フィオナ姫のカンフー

■シュレック■

ハリウッドの3DフルCGアニメーションはあの「トイ・ストーリー」以降,傑作・快作ぞろいで驚いてしまう。どうしてこんなに面白い作品が立て続けに登場するんだろうね。2Dアニメだと逆立ちしても宮崎駿や押井守らの影すら踏めない有様なのに3Dではこの好打率,たいしたもんである。3Dだと実写のハリウッド・エンタテインメントのノウハウと相性がよいのだろうか?

アカデミー賞長編アニメ部門の栄えある第1回受賞作「シュレック」も文句なしに楽しめるビデオ・DVD必携の快作である。いや面白かったねえ。

数々のおとぎ話を大人のジョークのネタにしてしまうその世界観も楽しいが,主人公の怪物シュレックの突き抜けたたくましいキャラクターが気持ちいい。ナイーブさをふてぶてしさでくるんだような頼れるヒーローだ。

粗野で下品で露悪的だが,真に大切なもの尊重すべきものが何であるかはちゃんと心得ているという懐の深い奴。単純なようでいて直情径行型ではない,考える頭を持っているところが好感度大である。

とにかく主人公はじめ登場する連中のタガの外れ具合や,セリフの楽しさ,パロディのおかしさ,観客を喜ばせる様々な仕掛けがたいへん面白くてリピーターになってしまう映画である。見るたびに発見がある。しかも……くすぐりが上手いんだよね。

中でも誰もが喜んだのはここじゃないかな。ちょいとワケアリなヒロイン,フィオナ姫のカンフー・アクションのシーンである。映画「マトリックス」で一躍有名になった"あの"シーンのパロディだけど,他に「チャーリーズ・エンジェル」や「フィフス・エレメント」のアクションもちょっと入ってるかなという気がする。

DVDではチャプター11の52分36秒あたりから。やられ役のロビン・フッドとコーラス隊?のお調子者ぶりもたいへんおかしくて笑ってしまった。連中はオマケ映像のカラオケパーティーでもYMCAで楽しませてくれる。

この映画,セリフの擦れ具合などどうみても手加減なしの大人向けそのもので,僕のような中年にはシナリオや演出の仕事ぶりがたいへん心地よい。フィオナ姫にかけられた魔法が解けた時のあの裏切り方なんて,思わずニヤリとしてしまうよね。おとぎ話をコケにしつつ,そのおとぎ話に新展開を持ち込んだこの面白さ!

こまごまとした遊びがあちこちにちりばめられていて何度見ても楽しい1枚である。

シュレック UWSD-33322
発売元(株)ユニヴァーサル・ピクチャーズ・ジャパン