ソドム滅亡と塩の柱

■天地創造■

60年代中ごろ,少年マガジンのグラビアでときめいた映画が2本ある。ひとつはかの「2001年」であり,もうひとつが大作大好きラウレンティスの「天地創造」である。

その名も THE BIBLE...in the Beginning ってくらいだから未見の人にも想像つくかもしれないが旧約聖書の有名なエピソードを描いた聖書そのものの映画化だ。当然製作も巨大スケールで,今のようにラボの中でどんな映像も作り出せる時代の作品ではない(66年作)から,大規模なセットとロケによる超大作である。

「ベン・ハー」や「十戒」などのハリウッド大作史劇とはちょっと趣が違って物語は淡々と進む。登場人物たちは感情移入の対象ではなくあくまで「登場人物」でしかない。セリフよりナレーションで進んでいく。実は神様自身が主人公みたいな作品だからだ。

作中最もドラマとして力が入っているのはノアの箱船のエピソードと族長アブラハムのパートだが,初めて見たときに最も印象的だったのが退廃の街ソドム滅亡のくだりである。

神の使いにソドム滅亡を告げられ,唯一脱出に成功したロトとその家族。しかし「そのとき,決して振り向いてはいけない」という警告に背いてソドムを焼く神の光を見てしまったロトの妻は塩の柱になってしまうのである。

LDではサイド3チャプター23の24分48秒あたりから。炸裂する神の業火,好奇心(たぶん畏れや不安も)に負け振り向く女,No!というロトの叫び,その背後にわき起こる光る雲(核爆発のイメージ?),塩の柱と化す女,と続く短いカットだが,子供心に強烈な印象を残してくれたものだ。

今のSFXに慣れた目にはたいした映像ではないかもしれないが,人型の塩の柱からポロポロと破片が落ちていくさまに無慈悲な恐ろしさを感じたのかもしれない。ちなみにこのシーンを知っていると永井豪の名作「デビルマン」のあるシーンの意味がよくわかるはずだ。

よく知られているように音楽は黛敏郎氏。アダム誕生,巨大なノアの箱船,バベルの塔の偉容など一度は見ておきたいシーンも多い。LDとしては旧時代の仕様なのでDVDでの再発を願いたいところだ。

天地創造 PILF-1678
発売元(株)パイオニアLDC