ハヤタ隊員のスプーンギャグ

■ウルトラマン■

僕は小学生の時テレビの初代「ウルトラマン」をリアルタイムで見ている。毎週日曜日の夜がどれほど待ち遠しかったかは言うまでもない。後にオタク文化が全盛となって様々な分析がなされるようになったこの番組だが,むろん,最初に見ていた頃にはただただ楽しいばかりであった。

そんな子供の僕でもおや?と思うシーンに遭遇してなにがしかの違和感をおぼえる瞬間があった。後にそれらが実相寺昭雄監督独特の作風によるものだということを知ったが,今見ると子供番組とも思えぬその演出に感心する。

子供向けヒーロー物語の制約の中でどれだけ自分の思い通りに仕切ってみせるか。監督の意気込みがふてぶてしくて快感だ。

第34話「空の贈り物」もまた大人向けテイストの効いた実に楽しめるエピソードである。珍しくユーモラスな回で,正味20数分の中にテンポよく詰め込まれたギャグとストーリーが笑える。シリーズの中にあっても異色の1本だろう。実相寺作品らしく花びらも舞っているぞ。

で,何といってもこの回の目玉はいまだに語り草になっているハヤタ隊員のギャグである。主人公であり真面目なエリート隊員のはずの彼が,ベータカプセルとスプーンを間違えて変身ポーズをとる有名なシーンだ。

イメージが壊れるといってけっこうクレームがついたような話も聞いているが,僕には妙に忘れがたいシーンで,後々までスカイドン(この回登場するやたらと重い怪獣ね)の名とともに記憶に残っている。

初期のボックス版LDではディスク9サイド1チャプター4の49分27秒である。この回に限らず初代ウルトラマンというのは名場面の数々がうれしい傑作シリーズだ。全巻そろえて損はない。

ウルトラマン メモリアルボックス BELL-551
発売元(株)バンダイビジュアル