ダリル・ハンナのあっぱれな人魚ぶり

■スプラッシュ■

「スプラッシュ」はディズニー系の大人向けエンタテインメント作品だが,テレビの洋画情報番組などで主演のダリル・ハンナの人魚姫が話題になっていたのはもう十数年前のことだ。今クレジットを見ると1984年作となっている。10年なんてホントにあっという間だなあ。

ご覧になればおわかりのとおり,実に気持ちよいハッピーな佳作である。トム・ハンクスの好青年ぶりは毎度のことだが,ダリル・ハンナの人魚姫がもうこの作品のすべてである。彼女に人魚の格好をさせてカメラをのぞいたとき監督はこの作品の成功を確信したに違いない。

そのくらい彼女はキュートでチャーミングな人魚そのものである。もちろん色っぽさの点でもまたご立派なのは言うまでもない。

とりわけ見事なのは彼女の水中での演技だ。水の中で生活するのが自然な姿である人魚の役であるから,ただ人間が息を止めて水中で演技するだけではダメなのだが,彼女はすばらしいレベルでその壁をクリアしている。

実際にはいくらトレーニングを積んでも水中で演技できる時間はごくわずかだろう。それを全く感じさせない自然なしぐさ,ぱっちりと大きく開いた目,口や鼻から気泡を漏らさない努力,思わず水中であることを忘れさせる表情など,どれをとってもダリル・ハンナの並々ならぬ意気込みとプロ意識を感じて感嘆してしまう。

まったくあっぱれな女優さんだ。

「ブレードランナー」でのレプリカント役もよかったが,僕はこの「スプラッシュ」でホントにこの女優さんが好きになってしまった。だから彼女が「ジャイアント・ウーマン」なんて変てこな作品に出ても「おーおー,かわいいのー」と許せてしまうのである。

うちのLDではサイド2の30分ちょうど,31分45秒,37分15秒あたり,そしてエンディングクレジットの部分などで彼女のすばらしい人魚ぶりを拝むことができる。残念ながらここまでのプロ根性をもった女優さんは我が国ではついぞお目にかかれない。これもまた彼の国の映画界のすごさのうちであろうか。

スプラッシュ SF078-0097
発売元(株)レーザーディスク/パイオニア