SF映画,特に宇宙SFに日本人の顔はなじまない。SF映画好きにとってこの問題にはなかなか複雑なものがある。和製本格宇宙SF映画を見たいという願望はあるのに,宇宙船をはじめとしたメカニックと日本人のルックスはどうしても水と油の感を免れないからだ。
不思議なことに,現実世界でNASAのスペース・スーツを着た日本人宇宙飛行士たちの姿には何の違和感もない。フィクション,それも実写作品に限って"似合う,似合わない"が意識されるのはなぜだろう。
もしかするとイメージにおける文化的相性(もしくは先入観)みたいなものが僕たちの意識の深い所にあるのかもしれない。
だから,それでも実写で和製宇宙SF映画を作ろうというチャレンジには「がんばれー」と言いたくなるのである。
「宇宙貨物船レムナント6」は40分余りの小品だ。今のところ他人の口からこの名前を聞いたことはない,というくらいマイナーな作品に甘んじているようだが,それともしかるべき場所ではおおいに話題になっているのだろうか。
こうした試みが途切れずに繰り返されればいつかは「あれがきっかけだった」と再評価されるかもしれない,そんな位置にある作品だと思うのだが。
隕石との衝突で緊急事態に陥った貨物船,極限状況の中で脱出を試みる乗員たちに次々とトラブルが襲いかかる……というお話である。このストーリーと演出で納得できるかというと突っ込みたいところもあるのだが,昔と較べると"日本人の顔と宇宙船との距離"もちょっと近くなったのではないかな。
日本の特撮はメカ描写ではついに「サンダーバード」を超えられなかった,と僕などは感じているのだが,CGの発達はまさに福音だ。オールCGのレムナント6はスケール感も質感もちゃんと出ているし,見せ方も上手い。SFらしい絵の部分では希望が見えたのだから後はドラマや演出の勝負になってくるだろう。
ここではクライマックスのパート,爆発するレムナント6からの脱出シーンを見ておこう。うちのLDではチャプター1の39分ちょうどあたりから。音楽や効果音はちゃんと機能しているが,船外シーンでは無音に徹するというこだわり方がいいね。派手に効果音を鳴らす誘惑にうち勝って,こういう演出のスタイルを貫く強さはなかなか望めないものなんだ。
宇宙貨物船レムナント6 BELL-981
発売元(株)バンダイビジュアル