宴の後の炎の木

■ローラーボール■

70年代というのはもしかして内外ともにSF映画が元気な時代だったのかな。最近当時の作品をあれこれ引っぱり出して見ているせいでそんな気がする。

僕は当時もしっかりSFファンだったんだけど,なにぶん30年もたつとあることと別のあることが同時代だったかそうでなかったかという判別があやふやになる。当時の空気ってどんなだったっけ?と思うことも少なくない。

だから「ローラーボール」なんて映画を今見直すと「うーむこれは」とうなったりするわけだ。そういえば当時ハードカバーの原作本が並んでたような……とかいった周辺の記憶とともに,そのころ感じていた雰囲気みたいなものがおぼろげによみがえったりする。

もちろんここで取り上げるのは最近のリメイクではなく75年のオリジナル。CGのない時代の映画ってやはり独特の手触りがある。カメラが屋外を映した時の,何かこう斜陽というか黄昏というかもう元気が戻ってこない午後の寂しさみたいな雰囲気がけっこう好き。風景の中を風が吹いているような感じは「華氏451」とちょっと似てるかな。

近未来社会で人々の欲望のはけ口になっている殺人的競技「ローラーボール」。その世界的ヒーローであるジョナサンは絶大な人気と影響力ゆえにスポンサーから引退せよとの圧力を受けるが……。

問題のローラーゲームの試合のシーンがかなり長いので,この競技の迫力やルールに早くなじめればオーケー,でもここで引っかかるとノリの悪いことになるだろうね。観客にとってもぐっと見入るかたいくつするか微妙なところかもしれない。

途中,ジョナサンのヒューストン・チームが対戦する東京チームというのは当然日本人チームということになるんだけど,いやーこれは気持ち悪いね。とても日本人に見えないのはまあご愛敬だけど,空手と合気道を使ってくるというそのポーズといい「風」の一文字を印した帽子といいちょっと引いてしまう。いくら日本人だからといってあの激しいスポーツでメガネかけてちゃ危ないと思うなあ。

それはともかく,監督がノーマン・ジェイソンなのでB級SF映画のノリから一歩外れた作家性みたいなものがあちこちにのぞけて面白い。

特に印象的だったのは中盤のパーティーのシーンの後,浮かれた客たちが野原に繰り出し,光線中みたいな小火器で次々に立木を狙い撃って燃やしていく場面。正装のままの男女が嬌声を上げ,笑いながら引き金を引く度に高い木が一発で燃え上がる。やがてカメラが引くと野原に等間隔で並んだ木々は葉や小枝が燃え落ち,焼け残った幹と太い枝にちろちろと炎がまといついているという絵になる。

このシーンが美しいのになおかつ「ああ,もう人間はだめなんだな」と感じさせて印象に残る。DVDではチャプター16にある。時間にして62分40秒あたりから。64分40秒付近の燃え残った木々の絵もぜひご覧あれ。

主演のジェームズ・カーンはいい顔してる。バッハを使った音楽がやけに印象的だなあと思ったら担当はアンドレ・プレヴィンだった。納得。

ローラーボール DL-57015
発売元(株)ワーナー・ホーム・ビデオ