顔のど真ん中にあく風穴

■クイック&デッド■

てめえ!どてっ腹に風穴あけてやるぜ!なんてのは西部劇でもアクション映画でもよく聞くセリフだが,顔の真ん中に風穴あける映画は珍しい……と思う。

シャロン・ストーンの女ガンマンぶりがカッコいい「クイック&デッド」はどちらかというと無数のタイトルの中に埋もれていくタイプの作品だと思うが,僕は彼女の劇画的な美貌をうまく使った作品としてけっこう気に入っている。

西部劇といってもかつての西部劇の香りは全然ないけど,それは今どきの日本の時代劇だって同じだ。むしろ日本のマンガの中でこそありそうな話なんだが,監督がサム・ライミでジーン・ハックマンやレオナルド・ディカプリオまで引っぱり出して撮るとこういう作品になるわけだな。ギャラだけで制作費の大半を持ってかれてしまったかもしれない。

僕はシャロン・ストーンのファンというわけではないが,この作品の彼女はコミックの主人公みたいなキャラクターぶりがシャープな美貌にぴったりで実にカッコいいと思う。LDのジャケットをほれぼれとながめてしまうくらいだ。

で,監督があのサム・ライミであるから演出もケレン味たっぷりで楽しめる。まともな西部劇を作ってきた世代とは全然違う世界。そもそも西部劇の必然性があったかどうかさえわからない。美貌の女ガンマンだの曲撃ちのチャンプだの,果てはゾンビみたいにいくら撃たれても死なないガンマンまで出てくる始末だからね。

まあ,だからこそ「顔の真ん中に風穴があく」なんてシーンもぬけぬけと登場するわけだ。サイド2の7分18秒である。町を牛耳る悪のボス(ジーン・ハックマン)が彼を暗殺するためにやってきた殺し屋と対決するくだりである。彼は殺し屋を苦もなく倒すのだが,その銃弾は殺し屋の顔のど真ん中を貫通,カメラは殺し屋の後頭部側から頭の真ん中の穴を通してジーン・ハックマンの姿を見せてくれる。マンガだよなあ。ったくこの監督は,と言いつつ実はひひひと喜びながら見ていたのであるが。

「ガメラ2/レギオン襲来」のラスト,レギオンが吹っ飛ぶ場面も実はこのシーンのイメージが元になっていると誰かのインタビューで読んだことがある。真偽のほどはわからないが,そう言われればなるほどと納得してしまうなあ。

肝心のシャロン・ストーンの方はじつにもって型どおりの展開で活躍してくれるが,さすがに御大ジーン・ハックマンの存在感の前にはたじたじという感じだ。でもいいのだ。きれいでカッコよければ。日本でいえば水野美紀あたりに期待したい役どころである。

クイック&デッド PCLG-00039
発売元(株)ポニー・キャニオン