペネロープの声を担当しているのだが,これは今聞き比べてみると日本語版の黒柳徹子女史の吹き替えとも違和感がない。他の国際救助隊メンバーの声もイメージが狂うことはなく,当時の日本語版のキャストが適材だったことをあらためて知ることができる。

とりあえず1枚目のサイド1,45分35秒あたりを見るよろし。特製ロールスロイスで敵を追いつめ,パーカーが車載のマシンガンで相手の車を吹っ飛ばす。で,彼女の言ったセリフが「お上手よ」だもんなあ。いいねー。

この字幕スーパーのバージョンまで探し求める必要はないにしても,エンタテインメントを愛する人ならぜひともおさえておくべき基本中の基本的作品である。何を語るにもまず必要なレベルというものがあるのだ。

「サンダーバード」とはそういうタイトルである。

サンダーバード1 国際救助隊出動せよ! BELL2
発売元(株)バンダイ