ライオンと踊る男

■イッツ・ショータイム■

これを書いているのは2003年の5月,映像ソフトはDVD全盛でLDは過去のものになってしまったが,たまに中古セールをのぞいたりすると掘り出し物にぶつかることもある。LDプレーヤーが健在のお宅ではまだLDは現役メディアだ。

そうした中古セールで手に入れたもののひとつに「イッツ・ショータイム」がある。ハリウッドの歴史の中で,動物たちが見せてくれた達者な演技や名場面の数々を集めたものである。

つまりこれ,動物版「ザッツ・エンタテインメント」なのだ。

アニマトロニクスやCGではない,生身の動物たちのパフォーマンスが実に楽しい1作である。当然,古いフィルムが多いのだが,動物愛護団体とやらが厳しく干渉してくる以前の遺産の数々は一見の価値がある。今は生身の動物を使うには制約が多すぎて,テクノロジーで代用せざるを得ないのかもしれない。

まあ,それはそれとしてこの映画,寝っ転がって見ているだけでも「おほー」というシーンがいろいろ出てきて楽しい。

オープニングの犬版「雨に唄えば」でまず拍手。さぞ撮影はたいへんだったろうと感心していると,ここから動物たちの名演技のオンパレードとなる。いくらよく訓練されているといってもたぶんNG続出だったろうなあ。

犬や馬ならともかく,ライオンとの共演となると俳優だって怖かったんじゃないだろうか。でも見ているとライオンとのからみがいちばん印象的だった。

なかでも,古代ローマの闘技場でひとりの男がライオンの餌食になろうか,という場面が意外な展開でびっくり。男のまわりをゆっくりと歩きながら近付くライオン,固唾を呑む観衆,膝を折り観念する男。そしてライオンが男の頭に口を寄せてあわや,というところでなぜかライオンは男を襲おうとしない。すると男はライオンの顔をしげしげと見て「友だち!」と叫ぶ。

実はこの男とライオンは知り合い?だったらしくて,この後なんと立ち上がって二人というか一人と一頭で抱き合ってダンスをするのである。短いシーンなのでよく確認できないのだが,まさか踊るシーンだけ着ぐるみってことはあるだろうか?でもこの「イッツ・ショータイム」という映画の趣旨からするとこれは本物のライオンのはずである。だとしたら……よくやるよなあ。

LDではサイド1の21分37秒あたりから先。テロップも何も出ないので確言はできないが,たぶん「Androcles and the Lion(1952)」という映画のワンシーンだと思う。ぜひ本編も見てみたいものである。

おなじみの顔も懐かしい顔もいろいろ登場する楽しいコレクションであった。

イッツ・ショータイム NJDL-54093
発売元(株)ワーナー・ホーム・ビデオ