ドロシーとノームの王

■オズ■

ちょいとヒットするとすぐに続編を作りたがる安易な企画は邦画も洋画も同じのようで,映画界はパート2やパート3であふれている。しかし利益追求一辺倒の連中にしても史上名高い超有名作の続編となるとさすがに二の足を踏むようで,下手なものを作れば映画界あげての総攻撃を浴びるという認識はあるらしい。

正面きって「オズの魔法使」の続編が作られるまでに実に50年近い歳月が流れたのも無理からぬところか。制作に踏み切ったのはディズニー社だが,確かにあそこ以外にはとてもオズの続編なんて大それた企画には乗ってこないだろうなあ。

85年作「オズ」(Return To OZ)はSFX時代の「オズの魔法使」である。公開時のテレビスポットには覚えがあるし,映画の出来も悪くはないのだが,今ではすっかり忘れ去られている……と思う。やはり先代の存在が偉大すぎるのだろう。

久々に引っぱり出して見てみたのだが,いやなかなか楽しい出来だと思うよ,これ。現代の作品らしく映像的にも演出的にもアダルト・ファンタジー風である。オモチャっぽい造形の中にもちょっぴりダークなイメージが混入しておりなかなかいける。

中でもノームの王とドロシーたちが対峙するシーンは,現代(といっても10数年前だが)のオズの魔法使らしい映像とドロシーの組み合わせが実によい。今風に言えば岩石生命体のボスであるノーム王の強大な力を前に,友人を返してくれと願うドロシー。

ノーム王「もし返さぬと言ったら?」
ドロシー「……その時はこの軍隊で攻め,取り返します」

彼女が頼みとする軍隊というのはたった1台のゼンマイ式ロボットである。彼我の戦力差は圧倒的だが,友のためにその小さな力で挑もうとする少女のけなげさがいいねー。

僕の初期版LDではサイド2チャプター2の14分57秒あたりから。この現代版ドロシーは先代のように上手に歌ったりはしないが,敵の親玉を前にしても礼儀正しさを失わない品のよさはまさに正統派のヒロインだ。

今回見直すまでノーム王のSFXがクレイアニメの第一人者ウイル・ビントンによるものだということを全然知らなかった。不勉強であった。反省。

オズ SF088-1180
発売元(株)レーザーディスク/パイオニア