見える電波

■スカイキャプテン■

最近見たDVDの中でいちばん気楽に楽しめたのが「スカイキャプテン」だ。見せ物とか娯楽としての映画を思うとこういうぜいたくなお遊びはいいよなあ。CG時代でないと実現できないまんま古典的コミックの世界。

ロボット軍団に立ち向かうハンサム・ヒーローとロケットに光線銃に空中母艦,水陸両用戦闘機という本当に男の子のおもちゃ箱をひっくり返したようなガジェットの数々。登場人物も昔のマンガのキャラクターそのものという単純さで,作り手の「ああ,おれは昔からいっぺんこういうのをやってみたかったんだよ〜」という声が聞こえてきそうな映画だった。

もちろん,このテイストは最初から意図してのものだと思う。セピア調の色使いや人々のファッションや単純な図式ですべてが理解可能な世界観とかさ。マンガなら確かにこうだよな。変に複雑で深刻なものを入れてそれがリアリティだと勘違いしたあげくに全然はじけてないお話ってたくさん前例があるからね。こういう思い切った作り方は支持したい。

あはははとみんなで楽しむならこういうのがいい。逆にひとりでじっくり見入っているとマイナス思考で気になるところばかりってことになってせっかくの遊園地が楽しめずに終わってしまうかもしれない。

ひとつだけ言わせてもらうなら「スカイキャプテン」最大の謎は,キャプテンはなぜあんなバカ女を恋人にしているのだろう?という点に尽きるね。世界の人々から正義のヒーローとして認知されている主人公がつまんない女に引っかかっているように見えるぞ。世界観がご都合主義でもいっこうにかまわないんだけど,ああいうヒロインをかわいいと思えるか否かははなはだ疑問だなあ。

自己中心的で人の話は一切聞かず,それを押すとどうなるかわからないボタンを衝動的に押してしまうタイプで,常に事態を悪化させて反省はしないという実に困ったキャラクターだけど,ここまでくると監督の確信犯かとも思う。これをキャプテンはかわいい女と思って飼っているのか,それともキャプテン自身がバカなのかはこの際おおいに突っ込んでやろう。

ま,それはともかくこういったコミックの中だけのものと思われていた映像が無造作に実現しているともうそれ自体には全然感銘を受けない。当たり前すぎて。だから描き方のセンスとかアイデアの方で「おっ」とか「ほほー」とか思わせてくれるとありがたい。少なくともこの映画ではそのあたり,十分に楽しめた。

なにしろ,通信電波が波紋のように広がっていくところをそのまま描いているんだからね。そういう世界観だと思って楽しめた人が勝ちだ。とりあえずチャプター3の冒頭あたりの絵を見て電波は波だったのだと再認識した上で映画を楽しむがよろしかろう。

大物スターたち,特にアンジェリーナ・ジョリーが楽しそうにやってるなあ。あれよりヒロインの方を選ぶキャプテンの心情は僕には理解不能だが。

スカイキャプテン -ワールド・オブ・トゥモロー- GNBF-1079
発売元(株)ジェネオンエンタテインメント