わたしは人間だ

■ロボコップ■

公開当時日本のメタルヒーローもののパクリだと言われた「ロボコップ」だが,なぜかLDの中古市場ではだぶついている。みんな1度見たら手放してしまうタイプの作品なのだろうか?しかしパート2やパート3のていたらくはともかく第1作だけはぜひとも手元に置いておきたい力作である。

バーホーベン監督のどぎつい演出はこの荒々しく暗い作品世界に一種デモーニッシュな迫力を与えている。バイオレンスシーンには救いのない暴力の臭いが充満しているし,鋼鉄のボディに閉じこめられた魂の苦悩がけっこう痛ましかった。一時期の平井和正の作品を思い出させるような映画である。

徹底して俗っぽいヒーローアクションではあるのだが,名のある名作・傑作とはまた違った力で見る者の感情を揺さぶってくる。傷口に包帯も巻かずにむき出しでさらしているような作品だ。世紀末の今にこそむしろふさわしい作品かもしれない。

その暗い「ロボコップ」の中で唯一主人公マーフィが解放される瞬間がある。

ラストシーンだ。メカニズムの体に閉じこめられ,行動や自由意志さえプログラムで縛り付けられている彼がその呪縛を断ち切って名乗る瞬間である。

敵の黒幕を倒した直後,名を聞かれた彼は誇らしげに「マーフィ」とこたえる。鋼鉄のマスクを外し,ある意味グロテスクな素顔をさらしたことは彼にとって自分が魂を持った人間であることの宣言でもあろう。ロボットから人間へと帰還を果たした主人公の顔がいい。ピーター・ウェラーいいねえ。

正確にはロボットというよりサイボーグなのだが,この瞬間,暗闇に一筋の光明がさしたという感じで,そのままエンドクレジットになだれ込む演出にこちらも「よしっ!」と力が入る。

初期版LDではサイド2チャプター10の47分15秒というところか。どぎつくてあざとい監督の演出も毒々しくてパワーがある。僕の中では「ロボコップ」はこの1作だけで完結している。捨てがたい1枚だ。

ロボコップ SF078-5300
発売元(株)RCAコロンビア・ピクチャーズ・ビデオ/レーザーディスク